三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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日本最大の漁業者組織「全漁連」、汚染水海洋放出に改めて反対決議

2023年06月26日 | 
「The Hankyoreh」 2023-06-23 07:15
■日本最大の漁業者組織「全漁連」、汚染水海洋放出に改めて反対決議
 日本の漁業関係者組織が「海洋放出反対」の特別決議

【写真】福島第一原発敷地内のタンクに保管されている放射性物質汚染水/AP・聯合ニュース

 福島第一原発に保管されている放射性物質汚染水の海洋放出が目前に迫っている中、日本最大の漁業関係者組織である全国漁業協同組合連合会(全漁連)が「汚染水の海洋放出に反対する」という内容の特別決議を採択した。全漁連の反対表明の決議は今回で4年連続となった。
 全漁連は22日、東京で通常総会を開き、汚染水の海洋放出に対する反対決議を採択した。同団体は決議で「(福島第一原発)廃炉に向けた取り組みを否定するものではない」としつつも、「(汚染水の)海洋放出に反対であることはいささかも変わるものではない」と明らかにした。
 全漁連は、東京電力が8年前にした約束を守るべきだと求めている。東京電力は2015年8月、社長名義で汚染水の海洋放出と関連し、「(漁業)関係者の理解なしには、いかなる処分もしない」と文書で約束した。これは福島県漁業協同組合連合会の要請で作られたものだ。だが、日本政府と東京電力は漁業関係者たちの反対にもかかわらず約束を無視し、今夏頃に海洋放出を進めている。
 朝日新聞は「2015年の文書を理由に、福島の漁協などからは『(政府による)約束はどうなっているのか』などの反対の声が相次いでいる」と報じた。
 決議では、日本政府が漁業関係者の被害に備えて基金(計800億円)を創設し、汚染水の安全性を積極的に説明していることについては「重く受け止める」と評価した。
 全漁連の坂本雅信会長は22日、西村康稔経済産業相と面会し、決議文を手渡した。全漁連は全国に組合員が約30万人である日本最大の漁業関係者組織だ。
東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-22 17:44


「The Hankyoreh」 2023-06-22 07:02
■日本の汚染水処理施設の故障は8件?…「フィルター24個の故障を1件に」
 政府発表の8件は原因別にまとめた事例の件数 
 現場視察参加専門家、定例会見で明らかに

【写真】クォン・オサン食品医薬品安全処次長(左から2番目)が21日午前、ソウル鍾路区の政府ソウル庁舎で開かれた福島原発汚染水関連の定例会見に出席し、日本産水産物の輸入検査体系について説明している/聯合ニュース

 日本の福島原発汚染水を処理する多核種除去設備(ALPS)の故障発生件数が、機器別にみると少なくとも30件を超えることが分かった。韓国政府はこの10年間、ALPSの主な故障事例は8件だと明らかにしてきたが、実際の故障件数がさらに多いことが明らかになり、汚染水海洋放出の安全性と直結したALPSの信頼度に対する疑念がさらに深まるものとみられる。
 原子力安全技術院のキム・ソンイル放射線廃棄物評価室責任研究員は21日、福島原発汚染水関連の定例会見(毎日実施)で「2021年度にHEPAフィルターという排気フィルターの故障が1件発生したが、この件を機に(他の機器にある同じ)排気フィルターを全数検査したところ、全体25個中24個で故障が見つかった」と述べた。
 現場視察団が東電から受け取ったALPSの主な故障事例(8件)リストの資料には、2021年8月にALPSのHIC排気フィルターの損傷が1件あったと記載されているが、機器別にみると故障件数は24件でさらに多いという趣旨の話だ。また、「東電がそれ(同じ種類の故障)を一つの故障事例とみて、原因と対策を一つにまとめて処理しているものと理解すればよい」と説明した。
 キム研究員は福島現場視察に参加した専門家の一人だ。この発言は「2013年から2022年までの10年間、ALPSで計8件の主な故障事例を確認した」(16日の定例会見)という韓国政府の発表とは異なり、故障事例がさらにあったという報道が事実ではないと釈明する過程で出たもの。キム研究員は「重要なのは機器の性能を維持しているかどうか」だと語った。
キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-22 02:11


「The Hankyoreh」 2023-06-21 07:32
■日本の議員の訴え「海は共有財産…汚染水は固体化して保管し、のちに再利用を」
 [インタビュー]立憲民主党の阿部知子衆議院議員 
 「海は共有財産…周辺国の理解が必要」

【写真】立憲民主党の阿部知子(74)衆議院議員=東京/キム・ソヨン特派員//ハンギョレ新聞社

 「東京電力の言うように多核種除去設備(ALPS)で汚染水を何度もろ過して放射性物質を最大限除去することが必要だ。汚染水の放射性物質を基準値以下に下げた後、セメントや砂などを混ぜて固体で保管すればよい。このコンクリートをのちに防潮堤などに再利用できる」。
 立憲民主党の阿部知子衆議院議員(74)は、目前に迫った福島第一原発の汚染水の海洋放出について、「海は共有財産」だと述べつつ、汚染水を固体にして日本国内に置き、後に再利用しようという新たな代案を提示した。
 また「日本政府とIAEAは、処理汚染水の海洋放出が長期間続いた時、環境や人体に与える影響についても深く研究していない。放射性物質を海に捨ててはならない」と訴えた。
 日本の超党派議員の集まり「原発ゼロ・再エネ100の会」で活動しつつ、汚染水放出の問題点を粘り強く訴えている阿部議員のインタビューは、15日に東京都千代田区の衆議院議員会館で行われた。韓国は「汚染水」、日本は「ALPS処理水」と呼んでいることについて阿部議員は、ALPSで処理しても依然として汚染水だと述べつつ、「ALPS処理汚染水」という用語を使っていると語った。

-日本政府は、今月中にIAEAから最終報告書が発表されれば、これを根拠として福島第一原発の汚染水を今年の夏ごろ海に放出する予定だ。
 「日本政府が決定し、日本の原子力委員会、IAEAが大丈夫だと言ったからといって済む問題ではない。海は共有財産であり、広くつながっている。海洋放出を強く憂慮する人々と周辺諸国の理解がなければならない。そもそも『ロンドン条約』や議定書では、海に放射性物質を投棄してはならないと定められている。IAEAの一般安全指針(GSG-8)には、『その行動によって個人と社会に予想される利益は、その行動による害悪よりも大きくなければならない』という原則がある。汚染水の放出が100%安全とは言えない中、日本だけでなく韓国の漁民、太平洋の島しょ国などが強く反対している。利益はなく危険が存在するのなら、海洋放出はしてはならない。IAEAはこの部分をまったく検討していない」。

