はっさくママレードを作る

2009-02-13 00:00:51 | あじ
田舎の方から、小山のような「八朔」が届いた。大豊作だったそうで、それでも一本の木の何分の一かである。ちょっと困った。



それで、大量消費の手段として、ママレードを作ることにする。といっても、作ったことがないので、とりあえず『少量の試作品』を作り、試行錯誤的に改良を加え、その後、本格的製品をつくることする。

実際、今、これを書いている数日前に『試作品』は完成(?)しているので、反省や改良点などを加えながら、レシピを書いていきたい。


まず、インターネットで、何種類かのレシピを調べてみるが、困ったことに、『超簡単』か『超複雑』か、どちらかである。真実は、その中間にあるわけだ。『超簡単』派は、素材を切り刻んで鍋で煮込んで、たいてい失敗して口が曲がるほど苦い製品を作る。「まあ、シロウトはこんなものですね」という結論になる。それなら、最初からやめた方がいい。

一方、『超複雑』路線は、あれこれ素材ごとの重量をはかって、つねに同じ味を追求する。グラニュー糖を大量に投入するのだが、ずいぶん高くつく。完成品を瓶詰めした後、殺菌のため、瓶ごと蒸したりする。やり過ぎだ。

結局、『超複雑』レシピをいくつか読み、『共通のポイント』を守りながら『手抜き工作』をすることにする。ただし、初めて作るので、悩むことも多い。完成品から逆算することができないからだ。では、さっそくダンボールから八朔を取り出すことにする。

1.八朔の選び方
 まず、外皮のきれいなものがいい。外皮を食べるのだから、傷んでいる部分を削るから。次に大きさだが、大き過ぎると面倒である。あとで細く切る段階で、皮が大きいと湾曲率が大きく、きれいに厚さをそろえにくいから。また非常に小さい玉の場合も内側の白い皮が少なく、後で困ることになる。まあ、普通サイズかやや小さい玉がいい。

 そして、外皮を洗う。農薬をかけてなくても屋外の空気は汚い。事実、手でゴシゴシとこすると、表面がヌメヌメしている(内側からの糖分?)。本当は、この一番外側が一番苦いので、スポンジとかで軽くこするのも一策である(苦味がまったくないと、まずいが)。

 『試作』ということで、4つの八朔だけでつくることにしたのだが、これが意外に『大問題』だった。ママレードは、原料に対して、意外に大量に製品ができる。自信のない人は、2個にした方がいいかもしれない。



2.外皮の下準備
 まず、四つ切りにして、外側と果実の部分を分離する。おおざっぱにやった方がいい。内側は白い皮(便宜上、内皮と呼ぶ)に包まれている。次に外側をさらに二分割(つまり八つ切り)にしてから、ナイフ(包丁の方が使いやすい)で外皮の厚さを整える。この時に最初に爪で果実をはずす時に、白皮を外皮に残さないように器用に薄むきした人は後悔する。ナイフが使いにくい。(白皮は捨てないこと。捨てていいのは、緑のへただけだ。)

 次に、外皮の傷を削り落し、幅2~3ミリ程度に千切りして、ボールに張った水につける(細切りした方が苦味が抜けやすい)。

 ここで、本格派の場合は、一晩、水にさらすことになる。きょうの作業はすべて終了である。苦味を抜くためだ。

 といっても、そんな暇じゃない。本格派は、「一晩の水漬け」「2回の茹でこぼし」という作業なのだが、そこをアレンジして、「2回の揉みしごき」と「3回の茹でこぼし」という方法に変える。この作業には、鍋を二つ使ったほうが効率がいい。一つ目の鍋で茹でた後、沸騰した二つ目の鍋に入れ、最初の鍋で湯を沸かして、三度目の茹でこぼしに使う。鍋の素材は銅かほうろうかステンレス。アルミはダメ。



3.果実の分離とペクチン液抽出準備
 次に(というか手があいたら同時進行で)、果実を薄皮から分離する。結構時間がかかる。協力者がいると、時間短縮ができる作業だが、協力者は、すかざずつまみ食いを始めるはずだ。ここでは意外にぺティナイフの出番がある。別のボールに果実を入れておく。

