芸術家にふさわしくない県

2006-11-13 00:00:47 | 美術館・博物館・工芸品
週末に千葉方面に行ったので、大急ぎで寄ろうと思った場所が二ケ所あった。その一つが、JR京葉線”千葉みなと駅”近くにあるはずの、千葉県立美術館。千葉県の高校生の美術部の展覧会。どうして、こういうところに行ったかと言えば、以前、近代的な千葉市立美術館で、たまたま目にした千葉南高校美術部の作品を観て、「群を抜いている」と書いたところ、その高校生たちから、今回の展覧会の情報をいただいたからである。もちろん、別件で千葉方面に行ったからというのも現実的な理由なのだが。

ところが、よく調べずに行ったものだから、大変なことになる。場所がわからないのだ。何しろ、駅には右と左の矢印だけで、県立美術館が左側(海側)ということは表示されているのだが、地図はない。地図はなくても、こういうのはすぐわかるものなのだが、左に進むと、しばらくして海に突き当たってしまう。少し、見当をつけ、歩いてみるが、そのあたりは、役所や外郭団体やギルド的同業者団体(建設業や、税理士や水道工事業者など)の大きな敷地とビルが並んでいるだけである。そして、それらの建物は週末は休みなので、歩行者も誰もいない。

そして、致命的なのは、駅を含め、道路上にも、どこにも地図がないということ。さらに、やっとの思いで、歩行者や自転車の人、合計3名に聞いてみたが、誰もすぐそばにあるはずの美術館のことを知らない。ようするに、美術なんか興味がない人には美術館は見えないのだろうか。しかし、興味がなくても美術館というのはどこでも目立つ建物なので、存在を知らないというのは、どういうことなのだろうか、と思ってしまう。そして空しく時間が過ぎていき、やっと1枚の電柱に取り付けられた小さな看板を見つけたのだが、これが路地の中にあって、その矢印が、近くの大通りを曲がることを意味するのか、看板そのもののそばのさらに小さな路地を曲がるのかもよくわからない。

大通りを少し行ったところに、かなりデザインの入ったガラス張りのいかにも美術館風の建物があり、そこかと思うと、「VOLVO」のショールームなのだが、赤字経営でVOLVOに払い下げたのだろうか、と本気で思ってしまいそうだ。

44258622.jpg結局、もっとも行きたくない場所に道を聞きに行くことになる。「千葉中央警察署」。一瞬、自首に来た容疑者のような視線を浴びる。

要するに、美術館は、この官庁や談合の温床となるだろう同業者ビル群のさらに奥にあった。さらに、その建物に近づいてからもどこが正門かわからず、駐車場マークの出ていない方へ進むと、裏口から入ることになってしまった。建物も、だいぶ古いのだろうが、全国県立美術館ランキングでは、最下位候補なのではないだろうか。千葉県の芸術家は公共的支出の優先度合いで、虐げられているということだろう。

そして、狭いスペースに各高校美術部から大量の出展があり、展示は賑やかなのだが、生徒は少ない。おそらく、世界史や家庭科の補習をしているのだろう、と同情(本当は、無料で追加的にたくさん授業を受けられるので、被害者のように同情することはないのだろうが)。

44258622.jpg千葉南高校はやはり大量出展していて、作品の画風もさまざまであり、多くの部員が優秀な先生に指導されていることがわかる。芸術は個性の表現であるわけだから、基礎をほどほど終えたら、好きなようにすればいいわけだ。現代は様々な芸術が自由である。

受付で、撮影してもいいかと聞いたら、奥の方から、大人がでてきて、「撮影している人はいますよ」と、いかにも教師的なお言葉をいただく。まあ、それで著作権がいいわけでもないことは十分知っているので、数枚の撮影画像は、撮影技術が悪いこともあり、コチラコチラコチラに隠しておくので、クリックのこと。最初の1枚は井澤明希子さんの作品、後の2枚は小坂梨絵さんの作品。

でも、芸術家を目指すなら、この芸術に冷たい県を捨てて、寺山修司のように東京に出ていかなければなければならないかも知れないとは思う一方、わずか数十分で都心に着くベッドタウンであるわけだし、パリに対して南フランスの柔らかな陽光を持つアルルがあるように、この千葉県の南側には、絵画向きの太陽があるのも事実だ。


さて、町を疲れ切るまで歩くのは嫌いではないが、どう考えても無駄歩きをしてしまったので、二番目の目的地はあきらめるしかなくなった。千葉市動物園で、直立レッサーパンダの風太クンの二頭のジュニアが公開される時間は16時までだったからだ。次のチャンスに行くしかないが、可愛い動物の赤ちゃんはすぐに育ってしまい、大人になってしまうよ・・  


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