![河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51OGKsqFX4L.jpg)
芥川龍之介の晩年の作品集。
この間娘を連れて遊びに行って、公園のそばにあった住宅展示場の一軒家に入ってやはり一軒家は広くていいなと思ったのだがそのときに、文学全集の本が何冊か置かれていて(文学全集って読むためよりも家のインテリアに置かれていることのほうが多いと思う)、その一冊を手に取ってみたら志賀直哉集で『暗夜行路』が載っていた。ひさしぶりに『暗夜行路』を読んだらおもしろいかもしれないと思った。もう一冊見たらそれは川端康成集だった。
そのあと家で芥川龍之介の「歯車」を読んでいたら『暗夜行路』が出てきた。
芥川龍之介の姉の夫が自宅に火事を出して保険金詐欺で疑われていたという話が何度か出てきたように思うが、今日火事を見た。
このような、読んでいる本と僕の生活が結びつくようなことは案外よくあるのだが、それをたまたまで片付けられない心理を「歯車」とかのこのころの芥川の作品は描いているのだと思う。「歯車」ではレエン・コオトが何度も登場する。
どの作品もこのころの芥川龍之介の心理状態を考慮したりこのあと自殺することを考えたりしなければそんなにおもしろいものではない(「羅生門」とか「藪の中」とかのほうがおもしろいと思う)。学生時代の僕は作家が自殺することについて重大な意味があると思い込んでいたのだが、今読むと「考え過ぎ」とか「文学のやり過ぎ」とかそんな言葉が思い浮かんでしまう。
三十五歳で自殺するとかダメだよ、と後輩の葬式に出席したような感想を持ってしまう。もう僕は四十代なのだ。