-日本政府は、ALPSで放射性物質を基準値以下に下げ、除去できないトリチウム(三重水素)は海水で希釈して放出すれば安全だと主張している。
 「福島第一原発は(2011年3月に)事故が起きた原子炉であるため、セシウムやストロンチウムなどのあらゆる放射性物質が汚染水には含まれている。経済産業省と東京電力は、どれだけの量の放射性物質を海に捨てることになるのかは語らない。希釈だけに焦点を当てており、放射性物質の総量に対しては何の検証もない。基準値以下にして薄めたとしても巨大な量の処理汚染水であるため、放射性物質の総量は無視できない。処理汚染水の放射性物質測定核種も64種から30種に縮小された。リスクを評価するためには、できうる限り確認しなければならない。日本政府とIAEAは、処理汚染水の海洋放出が長期間続いた時の環境や人体への影響についても深く研究していない。また日本は福島第一原発の2051年の廃炉を目指しているが、これは不可能だ。廃炉になるまで汚染水は発生し続ける」。

【写真】福島第一原発の敷地内のタンクに保管中の放射性物質汚染水/AP・聯合ニュース

-汚染水の安全性にかかわるALPSの性能も争点だ。
 「ALPSの性能を確認するための資料は不十分。汚染水が保管されている1千基を超えるタンクのうち、試料を採取して64の核種を分析したのはごく一部だ。K4、J1-C、J1-Gの3つのタンク群に対してのみだ。さらに大きな問題は、(東京電力に確認したところ)これらの試料採取の過程で攪拌(かくはん)作業も行われていないこと。相対的に放射性物質の濃度が低いタンクの上部から試料を採取したということだ。ALPSの性能を確認するための資料は信頼できないということになる。これはごまかし行為だ。東京電力は、処理汚染水の海洋放出前の核種測定の際に攪拌するため問題はないという立場だ」。
(※先月23~24日に福島第一原発を訪問した韓国視察団は、ALPSの注入口と出口における64の核種の濃度を分析した2019年から昨年までの原資料を確保したことを成果として掲げたが、この資料の実効性に疑問が提起されたことになる)

-汚染水はどのように処理すべきだと思うか。
 「放射性物質は、環境や人間を保護するためには閉じ込めておかなければならない。これが原則だ。まだ間に合う。東京電力の言うように、ALPSで汚染水を何度もろ過して放射性物質をできる限り除去することが必要だ。汚染水の放射性物質を基準値以下に下げ、その後、セメントや砂などを混ぜて固体として保管する『モルタル固化』という方法で保管すればよい。専門家は、このコンクリートは後に防潮堤などとして再利用できるという。汚染水のように福島第一原発に保管し続ける必要もない。汚染水処理は、政治的論争より環境を守るために皆で知恵を集めなければならない問題だ」。

-最近の世論調査によると、日本国民の60%が汚染水放出に賛成している。日本の雰囲気はどうか。
 「福島第一原発の周辺は暖流と寒流が出会う非常に良い漁場だ。海を守りたいと思っている漁民は強く反対している。世論は60%が賛成というが、国民には正しい情報が与えられていない中、日本は全体的に原発についての雰囲気が変わりつつある。(原発の運転期間が60年以上に伸びるなど)東日本大震災の前に戻っている感じがする。原発事故が過小評価され、あの日の教訓を忘れさせている。汚染水の放出問題も、トリチウムは一般の原発からも出ており、十分希釈すればよいと原子力規制委員会も考えているが、汚染水の実態はそうではない。海の環境を国際的にどのように守っていくかに対する認識がない。これはただのトリチウムではなく、事故を起こした原発から出る汚染水だという考えが足りない。原発事故から12年がたったが、セシウムなどの放射性物質に汚染された魚が今もとれる。果てしなく生物濃縮が起こっている。海は広くて薄まるからといって、放射性物質の海洋投棄をしてはならない。もっと公開的で民主的なやり方で汚染水の問題を議論していきたい」
東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-20 16:56


「The Hankyoreh」 2023-06-21 10:13
■韓国の野党議員、汚染水放出反対訴えハンストに突入

【写真】「福島第一原発の汚染水放出反対」を訴えハンストを開始した共に民主党のユン・ジェガブ議員が20日午前、ソウル汝矣島の国会本館前で議員たちの激励を受けている/聯合ニュース

 日本による福島第一原発の汚染水放出が迫る中、20日に開かれた韓国国会の農林畜産食品海洋水産委員会(農海水委)の懸案質疑では、与野党が汚染水放出の安全性をめぐってまたしても激突した。与党「国民の力」は、野党「共に民主党」が政治的利益を得るために「怪談」によって国論を分裂させていると主張し、民主党は国民たちの懸念を怪談と罵倒していると応じた。
 民主党のユン・ジェガブ議員はこの席で、「福島第一原発の汚染水放出は国民の命と安全にとって脅威であるばかりでなく、水産業そのものを根こそぎ壊滅させる放射能テロ」だとし、「覆水盆に返らずで、原発汚染水の海洋放出が始まれば何の対策もない」と述べた。汚染水放出の直撃を受けうる全羅南道の海南(へナム)・莞島(ワンド)・珍島(チンド)選出のユン議員は、この日から国会本庁前で汚染水放出反対を訴えるハンストに突入した。
 国民の力のパク・トクフム議員は「科学を無視して怪談によって恐怖を造成すれば、その被害はそのまま国民に回ってくる」とし「(2008年のBSE問題のように)事実には関心がなく、ひたすら政治的利益ばかりを追求する野党」と攻勢に打って出た。これに対し民主党のユン・ジュンビョン議員は「国民の懸念を政府与党は怪談とみなし、似非科学と罵倒し、ひねり潰そうとしている」と批判した。
 与党は「政権が変わったら民主党は言うことを変えた」と主張した。国民の力のホン・ムンピョ議員は「2020年に文在寅(ムン・ジェイン)政権は合同タスクフォース(TF)を設置し、福島第一原発の汚染水について懸案報告を行っているが、その報告書で『汚染水(放出)が及ぼす影響は微々たるものだ』と述べている」、「これが民主党の実体」だと主張した。これに対し無所属のユン・ミヒャン議員は「合同TFの報告書は文在寅政権の立場をまとめた報告書ではなく、国内動向として専門家の中にはこのような意見を持っている人がいると明らかにした報告書」だと反論した。
 与野党は、民主党のイ・ジェミョン代表が17日に仁川(インチョン)地域の「福島第一原発汚染水海洋投棄反対糾弾大会」に参加し、汚染水を「核廃水」と呼んだことについても攻防を繰り広げた。「2021年にムン・ソンヒョク海洋水産部長官が国際海事機関(IMO)に送った公文書では『核廃水』となっている」(民主党のウィ・ソンゴン議員)との主張がでる一方、パク・トクフム議員は「野党第1党の代表(イ・ジェミョン)が汚染水を『核廃水』と呼ぶと主張し、科学と常識を弄んでいる」と述べた。
オム・ジウォン、カン・ジェグ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-20 18:09


