突然連載最終回となった『翠雨の人(伊与原新著)』

2024-02-06 00:00:18 | 書評
新潮社の月刊誌『波』に連載中の『翠雨の人』が、予想もできなかったが1月号で最終回となった。著者はミステリー作家の伊与原進氏。海洋放射能研究の第一人者の猿橋勝子氏(1920年-2007年)の伝記風ドキュメンタリーを書かれていた。著者も地球科学者であり、また小説家であるので猿橋氏の少女時代から第二次大戦の間の新米研究者時代、そして抜擢されて米国で水爆に伴う海水中の放射線量の測定を行うという華やかな研究者としての実績が書かれていた。



その後、彼女は女性科学者の権利拡大を目指す活動にも参加し、1980年には女性として初めて日本学術会議会員に選ばれた。少し前には有名な女性政治学者が学術会員から追いだされたが、基本的には女性の学者を自民党は敵だと思っているのだろう。

ところが連載は、彼女の人生の後半生については、あまり触れることなく連載を完了してしまったような感じがする、

とはいえ、最終回では、さすがにミステリー作家というよう視点を持ち込んで、格好の良いまとめ方をしている。

通常なら、『波』連載終了後、単行本として発刊されるのだが、是非、猿橋勝子氏の後半生も綿密に書き加えてもらえたら嬉しい。