ダブログ宣言!

ひとりでするのがブログなら、
ふたりでするのがダブログ。

庄司薫『白鳥の歌なんか聞えない』感想

2012年06月14日 23時14分14秒 | 文学
庄司薫『白鳥の歌なんか聞えない』(新潮文庫)を読んだ。
『赤頭巾ちゃん気をつけて』のほうがおもしろいと思う。
テーマは大変興味深かった。純文学のテーマは、死への憧れとか感傷的な気分みたいなものを取り上げることが多い(というかほとんど?)のだが、今回のテーマはそれらとの戦いという、純文学としては自分自身との戦いというようなものだ。これはすごいことだと思う。あまり他で見たことがない。
しかしうまく戦えていたか、勝ったか、といえば、少なくとも勝ってはいないという印象だ。うまく戦えていたかも「微妙」だ。
最後は木から折った花のついた枝を由美にプレゼントしたりして、センチメンタルとの戦いが終わった後に自分がセンチメンタル、というものだった。センチメンタルとの戦いの難しさを感じる。

ちょうど『ゲーテとの対話』でゲーテが、最近の文学は病んでいる人たちばかりが登場する「病人文学」だというようなことを語る場面があった。暗い気持ちには生きていればいくらでもなれるのでそんなものは読みたくない、というように言っていた。
ゲーテに激しく同意!

庄司薫はすごいテーマに挑むと思う。
読んでいてテーマがわかりやすいのもよい。
コメント