「The Hankyoreh」 2023-06-21 10:18
■「釜山市長は核汚染水放出問題で日本をITLOSに提訴するよう政府に建議すべき」

【写真】釜山の市民団体が20日、釜山市役所前広場で記者会見を行い、パク・ヒョンジュン釜山市長らに福島第一原発の核汚染水の海洋放出問題で日本をITLOSに提訴するよう求めた=キム・ヨンドン記者//ハンギョレ新聞社

 釜山(プサン)の市民団体はパク・ヒョンジュン釜山市長に対し、日本による福島第一原発の核汚染水の海洋放出を止めるために、国際海洋法裁判所(ITLOS)への提訴を尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に建議するよう求めた。
 地域の166の市民社会団体からなる「釜山古里(コリ)原発2号機寿命延長・核廃棄場反対 汎市民運動本部」は20日、釜山市庁前広場で記者会見を行い、「パク市長は市民の命と安全のために、日本政府による核汚染水の海洋投棄を止めるため、ITLOSへの提訴を尹錫悦政権に直ちに建議すべきだ」と述べた。
 同団体は「日本政府は核汚染水の海洋投棄に対してすべての海洋汚染防止措置を取っておらず、日本の地域外へと広がらないようにする措置にも従っていない。これは国連海洋法条約とロンドン条約(海洋汚染防止条約)に明確に違反するもの」だと主張した。
 同団体はまた「2020年に釜山、蔚山(ウルサン)、慶尚南道、全羅南道、済州道の5つの広域自治体は沿岸5市道協議体を結成し、日本による核汚染水の海洋放出阻止に向けた共同対応の取り組みを開始している。パク市長は市道協議体を通じて、日本政府をITLOSに提訴するよう、尹政権に建議すべきだ」と述べた。
 ハンサリム釜山のチャン・ビョンユン理事長は「市民の食の安全を脅かし、漁民の生業を危機に陥れる問題に対して、釜山市は手をこまねいている。パク市長は今からでも漁業者の被害や水産物の安全などの対策をきめ細かく準備するとともに、直ちに民間協議体を設置して強く対処してほしい」と注文した。釜山YMCAのオ・ムンボム事務総長は「政府がなしうる唯一の方法は、日本政府をITLOSに提訴することだ。市民、国民の安全は何ものにも代え難い。尹政権が国民、市民の安全を優先する政権なのかどうかしっかり目を見開いて見守る」と述べた。
キム・ヨンドン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-20 13:06


「The Hankyoreh」 2023-06-20 08:27
■IAEA中間報告書を分析すると…日本の汚染水放出への「丁寧なコンサルティング」

【写真】ソウル大学の海洋研究所所長・地球環境科学部教授のチョ・ヤンギ氏が19日、政府ソウル庁舎で開かれた福島原発汚染水放出に関する定例会見で、福島原発事故後に研究されたセシウムの表層拡散シミュレーションを説明している/聯合ニュース

 国際原子力機関(IAEA)は、日本の福島原発汚染水の海洋放出計画の安全性を検討した最終報告をまもなく発表する。汚染水の海洋放出を推進する日本はもちろん、圧倒的な放出反対の世論に包囲されている韓国政府も、この報告書は客観的かつ科学的な検証の結果だとし、大きく意味付けている。
 だが、IAEAが6回にわたって発表した中間報告書の内容を詳しくみると、汚染水の海洋放出を難しくする方向に結論が出る可能性がほとんどないというのが、大方の評価だ。なぜそのような評価が出てくるのかを調べてみた。

◆「海洋放出支援プロジェクト」として始まったIAEAの安全性検討
 IAEAは2021年9月、所属職員および韓国、米国、中国、英国、フランス、ロシア、アルゼンチン、ベトナムを含む11カ国の原子力専門家で特別チームを構成し、日本の福島原発汚染水の放出の安全性に対する検討を進めた。韓国からも、原子力安全技術院(KINS)のキム・ホンソク博士が参加している。
 国際的に発言力を認められている機関を通じて、韓国を含め利害関係が絡む11カ国の専門家が参加する検証であるだけに、結果が客観的かつ科学的である点は否定できないだろう。問題は、今回の安全性の検討の究極の目的が、「福島原発汚染水を海洋放出しても問題ないかどうか」を判断することではないという点だ。
 IAEAは、安全性の検討を始めた背景について「(2021年4月に海洋放出の計画を発表した直後に)日本が放出を安全に履行できるよう放出計画と関連活動のモニタリングと検討を支援するよう要請し、それを受け入れた」と明らかにしている。
 つまり、福島原発汚染水を海洋放出しても問題ないかどうかを判断するのではなく、日本が計画した汚染水放出を支援することが、安全性検討の目的だという話だ。「日本の要請」によって「汚染水の海洋放出を前提」になされる検討であるだけに、中立性の側面で根本的な弱点を持たざるをえない。可能性はまずないがIAEAの最終報告書の結論が放出に否定的であったとしても、日本には従う義務もない。

