「毎朝1キロ走っているよ。お爺ちゃんも体を動かして元気にしてね」小学4年の孫からの便り。こんな文章も書けるように成長したか、読みながらあの日のことを思い出した。
雪の金沢へ出張で出かける直前「いま女の子が産まれた。母子ともに元気」と息子から電話。予定より1ヵ月余り早い初孫の誕生。
心配かけまいとゆっくりした話方に息子の気遣いを感じる。翌日の帰路、京都駅から産院へ急ぐ。
受付さんの「元気な赤ちゃんですよ」の声にほっとする。眠っているか起きているか、息を整えながら階段を上がり、軽くドアをノック。産院の優しい香りと一緒に嫁の母の顔が覗く。その母にとっても初孫になる。
元気そうな嫁の顔に安心し、妻からのお祝いの言葉を伝え、お産の労をいたわる。「少し小さいですが元気です」嫁は嬉しそうに明るく話す。
孫の初抱き。拳ほどの丸い顔。眠っている顔を左右に動かす。「爺ちゃんに抱かれたことが分かった」と返事するかのように思える。
少しゆする。早く生まれた分だけ軽いかな。いやその分だけ生命運が強い、そんな重さが伝わる。
心残りながら急いで駅に。いつもより大き目の弁当と缶ビールを買う。ポケットから出したポラロイド写真の顔に向けてひとり乾杯で祝う。写真のしわくちゃな顔が笑っているように見える。
(写真:孫からの手紙)