いぶろぐ

3割打者の凡打率は7割。そんなブログ。

午後の連続ヒューマンドラマ:時計の結ぶ父子の腐れ縁

2013-04-08 15:40:10 | 特選いぶたろう日記
んで、この時計にまつわるドラマを。
この2枚の写真見比べて、わかります?





青いバンドの方はですね、小学生の頃、親父に買って貰ったものなのです。
何度か話しているとおり、親父は多忙な人間でして、
僕は親父と過ごした時間が非常に短いので、
親父と何かをした、あるいは親父に何か貰ったという記憶が少なく、
少ない分、貴重な思い出として残っているわけですね。

で、この時計はおそらく、僕が生まれて初めて
「自分の腕時計」として愛用したものではなかったかと。
いまはいざ知らず、昔は「子供は子供」でしたから、
「自分の時計」なんて持てたら大人になった感じで、
すごく嬉しかったじゃないですか。
バスや電車で1時間かかる塾通いに、得意げにしてったよな-。
ウラに油性ペンできったねー字で名前まで書いてあるもんなー(笑)。
周囲はデジタルだったけど、敢えてのアナログがまた渋くてさ。

で、親父と離れ、中学上がって東京に越してきて、
それからもしばらくはしてたハズなんだけど、
いつしかどこかへ紛れ込み。
「親父が居なくて当たり前」の生活の中、
自分でこだわりの時計を買うようにもなり。
時は流れ、いい大人になり、親父の4度目の結婚の報に接します。

ある日のこと。
たまたま、ネットを見ていて、ひょこっと飛び出たポップアップ。

あれ???
おれ、この時計、見たことある!

オレンジなんて、いまの僕のチョイスでは絶対ないんだけど、
この頃の思い出のおかげで、オレンジの時計には反応しちゃう。
それがもう1枚の写真、今回壊れたTIMEX。

絶対そうだ!まちがいない!
よし、これ、親父の結婚式にしていこう!

ということで、ポチポチポチ。
いくらすんだろう、なに?2万7千?
たっけー!

でもさすが親父、子供にもちゃんと一流品をと…。
思えば自転車欲しいって言ったらプジョーが来たし、
財布欲しいって言ったらハンティングワールドが来たし、
入学祝いでモンブランが来たし、
いずれも猫に小判・豚に真珠だったけど、
普段時間が取れない分の罪滅ぼしで、
お金をかけることで穴埋めをしようとしていたのかなあ…。
何て不器用な親父なんだろう…(涙

そんな感傷にも浸りつつ、
思えば、この時計を買って貰ったときの親父の年齢に、僕はなっているわけで。
ちょうどボーナスの時期だったこともあり、ここで買わねば僕の負け。
ということでズバッと買ってしまったのでした。
やがて現品が届き、ワクワクしながら封を開け、
手に取ったそれはズシリと重く、改めてお気に入りの品に。

…しかし…こんなにでかかったかな…。

次の週、久しぶりに江戸川区の実家を訪ね、
僕の荷物が置いてある部屋をがさごそ家捜し。
どーしても確かめたくなったのでした。
すると、小一時間ほどで、出てきた!
親父に買って貰ったのオレンジの時計!



四半世紀の歳月を経るウチ、バンドはちぎれ、ホコリをかぶり、
ハリも止まっては居たけれど。
なっつかしー!!!

…って、あれ?
TIMEXじゃあ、ないな………。

文字盤に書かれていたのは「Q&Q」というブランド名。
シチズンだ。

いや、国内メーカーの方が高品質だということかもしれないし、
なんか、50mくらい潜っても大丈夫なヤツだとか、
例によって饒舌なハッタリいっぱい聞かされたし…

ここで、美しい思い出として留めおけばよいものを、
ジョースター家の男にも負けない好奇心と探究心溢れる僕は、
ついつい、お値段を調べてみるという野暮に出たのだった。

さすがに、同じモデルのはない。
でも、似たようなあたりで…

4200円。

軽く、貧血を覚えた。
僕は思い出に2万3千円多く支払ってしまったのだ。
まー、常識的に考えて、いつなくすか壊すかわからない小学生、
ましてや僕だ、高級腕時計なんて買い与える方がどうかしている。
親父の判断は極めて正しいのだが。

イイ笑い話ができたなーと思って、そっと持ち帰る。
せっかくだから、再生させたいなーと思い、
時計屋を訪ね、電池交換を依頼。
だめだったら修理しようかな…と。
すると…

驚いたことに、25年間もノーメンテだった時計が、
何の支障もなく再び時を刻み始めたのだ!
あたかもそれは、同じ期間ずっと交渉のなかった僕と親父が、
妹の結婚をきっかけに、自然と関係が修復されたように。
再び親子としての時間を刻み始めたように。

時計屋もびっくり。
僕はガラにもなくちょっと感動して、新しくキレイなバンドに付け替えた。
25年の月日を超えても、なお当たり前に動く、4200円の親父の時計。
その2週間後、僕の2万7千円のTIMEXは、
ぽろりリューズが取れていた(笑)。

親父の結婚式前夜、僕の部屋を訪ねてきてくれた親父と嫁さんと弟妹に、
とっておきのこの話をしてみた。
親父の何とも言えない表情と照れくささを押し殺した、
まるで僕のようなリアクションが印象的だ。
ちょっと間の抜けた、かなり笑える、でもちょっといい話。
なくなりそうでなくならない、
実にしぶとく明るい我が一族を象徴しているかのようだ。
Comment (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おい、TIMEX | TOP | セコイぜ、TIMEX »
最新の画像もっと見る

1 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
(^-^) (ゆり)
2013-04-13 11:57:58
何か凄くしんみりしてしまいました。
時計、大事にしてあげてくださいね(*^^*)
お父さん、ご結婚おめでとうございます。
先月25日に女の子を出産しました。
息子はすっかりお兄ちゃん風吹かせて(笑)妹の世話を焼きたがります。二人目の出産は長男の時より大変でした。が、今回の出産はなかなか笑える出産でしたよ~(笑)息み逃しの間、私ひたすら助産婦さんに『お尻の穴押さえててください!赤ちゃん出ちゃう~!』って叫んでました(TT)分娩室まで助産婦さんにお尻の穴押さえてもらってました(笑)\(__)良く良く思い返してみると赤の他人に『お尻の穴押さえててください!』なんて凄いこと言ってるなぁ~って出産の最中、冷静に考えてる自分も居ました。あんなに痛い思いしたのに『三人目も良いかな』って思う自分にびっくりしました。女の子はやっぱり格別ですね。可愛いです(*^^*)
返信する

post a comment

Recent Entries | 特選いぶたろう日記