◆日本が同意した範囲内で検討…放射性核種をろ過する「ALPS」の性能は検討対象外
 日本の支援要請で始まったIAEAによる安全性検討は、徹底的に「日本が同意した範囲内で」で進められている。
 日本が要請したのは、「汚染水の海洋放出計画と、それに沿って進められる放出が、IAEAの安全基準を満たしているかどうか」を技術的に検討してほしいということだった。日本とIAEAは2021年7月、IAEAの支援方法などを定義した「付託事項」(ToR:Terms of Reference)に署名し、これに基づき検討の範囲やスケジュールなどを協議して決めた。
 具体的には、放出される処理水(汚染水)の放射能の特性▽放出管理のためのシステムとプロセスの安全性▽放射線環境影響評価(REIA)▽放出のための規制と認可▽処理水(汚染水)と環境のモニタリング・プログラム▽利害関係者の関与▽職業的放射線防護などを含む8点が検討対象だ。
 これによると、福島原発汚染水に含まれる放射性核種を取り除く「多核種除去設備」(ALPS)は検討対象ではないことがわかる。実際、最近までの6回にわたる中間報告書には、ALPSの性能と運営についての内容は含まれていない。ALPSは過去10年の間に8回も故障を起こし、汚染水の海洋放出の安全性を懸念する側が特に信頼性に疑問を呈している設備だ。

◆問題となる点を補う「オーダーメード型コンサルティング」形式で進行
 IAEAがこれまでに発表した6回の中間報告書を読むと、「提案した」「助言した」「認めた」「同意した」などの表現が多く登場することが目につく。言い換えると、IAEAの安全性検討は、「汚染水を海洋放出しても問題ないかどうか」を判断することを重視したものではなく、放出の履行を支援することが目的なのだ。
 そうした目的のもと、IAEAの安全性検討の多くは、特別チームが東京電力と関連の政府省庁である経済産業省、規制機関である原子力規制委員会(NRA)を訪問し、検討テーマに関する説明を聞き、質疑応答と討論を行う形式で進められた。
 質疑応答と討論は、日本の放出計画から安全基準を満たさない部分を発見することにとどまらず、利害当事者を説得するために足りない点を探して補完していく過程として進められた。一言でいうと、汚染水の海洋放出が滞りなく進められるよう、IAEAが日本に「きめ細かいオーダーメード型コンサルティング」を行い、共同して放出計画の完成度を高めていったわけだ。
 一例として、IAEAの特別チームが昨年11月に日本で検討任務を遂行した結果を盛り込んだ第4回中間報告書には、「(放射性物質の海洋拡散)シミュレーションの境界領域の海水中に存在する(低濃度の)炭素-14とヨウ素-129の推定値を(シミュレーションした結果に)加えれば、このような放射性核種の濃度は無視できる程度だということを示すことができる」という提言が含まれている。低濃度で生じる炭素-14などの数値を提示すれば、人々に特に影響がないという印象を与えやすいということを、東京電力側に「親切にコーチング」したわけだ。
 しかも、中間報告書を読むと、IAEAは日本が提出した資料と説明に全面的に依存しながらも、資料と説明の信頼性を確認する「交差検証」を疎かにしていることを示す記述も発見される。
 IAEAの特別チームが昨年2月に出した初の中間報告書で、日本の経済産業省と東京電力が周辺国を含む利害当事者に多くの情報を提供し、透明なコミュニケーションを行ったことを認め、東京電力に対しては「称賛した」とまで表現した内容がその一例だ。昨年6月に公開された第2回中間報告書には、日本の原子力規制委員会が隣国に情報を提供した努力を肯定的に評価した記述もある。
 こうした内容は、日本政府が「放射性物質の放出許可の過程で、情報交換が必要な利害当事者に隣国も含まれる場合がある」と規定した安全基準(GSG-9、「環境に対する放射能放出規制」)をきちんと守っていると評価したものだ。日本側から関連情報をろくに与えられず現状把握に困っている周辺国の立場としては、容易には納得しがたい評価だ。

【写真】日本の福島第一原発にある汚染水の貯蔵タンク。日本はこのように保存している原発事故汚染水133万トンを30年かけて海洋放出する計画だ/聯合ニュース

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-19 20:25


「The Hankyoreh」 2023-06-19 06:44
■汚染水海洋放出の影響、保護者ら心配の声…給食の現場でも悩み深まる=韓国

【写真】福島原発汚染水の海洋放出を控え、15日午後、京畿道水原市勧善区の京畿道保健環境研究院で、農水産物検査部農水産物安全性検査チームの研究員らが水産物の放射能安全性検査を行っている/聯合ニュース

 「原発汚染水の海洋放出が行われるようですが、子どもたちの給食は大丈夫でしょうか」、「水産物や塩が心配ですが、対策はありますか」。
 ソウルのある中学校で働く栄養士のKさん(37)は14日朝、給食のモニタリングに来た保護者からこのような質問を受けた。Kさんは18日、ハンギョレに「福島原発汚染水の海洋放出で、給食の食材に関する保護者の心配がますます高まりそうだが、これといった対策がなく、頭を悩ませている」と語った。
 福島原発汚染水の海洋放出を控え、韓国の市民の食に対する不安が高まり、保護者の間では給食の食材に対する懸念の声もあがっている。塩や海苔など水産物の買いだめ現象で食材の値段が急騰しており、学校給食を担当する栄養士たちの悩みも深まっている。
 Kさんは「現在、政府は放射能検査を経て基準値以下であることを毎回確認すると言っているが、検査数値が確実なのか、子どもたちの健康にどのような影響を及ぼすのか信頼できない状況」だとし、「これといった対策がない中、保護者たちの懸念にどのように対応すれば良いのか分からない状況だ。最近買いだめの影響で塩、海苔の値段が上がっており、給食の単価に合わせて食材を手に入れるのが難しくなりそうだ」と話した。
 ソウルのある初等学校の栄養士のAさんも「今、他の学校の栄養士たちと関連資料とニュースをモニタリングしながら様々な悩みについて話し合っている。12年前、福島原発事故が起きたばかりの頃は、水産物を給食メニューから外したこともあった。ウクライナ戦争ですでに食材の値段が大幅に上がったが、今のような買いだめが続けば給食の品質に影響を及ぼしかねない」と語った。
 学校現場で日本政府の汚染水放出により水産物に対する不安が高まったことを受け、ソウル市管内の小中高等学校に食材を供給するソウル市エコ流通センターは14日、「日本産水産物は納品しない」という公文書を所轄の学校に送った。ソウル市エコ流通センターの関係者は「すでに2020年から日本産水産物は学校に供給していない。しかし最近、保護者の懸念が高まり、『日本の水産物は最初から遮断しており、これから食材放射能検査も強化する』という計画などを知らせた」と話した。
 各教育庁も学校に納品される食材に対する放射能調査を拡大すると発表した。ソウル市教育庁は17日、一部の学校を対象に実施していたサンプリング方式の食材放射能調査をすべての学校の食材に拡大することにした。全羅南道教育庁も5日「水産物に対する放射能検査の強化計画」に基づき、年4回実施してきた水産物に対する放射能検査を年10回に増やすと発表した。
 しかし、食に対する保護者の不安はなかなか収まらない。2歳半の子どもを国公立の保育園に通わせているというイ・ジョンミンさん(34)は、「日本に住む知人から『日本人も済州(チェジュ)や釜山(プサン)に観光に行くと、魚は避けて肉だけを食べる』という話を聞いた。現在、保護者の間では『韓国産も信頼できない』という不安が大きく広がっている」とし、「放射能汚染による影響はすぐ現れるものではない。長い間体に蓄積して問題が現れる可能性もあるのに、政府は『安心せよ』という言葉を繰り返すだけ。具体的かつ明確な根拠を示してほしい」と述べた。
パク・チヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-19 02:45


