薩摩藩英国留学生(犬塚孝明著)

2011-04-06 00:00:03 | 歴史
eikokuこの本は、絶版になっていて、少し理由があって調べているうちに、読みたくなり、図書館で借りたもの。

題名の薩摩藩英国留学生というのは、明治維新に2年先立つ1865年に薩摩藩が総勢19名の使節団を英国留学に送ったことを指す。

実は、数ヶ月前に鹿児島に行った時に鹿児島中央駅の駅前に巨大なモニュメントが完成していたことで、その留学生たちのことを知る。

一方、鹿児島出身の有名人を調べているうちに、東郷姓のものが多いことを知っていて、それらの関係を調べているうちに、この留学生たちの中にも東郷姓の人物がいることがわかってきた。その留学生の東郷は東郷愛之進という。有名な東郷は、平八郎(海軍大将)、青児(画家)、茂徳(外務大臣)。どうも、この3人を結びつけるキーになるのが、愛之進ではないかと、仮設を立ててみたのである。

しかし、愛之進は、留学から帰ったあと、どういうことか、戊辰戦争で亡くなっている。それもなぜか大阪で。つまり、他の留学生のようには歴史に功績を残していないわけだ。


そういうことで、少しずつ資料を調べているのだが、その観点では本著はあまり役に立たなかった。東郷愛之進は、メンバーの中ではかなり武家としての身分が下で、しかも1年間で日本に帰国している。理由は、財源不足。どうも薩摩藩は十分にこの使節団をバックアップしていなかったようで、不足財源は自分が出すことになっていたが、東郷愛之進は軍資金不足で滞在できなくなったわけだ。

それで、本著の中身だが、揺れ動く幕末を非常に細かく描いている。特に薩摩藩内のゴタゴタについても詳しい。さすがに現地の学者は細かいなあ、とすっかり誤解していた。まず、本留学生は、「薩摩藩」の名を借りた「五代友厚使節団」であったということ。最初からメンバー選びについても、五代の意見が通っている。

で、知らなかったことだらけなので大変勉強になったのだが、著者は、留学生の中で最年少(15)で、英国から米国に渡り、その後カリフォルニアのワイン王になった長沢鼎のことに、多くのページ割いている。どうも、著者は長沢鼎について深く書きたかったのではないかと思えてきたわけだ。

さらに著者のことだが、本著の発行は、1974年である。27年前だ。奥付に著者の歴史が書かれているのだが、鹿児島の先生ではなかったのだ。1944年生まれで1968年に私立大学の経済学部を卒業。その後、アマチュアの歴史家として本著を描いたことになる。

さらに、著者の犬塚氏の略歴をWikipediaで調べると、どうも本著を書き上げたことが縁になって、大学の講師になったそうだ。やはり執念を持ってやり続けなければ、何も始まらないということだろうか。現在は、鹿児島純心女子大学の教授。日本のシュリーマンと言ったら言い過ぎだろうか。少し言い過ぎだろう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