空中の畳

2009-09-12 00:00:31 | しょうぎ
数年前から、自宅にあるアナログデータのデジタル化を進めている。特に、テープ類は、テープの劣化と、再生機器の劣化と二つの問題があるので優先的に行っている。

tvshogiVTRをDVDに焼き直していると、かなり以前に、ケーブルテレビ局で某プロ棋士と対戦した時の映像が見つかった。

ある棋士から話がきて、「ケーブルテレビなので、見る人は少ないのですが・・」ということだったが、二つ返事で了解。撮影の当日、池袋のスタジオへ向かう。

ところが、スタジオに行くまで、「誰と対戦するか」「手合いは何か」知らなかったわけだ。

「手合い(何落ち)」というのは、先に知らないと具合が悪いわけで、あまり定跡を知らないのでテレビで恥ずかしいミスをする可能性がある。といっても、駒落ち定跡は上手が勝つようになっているので、いずれどこかで力任せに攻撃したり、誘いのスキを作って、得意の終盤の寝技に持ち込むかすることになる。

飛車落ちや角落ちは、受身に戦い、機を見て反撃するという陰険作戦で、たいてい下手が有利になる。香落ちは上手でも下手でも大の苦手だ。


そして、対局場につくと、紹介していただいた棋士から、「X四段とお願いします」と言われる。若手である。

さらに、「平手です」。「持時間で差をつけて、60分と20分にして、切れたら30秒です」とのこと。

まあ、内心ほっとする。勝ち負けは別にして、平手なら、序盤からグリグリと考えなくてもいいし、時間配分も放送時間に合わせて、60対20=3:1という比率で進めていって、100手前後で秒読みを少し指せば編集なしで、放送時間いっぱいで終わるはず。

たまたま、当時、いくつかの新定跡の研究に凝っていて、実戦でも成果を挙げていた戦術があった。

「タテ歩取り7八銀戦法。」(戦法については省略)

しかし、スタジオ内の対局場に向かう途中で、突然の次の指令が届く。

「悪いけど、イビアナ(居飛車穴熊戦法)でお願いします。そういう話になっているので。」

つまり、かなり選択権がないわけだ。

さらに、「テレビ対局なので、詰むまで指して下さい」とのことである。

a1そして、画面で見るといかにも和室という感じなのだが、地上2メートルくらいの空間に畳がセットされているわけだ。対局中に足が痺れてよろけたりすると、畳の外側にくずれ落ち、2メートル下のコンクリートの床で頭蓋骨が二つに割れるわけだ。うっかり、駒を駒台から落とすと、セットのどこかへ飛んでいって、駒不足のまま対局を続けなければならない。

そして、あわただしく対局が始まり、私の先手で3手目まで進んだところで、ふと疑問が湧き上がるが、既に手遅れだ。

「どちらがイビアナ戦法をするのだろう?」

対局は、最初はどちらも慎重の上に慎重を重ねていたものの、途中から、捌き合いになり、飛角交換と銀桂交換。僅差で終盤の入り口に入るが、ミスが出る。89手目に▲7七桂と援軍を送ったのだが、何はともかく▲4五桂だった。△3一歩とされ、スピードダウンである。どうみても負けそうなので、死んだフリをしてみたのだが、X四段は用心深く、攻めて来ない。

それでは100手では終わらないじゃないか、と思って、駒をぶち切って桂をはねて猛攻撃してみる。受け間違えてくれたら勝てるのだが、切れそうになる。普通なら一手スキが途絶えたら負けになる。不埒にも詰めろっぽく見えない手を指したのが131手目なのだが、見破られる。

a2あとは、ダラダラとあれこれ攻め立てたものの、ついに疲れ果てて、自玉が詰むか詰まないかわからない状態にして、手を渡して、とうとう負ける。

動く将棋盤は、こちらにあるが、3秒待った後、「→」マークを、202回クリックすると、終局図に至る。(なぜかバグがあって、203回目と204回目に変な手が出るが、修正できなかった)

やっとの思いで、セットから降りてくると、X四段の友人の男女棋士が集まっていて、「遊びに行く時間が1時間も遅れた」とののしられていた。

私のせいじゃないから。




さて、8月30日出題作の解答。

▲3六銀 △同玉 ▲1四角成 △同馬 ▲4六飛 △2五玉 ▲2六香 △1五玉 ▲2七桂 △1六玉 ▲2五香 △2六角(途中図) ▲1七歩 △2五玉 ▲2六飛 △同玉 ▲3七角 △3六玉 ▲4六金 △2五玉 ▲3五金まで21手詰。

3七銀は邪魔駒。▲3六銀と捨てたあと、▲4六飛と出たいが、馬が利いている。そのため、▲1四角成と角捨てだが、△同馬が本筋。気になるのが、合駒の場合。桂合が最善だが、▲3七歩 △2六玉 ▲2七香 △1六玉に、強手▲4六飛がある(変化図)。△4六同馬 ▲2五馬まで。



その後、香と桂を打った場面で、「打ち歩詰回避問題」になる。香が1つだけ動くと、合駒要求になる。

角合が最善だが21手で詰む。

動く将棋盤は、こちら





今週の問題。

弊ブログ愛読者と思われる“さわやか風太郎さま”から、

「最近、切れ味がない」とか、

「飛車が一周するようなのが見たい」とか、

「ストーリー性が足りない」とか、

きついご指摘メールを受けたこともあり、未完成品を急遽手直ししてみた。(切れ味はないかな)

若干、“バリ取り前”なので、不可解な駒もあるのだが、初手には注意が必要。二手目に自玉を取られないように。

ちょうど半分の手数のところで、簡単に詰まそうとすると、なぜか「強制打歩詰」に追い込まれる。

「強制打歩詰」のワナを逃れると、後は平坦な凸凹道になる。とどめの駒は、今のところ盤上には存在していない。

筋は単純なので、超上級者なら1分で読み切れるかもしれない。

わかったと思われた方は、コメント欄に最終手と手数と酷評を書いていただければ正誤判断。

解答発表は9月26日だが、途中の5連休を無駄にされたりしないように、途中経過(○○手目、○○●?)とかあれば、つど対応。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