「The Hankyoreh」 2023-06-19 07:14
■韓国政府与党、放射能調査地点を2倍に拡大へ…最大野党代表「汚染水ではなく核廃水」
 福島原発汚染水の海洋放出対策を議論 
 43カ所の委託販売場で流通前の全魚種を検査 
 水産業界に緊急安定資金の支援も

【写真】共に民主党のイ・ジェミョン代表が17日午後、仁川市富平区の仁川地下鉄1号線富平駅北広場で開かれた「日本による福島原発汚染水の海洋放出糾弾大会」で発言している/聯合ニュース

 韓国の与党「国民の力」と政府は、日本による福島原発汚染水の海洋放出への対応策として、海洋の放射能調査地点を2倍以上拡大し、水産物の大型委託販売場43カ所で流通前の国内産の全魚種に対する検査システムを構築する案をまとめた。野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表は原発汚染水を「核廃水」と称し、政府が国民を欺いていると批判した。
 政府与党は18日、ソウル鍾路区三清洞(サムチョンドン)の首相公館で政府高官と党幹部による協議会を開き、海洋の放射能調査地点を従来の92カ所から200カ所に拡大し、セシウムとトリチウムの濃度分析周期を現行の1~3カ月から隔週単位に短縮することにした。また、水産物の委託販売の80%以上を占める大型委託販売場43カ所に流通前の国内産の全魚種に対する検査システムの構築を進めることにした。政府与党はまた、水産業界に緊急経営安定資金を支援することにした。これらは福島原発汚染水対策に対する世論の不信感を意識した措置とみられる。韓国ギャラップが16日に発表した世論調査結果によると、福島原発染水の海洋放出問題に対する不満が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の職務遂行を評価しない理由の2位に挙げられた。
 民主党は批判を強めている。イ・ジェミョン代表は17日、仁川市の富平(ブピョン)駅近くで開かれた「福島原発汚染水の海洋投棄反対・糾弾大会」に参加し、「核物質にさらされ、それらを含んで流れる地下水は明白に核廃棄物だ」としたうえで、「(国民の力が)『核汚染水』だと(言った民主党関係者を)告発するというから、これからは『核廃水』と呼ばせてもらう。国民が任せた権力で国民をだまし、脅し、生命と安全を脅かす行為をするなら、国民の代理人の資格がない」と述べた。
 一方、政府与党は「釜山(プサン)回し蹴り強姦殺人未遂事件」を機に進められている重大犯罪者の身元公開の拡大に関する法案を速やかに法制化することにした。特に、既に党が検討した「女性・児童対象強力犯罪」などをはじめ「内乱、外患、テロ、組織暴力、麻薬」などの重大犯罪と、起訴された状態の被告人まで身元公開の対象に含めることにした。
カン・ジェグ、ソン・ヒョンス、ソン・ダムン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-18 23:25


「The Hankyoreh」 2023-06-19 05:58
■「海は日本の下水溝なのか」…韓国政府が沈黙する間に世界各国の反対論激化
 [ハンギョレ21] 
 フィジー・中国など周辺当事国、汚染水の放出に明確な反対の声
 
【写真】中国外交部の汪文斌報道官が定例会見を行っている/REUTERS

 「透明性に基づいて客観的かつ科学的な評価をした後に立場を決めることになるだろう」。
 韓米日安保室長会議出席のため6月14日に東京を訪問したチョ・テヨン大統領室国家安保室長は、羽田空港で記者団に対しこのように述べた。東京電力が6月12日、福島原発の核汚染水の海洋放出のための試運転に入ったにもかかわらず、従来の立場から一歩も変わらない発言だ。

