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津島美知子『回想の太宰治』

2012年12月15日 22時56分12秒 | 文学
津島美知子『回想の太宰治』(講談社文芸文庫)を読んだ。
太宰治について、猪瀬直樹の『ピカレスク』を読んだり、猪瀬直樹の講演や井上ひさしの講演を聴いたりしたので、ついでに何年か前の太宰治生誕百年のときに買ったまま読んでいなかった太宰治の奥さんの書いたこの本を読んだ。
太宰治が犬嫌いであることを初めて知った。
また、以下の部分にとても驚いた。
《終戦直後のこのころ、日本中の町村の例に漏れず嘉瀬でも、戦地から運よく無事に帰還したものの若者たちは生きる指標を失って何も手につかない有様だった。》(130頁)
坂口安吾の「堕落論」や、太宰治の小説が流行った背景などの、文学史的な説明として敗戦ということがよく言われてはいて、話としては知っていたのだけれど、普通のひとの語る話としてこんなことが言われると、「ほんとにそんな感じだったんだ」という気になる。
いまはものすごく人間が傷つきやすくなっている時代で、昔の人は立派だったとなんとなく思ってしまっているが、こういう話を聞くと、いまと同じように傷ついていていたんだなと思う。
確かNHKの朝ドラの「ゲゲゲの女房」で、貸本屋の主人が戦争から帰ってごろごろしている人だった。

太宰治についてだが、猪瀬直樹や井上ひさしの話では、世間で考えられているように太宰治は弱い人間ではなく、身体も頑丈で午前中から仕事をするくらいきちんとした人間であるというふうな話であったのだが、この本を読むと太宰治はやはり太宰治だよと思った。ひとの人生というのは見る人間のバイアスが相当かかる。
税金が高くて泣く話が強烈に印象に残った。
自殺がそのあとで、奥さんはそれが原因ではない、と言っていたが、それも原因のひとつなんじゃないの、と思った。
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