 薄皮は果実を分離したあと、一絞りして、若干の果汁を作るのだが、八朔は実離れがいいので、絞ってもジュースが取れない。果実の一部をつぶしておく。最後に使う。

 次に、薄皮に果実が残らないように流水で洗う。ペクチンの原料であるが、困ったことに果実と薄皮は、調理上、仲が悪い。果実の酸味がペクチン液の大敵だからだ。種もペクチンを多く出すので別にする。

 この段階で、『茹でた千切り外皮』『白皮の山』『薄皮の山』『果実のむき身』『種』『果汁』の6種類になる。



4.ペクチン液の製作
 ペクチン液は貴重である。入れ過ぎると苦くなるとも言うが、八朔の場合、ペクチン液がやや少ないように思える。『白皮』と『薄皮』と『種』が原料。二回茹でこぼしたが、一回でいいと思う。茹でこぼしたあと、鍋にひたひたに張った水で煮ることになるが、水は、それより少し多いほうがいい。最後に水分不足になるとまずいから。

 最初に強火で煮て、沸騰したら弱火で煮込む。30分ほどして、ずるずるになるまでじっと我慢する。そうしたら、ざるで液を漉し、もう一回沸騰させる。これでペクチン液が完成する。残ったものは燃えるゴミである。あやまってペクチン液を捨てて、ゴミだけを手元に残した人は、気の利いたスーパーにペクチンを買いにいくしかないが、それの方がうまくいったりするかもしれない(満足度は激減する)。



5.すべて投入、最終段階
 ここから最終段階である。外皮と果実とペクチン液と若干の果汁が残っていれば正解。すべての総量に対して、25%~35%の砂糖を用意する。実際は40~50%と書いてある例が多いが、生活習慣病に直行だ。グラニュー糖は高いから、ヨーグルトのおまけとか普通の上白糖でいい。最初は強火で、以下、弱火。

 そして、砂糖以外のすべてを鍋で煮込むのだが、しばらくして不安に襲われる。

 きんぴらごぼうみたいな状態になるからだ。きんぴらママレード?。粘り気なし。



 ところが、用意した砂糖の1/3を投入すると、事態は急変。数秒後に、どこかの原発みたいに、一気にメルトダウンする。ほっ・・

 10分後に砂糖1/3、さらに10分後に残りの砂糖を加えるのだが、このあたりで味見すると、猛烈に甘いので、ひるんでしまうのだが、それはフェイクなのだ。あまり気にしないこと。まだ、砂糖が外皮にしみこんでいないからだ。しょうがないわけ。

 そして、最後に果汁を加え、3秒経ったら、火を止める。八朔4個で約1キロのママレードができる。ここまで3時間かかったが、慣れれば2時間強でできるかな。



6.完成後の注意
 もっとも重要なことは、すぐに口にして、「まずい、にがい、あまい」とか言って、捨てないこと。

 室温まで冷めたら、ビンかタッパにつめて、2日間、冷蔵庫で冷やす。甘みや苦みが全体に溶け合う期間が必要。つまり、金曜日にこれを読んで、土曜日に八朔を買ってきて、夜中に作業しても月曜の夕食になってしまう。夜に甘いものを食べると体に悪いから、火曜日の朝食で、パンに塗って食べるのが常道だが、お勧めは「ヨーグルトにトッピング」である。ママレードは発がんを抑えるという説があるし、ヨーグルトのビフィジス菌は、ピロリ菌を退治する。



7.注意事項
 調理上、特にあぶないところはないが、外皮は硬くてツルツルしているので、切る時に注意すること。右手の小指を切り落してしまった、とかのクレームは、お断り。何度も茹でこぼすので、とってのついた鍋が、とっても便利。

 その他、苦くて顔が曲がったままになってしまったとか、あまりの旨さにやみつきになって、将来、糖尿病になったとか、すべてノークレーム。



ところで、ママレードばかり食べるわけにはいかないので、八朔サワーとか飲んでいるのだが、出張先で車で移動中、同乗の人に、「いい匂いしてますね。体臭?」と、言われてしまった。

甘く、かつ苦いといえば、ハードボイルド系だ。フィリップ・マーロウ。くれぐれも、私立探偵ごっこはしないこと。


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