 「それほど安全なら、なぜ汚染水を日本にとどめておかないのか」

 福島原発汚染水の海洋放出に明確な反対の意思を明らかにしない尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権とは異なり、周辺の当事国はますます声を高めている。6月3日、シンガポールで開かれた第20回アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で、日本の浜田靖一防衛相を前に「それほど安全なら、なぜ汚染水を日本国内にとどめておかないのか」と問い詰めたフィジーのティコドゥアドゥア内務長官が代表的だ。中国も、日本政府が海洋放出の方針を公にした2022年7月以後「太平洋は日本の下水溝ではない」という表現を用いて、機会あるごとに反対の立場を明確にした。
 「福島原発汚染水の海洋放出は、全世界の海洋環境と公衆保健に関する問題であり、日本だけに限った問題ではない。日本側が内外の強い反対にもかかわらず汚染水の海洋放出を強行するなら、これは非常に無責任な行為であり、世界の世論の支持を得ることはできないだろう」
 中国外交部の汪文斌報道官は、6月14日の定例会見で「福島原発汚染水の放出は『国連海洋法条約』が規定した海洋環境保護および保存義務に違反する行為」だと述べた。これまで中国外交部が強調してきた汚染水海洋放出の反対論理は大きく4つにまとめられる。
 第一に、原発事故で作られた汚染水を人為的に海洋に放出した前例はない。したがって、これによる危険性も予測が不可能だ。
 第二に、日本側は十分な研究と実証を通じて最も安全な汚染水処理方案を設ける意思がなく、ただ経済的側面だけを考慮して海洋放出を決定した。隣国はもちろん、全人類に汚染水による危険と費用を転嫁しようとするも同然だ。
 第三に、国際原子力機関(IAEA)評価団は日本政府の要請により構成され、職務範囲が制限されている。汚染水の海洋放出自体を見るだけで、その他の汚染水処理方案を検討する権限はない。したがって、IAEA評価団の報告書は汚染水海洋放出の「免罪符」にはなりえない。
 第四に、専門家らは、福島原発汚染水は溶け出した原子炉の炉心に直接触れたため、数十個の放射性核種を含有しており、これらの核種の相当数はまだ効果的な処理技術がないと指摘している。一部の半減期が長い核種は、海流と共に広がり生物に濃縮され、自然環境の放射性核種総量を追加で増やし、海洋環境はもちろん人体にも予測不可能な危険を加重させかねない。
 中国外交部の毛寧報道官は今年5月23日の定例ブリーフィングで「海洋放出以外の汚染水処理対策を用意するために周辺国を含む利害当事者と十分かつ意味ある協議が必要だ。人類が予測不可能な危険を避けられるよう、日本政府は科学的で公開的、かつ透明で安全に汚染水問題を処理しなければならない」と強調した。
チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-18 18:16


「The Hankyoreh」 2023-06-17 09:12
■韓国政府、日本も行わない「汚染水不安解消」定例会見を毎日実施へ
 汚染水放出計画の安全性に対する懸念に積極的に釈明 
 「韓国の基準の2万倍は事実…そのまま放出ではない」 
 環境団体「そんな時間があるなら、まず影響の把握を」

【写真】国務調整室のパク・クヨン国務第1次長(右から4人目)が15日、政府ソウル庁舎別館で福島第一原発の汚染水放出に関する会見を行っている/聯合ニュース

 韓国政府は、日本による福島第一原発の汚染水の海洋放出に対する国民の不安を解消するためとして、15日から毎日定例会見を行う。
 国務調整室のパク・クヨン国務第1次長は15日、政府ソウル庁舎で行った「福島第一原発汚染水放出に関する定例会見」で「科学的事実にもとづいた情報を頻繁に提供することが必要だという判断に至り、定例会見を毎日実施することとなった」と語った。この日の第1回目の会見にはパク国務第1次長以外にも、海洋水産部のソン・サングン次官が発表者として出席したほか、原子力安全委員会のシン・ジェシク放射線防災局長をはじめとする政府関係者が多数参加した。
 この日の会見で政府は、日本の放出準備作業の進捗状況を説明するとともに、メディアに問題点として指摘された内容について積極的に釈明した。
 パク国務第1次長は、多核種除去設備(ALPS)による処理後も最大で基準値の2万倍の放射性物質が検出されるという報道について、「東京電力が公開している貯蔵タンクの汚染水の核種ごとの放射能濃度を示した資料で、ストロンチウムの濃度の最大値として、リットル当たり約43万3千ベクレルが検出されたという内容」であり、「この検出値が韓国の排出基準であるリットル当たり20ベクレルの約2万倍に当たる数値であることは事実」ではあるが、「基準値を超える汚染水がそのまま放出されるわけではない」と釈明した。パク次長は「日本はこのような汚染水が基準値を満たすまでALPSで浄化し、希釈後に放出すると表明している」と付け加えた。
 東電は汚染水の上澄みだけを試料として採取しているため代表性が足りないという一部の報道について、パク次長は「その試料は国際原子力機関(IAEA)の確証モニタリングのために採取したものではない、目的がまったく異なる試料採取だった」と釈明した。
 福島第一原発の汚染水放出によって被害を受ける漁業者への支援と、海洋環境汚染の回復を主な内容とする特別法案が、12日に国会に上程されたことに関して、海洋水産部のソン・サングン次官は「まだ発生していない被害に対する補償と回復を議論するのは時期尚早」だとし、否定的な立場を明らかにした。ソン次官は「特別法の制定議論は、現段階では慎重な検討が必要だと考えられる」として「韓国の水産物に対する国民の不安を軽くし、怪談などの市場かく乱行為によって水産業界に被害が発生しないようにすることが順序としては先だ」と語った。
 政府は「定例会見は、国民の不安が十分に解消されるまで週末を除いて毎日実施する予定」だと明らかにした。しかし、放出を準備している肝心の日本政府や東電は、このような毎日の会見を行っていない。これについて、環境運動連合のアン・ジェフン活動処長は「日本政府を代弁する内容の会見を毎日実施するというのは、韓国政府のなすべきことなのか」とし「そのような時間にむしろ汚染水放出の影響を把握した方が良いだろう」と述べた。
キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-15 19:07


「The Hankyoreh」 2023-06-17 07:32
■福島原発汚染水を処理するALPS、昨年も故障…10年間で8回も
 韓国政府の定例会見 
 「汚染水が海洋放出されても水産物の輸入禁止は維持」

