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大江健三郎『晩年様式集』

2016年12月20日 09時57分41秒 | 文学
大江健三郎『晩年様式集』(講談社文庫)読了。
何が行われているのかあまりよくわからないままに話が進んで、最後までそれほどの興味を持てぬままに終わってしまった。

もっとも興味を持っていた、長江古義人の子どもの問題だが、彼にはいったい何人の子どもがいるのだろうか。
二人なのだろうか、三人なのだろうか。ずっと二人なのだろうと思って読んでいると最後で七十歳で初孫が出来たという話になり、いったい誰の子どもなんだと思ってしまう。アカリが結婚しているようにも子どもがいるようにも思えないし、真木が結婚しているとも思えない。そして真木はギー・ジュニアと結婚するという話になるし。真木は離婚したという設定なのだろうか。これまでそんな話はなかったはずだが。
ここはもう小説だけ読んでもなんのことだかわからない。
想像するにおそらく、大江健三郎に初孫が産まれたが、その親である長女(か次男)に「私のことを小説に書くのはまだいいけれど、孫のことまで登場させるのはやめてください」と言われたというようなことがあったのではないかと思われる。しかし、初孫の誕生の喜びを書いた詩はここでどうしても使いたくなったのだろう。確かにこの小説の中で、もっとも嘘くさくなく、ちょっと感動できる。
それで真木の設定は未婚のようになっているが、しかし長江古義人には孫が産まれるという奇妙な話になっているのだろう。

そのあたりの家庭のイザコザを素直に書いたほうがよっぽどおもしろいんじゃないかと思う。
期待したほど、長江古義人は三人の女たち(妻、妹、娘)に責められなかった。みんなが大江健三郎風にしゃべりすぎる。あのようにしゃべるひとは私のまわりにはいません。

大江健三郎の長男がほんとうに言った言葉は太字で書かれるという原則に照らしてみると、今回太字になっているのは、《大丈夫ですよ、大丈夫ですよ!(後略)》(25頁)の言葉しかない。あとのアカリがしゃべっていることはほんとうに言った言葉ではないということになる。
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