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中島らも『今夜、すべてのバーで』

2021年09月05日 15時24分44秒 | 文学
中島らも『今夜、すべてのバーで』(講談社文庫)を読んだ。
私はアル中でもないし、酒がそんなに呑めるほうでもないので、お酒がやめられないという気持ちがぜんぜん理解できないのだが、何かがやめられないということであればよく理解できる。
酒の飲み過ぎで体調を崩した語り手が、病院に入院して、だんだんと回復していく姿を読んでいると、とってもうれしくなってくる。そして酒の誘惑に負けそうになる場面では不安になる。
村上春樹の小説でも、どこか井戸の底とか闇の世界とか遠くの世界に行って帰ってきて、風呂に入ったり伸びた髭を剃ったりしてさっぱりして食欲が出て何かを料理して食べるというようなシーンがよくある気がするのだが、そのようなものを読むとこちらも気分がさっぱりする。そういうことは案外、馬鹿に出来ないなと最近思う。
任天堂スイッチのゲームの『あつまれどうぶつの森』でも、自分が操る主人公に、夏なのに暑苦しい姿をさせたり、アイマスクをさせたりすると、実際は自分は暑くも眼が見えないわけでもないのになんとなく不快に感じる。
そういうことは意外に大事なのだと思う。主人公が不愉快な目に遭う小説ばかりを読んでいるといつか身体を壊すと思う。

とてもおもしろい小説だったが、最後が無理矢理終わらせたような印象を受けた。
ほんとうはアルコール依存症はこんなに簡単には終われないはずだ、という気がする。
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