【写真】パク・クヨン国務調整室国務第1次長が16日、政府ソウル庁舎別館で開かれた福島原発汚染水放流関連の定例会見で、記者の質問に答えている/聯合ニュース

 韓国政府は16日、福島原発事故の汚染水を処理する多核種除去設備(ALPS)で最近まで10年間、計8回の故障が発生したと明らかにした。
 パク・クヨン国務調整室国務第1次長は同日、政府ソウル庁舎で行った「福島原発汚染水海洋放出に関する定例会見(毎日実施)」で、ALPSと関連し、「2013年6月に設置して以来、昨年7月まで8回の故障があったことは視察団が資料を要請して受け取った内容であり、事実だ」と述べた。政府が構成した福島原発汚染水視察団は、先月31日、活動結果報告でALPSの主な故障事例や措置事項などの資料を確保し精密分析していると明らかにした。
 原子力安全委員会のシン・ジェシク放射線防災局長は、故障の具体的な類型と位置に対する質問に「腐食が2013年と2014年に2件あった。フィルター関連では2014年から2020年まで4件、2021年度に1件、(昨年)定期点検の時も1件あった」と答えた。
 ALPSで最近まで故障が発生したことは、ALPSが長期間にわたり安定的に運営されるかについて徹底した検証が必要だという主張を裏付けている。これに関してパク国務第1次長は「視察団が詳細資料を受け取って分析を行っており、これに加えて定期点検の項目や設備維持管理計画などもさらに確保し、ALPSが長期間にわたり安定的に運営される可能性がどれくらいあるかについて詳しく分析している」とし、「結果は最終報告書発表の際に含まれる計画」だと語った。
 同日の定例会見でソン・サングン海洋水産部次官は、汚染水が海洋放出されれば福島を含む近隣8県の水産物輸入禁止措置も解除されるという一部の懸念について、「水産物の輸入禁止措置は原発汚染水の海洋放出問題とは全く違う問題」だと述べた。
 2011年の福島原発事故による大規模な放射性物質流出以後、韓国政府は福島を含む近隣8県の水産物に対して輸入禁止措置を取ってきた。ソン次官は「福島付近で基準値以上の放射能に汚染された水産物が今のように発生する限り、絶対に(当該地域の)水産物の輸入はしない。福島地域が放射能から安全だと科学的に立証され、国民が安全だと感じるまで、政府は輸入禁止の解除を検討しない」と述べた。
 一方、政府の汚染水関連の定例会見について、マスコミと野党などから日本政府を代弁するものだと指摘されていることについて、パク国務第1次長は「定例会見を始めた目的は国民により正確な情報を伝え不安を解消するため」だとし、「そのような目的なら、こうした定例会見はできるだけ多くの形で繰り返し行うのが良いと判断した」と述べた。
キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-06-16 23:23


「The Hankyoreh」 2023-06-16 10:47
■[寄稿]福島原発汚染水「怪談」、2021年vs2023年
 ソ・ボクキョン|ザ・可能研究所代表

【写真】東京電力が福島第一原発に保管中の放射性物質汚染水の海洋放出の設備試運転を開始した12日午後、国会前で「日本による放射能汚染水の海洋投棄阻止のための第2回全国行動の日全国漁民大会」が開かれている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 6月12日、日本の東京電力が福島原発汚染水を海洋放出するための試運転を開始した。同日、ハン・ドクス首相は、国会の対政府質疑で「行き過ぎた虚偽の事実の流布などによって水産業従事者が被害を受けることが生じた場合、司法当局が適切な措置を取る」と述べた。13日、与党「国民の力」の蔚山市(ウルサンシ)党支部は「汚染水を『核汚染水』と表現したことによって(…)悪意の怪談を流布した(野党)共に民主党の蔚山市党支部の者に対して『虚偽の事実流布』容疑で警察に告発措置を取る方針」だとする声明を出した。14日、国民の力のキム・ギヒョン代表は、フェイスブックに「(共に民主党の)イ・ジェミョン代表と共に民主党が、狂牛病怪談の扇動専門のデモ軍団と手を結び、国民を相手にまたしても非科学的な怪談を作っている」と書いた。
 2023年、政府と与党は、差し迫った汚染水の海洋放出に対する野党や市民団体、漁業者ら利害関係者の批判と懸念に対して、「怪談」あるいは「虚偽の事実」とレッテル張りをし、必要ならば法的制裁も加える方針のようだ。ところが、その基準によると、与党のキム・ギヒョン代表とチョ・テヨン国家安保室長、パク・チン外交部長官ら現政権の関係者たちの2021年の考えは「怪談」なのか、そうではないのだろうか。
 「日本政府は、2021年4月13日、福島原発の汚染水の海洋放出決定を突然発表した。(…)日本政府は、汚染水はきれいで安全に処理されると主張しているが、汚染水の成分に対する透明性が足りず、処理過程に対する科学的検証が不十分で、国際社会が強く懸念している。福島原発汚染水には、人体に致命的となるトリチウムをはじめとする60種類ほどの放射性物質が含まれているが、完全な除去は難しいとするのが専門家らの意見だ。(…)福島原発汚染水の海洋放出は、人類と未来世代の生命と健康に直結する問題であり、海洋生態系の安全と水産業界の生存にかかわる重大な事案だ。したがって、科学的根拠と透明な手続きをともなう、徹底した検証と安全性の確保が必須だ(「日本政府の『福島放射能汚染水』放出決定糾弾および原発汚染水の安全性確保のための大韓民国政府の積極的な対策要求決議案」キム・ギヒョン議員ら16人発議、2021年4月29日)。

【写真】12日午後、国会前で「日本の放射能汚染水の海洋投棄阻止のための第2回全国行動の日全国漁民大会」が開かれている=キム・ヘユン記者//ハンギョレ新聞社

 「放射能汚染水」と表現すれば「怪談」ではなく、「核汚染水」と言えば「怪談」になるのか。「60種類ほどの放射性物質の完全な除去は難しい」とする専門家らの意見を受け入れた2021年のキム・ギヒョン党代表ら国民の力の議員たちの考えは「科学的意見」であり、2023年に「東京電力の汚染水処理は安全だとは信じがたい」とする野党や市民の意見は「非科学的な怪談」なのか。2021年に日本政府の放出決定を糾弾したことは怪談ではなく、2023年に糾弾をすれば怪談になるのか。いったい政府と与党の「怪談」の基準は何なのか。
 過去2年間、東京電力の汚染水処理技術に画期的な発展があったという根拠はない。政府と与党は7月、「国際原子力機関(IAEA)の最終報告書が出てくれば、客観的根拠が用意される」のだから、その前に様々な批判をすることは「怪談」や「虚偽の事実」に該当するとみなしているようだが、そうした観点であれば、IAEAの最終報告書がいつ出てくるか分からなかった2021年の国民の力の議員たちの決議案こそ、「怪談」ではないだろうか。

