本町という町内に2軒の書店、S日章堂とN堂書店が並んでいた。Sは1995年前後ころに閉まったように思う。そのSの昭和17年4月の広告文面が手元にある。それには「岩國市地圖販賣 東京交通社特約店 書籍 養育品 楽器」とあり店名と本町、電話、振替番号が載っている。電話に市外局番はない。
Nは2000年代になってまもなくシャッターが降りた。奥行きの長い書店で、奥へ向かうほど難しく値段の高い本が並んでいたように思う。就職して初めて自分のお金で本を買った店だけに思い出があり、定年後もしばらくは訪れた。小中学校のときの教科書は必ずこの書店で購入していた。
Nは通りを挟んだ向かい側にも店があったものの、時勢の流れか郊外店に活路を開かれたと聞いたが、訪れた事はない。錆びの出始めたシャッターに書かれた「本ならなんでも」という白い文字がなんともやるせない。
書店を通じなくても通販や図書館への予約、直近では電子媒体で希望の書籍が読める。またTVの多様化などから「書店のにおい、本の重さ」という本への畏敬は薄らぎ、その文化も姿を変えていくように感じる。
(写真:華やかなころを知るだけに侘しさを感じるシャッター)