【図】「日本政府の『福島放射能汚染水』放出決定糾弾および原発汚染水の安全性確保のための大韓民国政府の積極的な対策要求決議案」(キム・ギヒョン議員ら16人発議)に名を連ねた16人の名前=国会議案情報システムよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 2021年以降、日本政府が「科学的根拠と透明な手続きにともなう徹底した検証および安全性確保」を行ったのかどうかについては、見る観点によって立場が違う。キム・ギヒョン党代表らが、2年前とは違い、日本政府と東京電力の「放射能汚染水」処理を「科学的に」信頼できるようになったとすれば、国会やメディアのインタビューなど様々な空間で、根拠を挙げて野党や市民を説得すべきであり、「怪談」や「虚偽の事実」とレッテル張りをして告訴・告発を乱発し、興奮することではないのではないか。
 科学的根拠を持って論じなければならないという主張は、一見妥当にみえる。だが、国内外の科学者の関連の主張自体が多様かつ対立しており、一つの結論に至ることができないのが現実だ。日本社会ですら反対意見が優勢な状況であるにもかかわらず、韓国市民が不安を感じることがおかしなことなのか。
 「不思議で奇妙な話」。「怪談」の辞書での定義だ。汚染水処理や海洋放出の安定性と今後及ぼす影響について、何一つ明らかなことはないが、何より先に「怪談」や「虚偽の事実」と断定する韓国政府と与党の話のほうが、私の耳にははるかに「怪談」に聞こえる。
ソ・ボクキョン|ザ・可能研究所代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1096088.html
韓国語原文入力:2023-06-15 18:46


「The Hankyoreh」 2023-06-16 08:23
■[コラム]良心を汚染水で薄めて捨てようとしている日本政府
 チョン・ナムグ|論説委員

【写真】日本の放射性物質汚染水海洋投棄阻止ソウル行動のメンバーが15日午後、ソウル西大門区の西大門駅近くから出発し、放射能汚染水放出中止を求めるパフォーマンスを繰り広げながら鍾路区の在韓日本大使館に向かって行進している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 建物の同じ階にある他のオフィスで誰かがタバコを吸っているので消してほしいと言ったら、次のような返事が返ってきたという話を聞いた。
 「ここで私がタバコを1箱ほど吸ったからといって、あなたが受動喫煙でがんになるわけでもあるまいし」。
 福島第一原発で生じた放射能汚染水を今後数十年にわたって福島沖に捨て続けるという日本の態度は、まるでこの人のようだ。日本は遠からず汚染水投棄を強行すると思われる。その日、日本政府はどうにかコップ1杯分ほど残っていた良心すら、汚染水で薄めて捨ててしまうだろう。
 2011年3月に起きた福島第一原発事故は現在も進行中だ。原発1~3号機の1496本の燃料棒に入っていた核燃料は一部燃焼し、セシウムなどの核分裂生成物質が原子炉内に閉じ込められていたが、原子炉が損傷したことで大量に大気中に流出した。かなりの量が風に乗って飛んでゆき、世界中にばらまかれた。
 原子炉内で溶け落ちた核燃料の残骸は地下水を汚染している。高濃度の汚染水が、一時は1日に300トンも海に流れ込んでいた。漏れた総量がどれほどなのかは誰にも分からない。史上最大の海洋放射能汚染を引き起こした1983年の英ウィンズケール再処理施設の放射性廃液流出事故より、はるかに多いだろう。福島沿岸では今も半減期の長いセシウムにひどく汚染された魚がとれる。
 東京電力は汚染水をタンクに貯蔵してきた。汚染水を吸着装置サリー(SARRY)でろ過してセシウムやストロンチウムを除去し、続いて多核種除去設備(ALPS)でろ過してトリチウム(三重水素)以外の管理対象核種を排出基準値以下になるまで除去しているという。炭素14は平均で基準値の40分の1ほどになるというから除くとしても、トリチウムをまったく除去できていない汚染水は「事故によって発生した放射性廃棄物」に過ぎない。それを改めて海に捨てることは、原発事故で人類に大きな被害を与えたことに対する一握りの責任感さえ忘れ去った行為だ。
 汚染水にはトリチウムが1リットル当たり平均68万ベクレル(1ベクレルは1秒間に崩壊する原子核の個数、およびその際に放出される放射線の本数)含まれている。日本の排出基準値であるリットル当たり6万ベクレルの10倍を超える。国際放射線防護委員会(ICRP)は放射線被ばく量を「社会的・経済的な諸要素を考慮して合理的に達成可能な最低の値にする」(As Low As Reasonably Achievable)という原則の下、一般人の被ばく量を年間1ミリシーベルト以下にするよう勧告している。リットル当たり6万ベクレルは、それが含まれた水を1年にわたって1トン飲んだら、被ばく量が1ミリシーベルトに迫る放射能濃度だ。1ミリシーベルトは1万人に1人の割合でがんによる死亡者が発生すると考えられる水準だ。交通事故の死亡率と似たような「その程度の危険は受け入れよう」という意味の込められた数値であるに過ぎず、「安全」を保障する数値ではない。
 日本政府はトリチウムを含む汚染水に50倍ほどの海水を混ぜ、濃度をリットル当たり1500ベクレル未満にまで下げて捨てるという。海水で薄めようというのなら、そもそも高濃度の汚染水も基準値以下にするのはとても簡単だ。地球の海水の総量は136京トンで、130万トンの福島第一原発の汚染水を1兆分の1にまで希釈できるほど大量にあるからだ。「基準値以下だから大丈夫」という言い草は「海はとても大きいから、人間の生活を脅かすほど汚染するにはほど遠い」という暴言に他ならない。
 日本政府は汚染水投棄をやめるべきだ。日本にとっては金のかからない解決策かもしれないが、隣国にとっては何の利益もなく、危険のみを甘んじて受け入れよと要求する権利は日本にはない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領、政府、与党国民の力は日本政府をかばいだてするのに必死だ。尹大統領の「(福島第一原発では)放射能漏れはなかった」とか「(原発の)安全を重視する官僚的な思考は捨てるべきだ」などの発言との一貫性はあるが、一体どの国の政府なのか。
 私は西海(ソヘ)の塩と南海(ナムへ)の刺身はこれからも食べ続けるつもりだ。汚染水を考えた時の気の重さより、食べられないもどかしさの方がはるかに大きいだろうから。だが、我々が人類共同の資産である海をいかに破壊しているかを考えるとめまいがする。福島第一原発の汚染水に含まれるトリチウムは900兆ベクレルほど。世界各国の原発からは、1カ所当たり年に多くて100兆ベクレルのトリチウムが排出されてきた。英国、フランス、日本の使用済み核燃料再処理施設は、原発の数倍から数百倍の量を排出する。重金属や化学物質、マイクロプラスチックによる汚染は放射能より深刻だ。生命は海から誕生したのにもかかわらず、人類は海を破壊している。

チョン・ナムグ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1096106.html
韓国語原文入力:2023-06-15 16:24
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