いぶろぐ

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「国民栄誉賞」を考える

2000-10-13 09:13:01 | 似非哲学の部屋
マラソンの高橋尚子が「国民栄誉賞」を貰うらしい。
こくみんえいよしょう。
文字通り解釈すると、
「国民として栄誉あるものを表彰する賞」だ。
…なんじゃそりゃあ。

どうやら「社会に明るい話題・夢や希望を提供した人」に対して、
首相が表彰するというものらしい。
でも、どーも定義というか、授賞基準が曖昧だ。
まず「功労賞」なのか、「褒賞」なのかが解らない。
生きてる間、ずっと頑張って社会を明るくしてくれた人たちに、
ごくろうさま的な意味合いであげるものなのか、
何かものスゴイことやってくれた人たちに、
「よくやった!ほうびじゃ!」であげるのか。

でもどっちにしても俺、
国が表彰するってとこに、どーにも抵抗あるんだよね。
なんかさ、戦中戦前の、
「お国のために死んだら英雄、勲章」につながるイヤ~な臭いがしない?
「国」の腐臭といってもいいな。
国民栄誉賞も死んでからあげたりするしね。
この「死んだら貰える」てのイヤだね。
どーにかならんか。意味ないじゃん。
警官とかの殉職二階級特進なんてのもそうだけど。
気持ちは解るけどさ、やっぱり死んじゃったら意味ないよな。
本人喜べねえもん。
なんで生きてるウチにやんないのかね。
んなもん、もったいぶったってしょーがねえじゃんなあ。

今回は珍しく、
金メダル獲ってすぐにこういう声が挙がってるんだけど、
これはきっとスポーツというジャンルだからだと思うな。
つまりさ、賞をあげる「きっかけ」があるから生きているウチにあげやすい。
過去の受賞者を見ても野球の王・衣笠、柔道の山下、
相撲の千代の富士などのように、
記録達成、あるいは引退(それもまた選手生命の終わり=現役選手としての死ではあるが)
という「きっかけ」があるんだよね。
「おう、そんなにすごいことしたんか、じゃあこれを…」とか、
「おう、辞めるのか。じゃあ今までよくやってくれたからこれを…」って感じだね。

ところがこれが芸能方面になると、
あげる「きっかけ」に乏しくて、なかなかタイミングが難しい。
そうこうしてるうちに死んじゃう。
だから今でも「死ねば国民栄誉賞」な人っていっぱいいると思うぜ。
「寅さん」の渥美清とかそうだったもんな。
森光子とか森重久弥(まだ生きてるよな?)とかが有力だろうけど、
芸能人でもらえる奴ってのはみんなどうしても、
「死んでから」になっちゃうだろうな。
例え向こうのアカデミー賞獲ったって、
生きてるウチには貰えないでしょう。
ましてや「上方お笑い大賞」とか「ものまね大賞」とかじゃぜんっぜんダメだ。
お笑いは永久に貰えないだろう。
だって古今亭志ん生でもダメだったんだぜ。
やすしきよしもだめ。
立川談志なんか絶対ダメだろう。
たけしも犯罪歴あるからダメだろうな。

芸人って奴はどこかROCKと通ずるものがあって、
犯罪すれっすれの(時には犯罪そのものの)生き方してないと、
味・深みが出ないなんて世界だから、
そもそも国家のくれる賞なんかとは折り合いが悪い。
だからどんなに実際に国民に「笑い」という希望や活力を与えても評価されにくい。
まあでも、だいたい芸人としては、
国なんかよりも庶民に直接支持されて、
記録より記憶にとどまった方がかっこいいんだけれども。

音楽もそうだろうな。
服部良一とかがもらってんだよね。
小沢正一は貰えるかな?坂本龍一とかいけそうだな。
まさか小室なんかにいかねえだろうな。
あ!でもあいつサミットにしょぼい曲出したんだよなあ。
小渕在任中に急死してたら貰えてたかもな…恐ろしい国だな。
てこたヨシキって可能性もあったのか。軽いなあ…。
そうだ!矢沢永吉!!
YAZAWAに決定して、そんでいて蹴ってもらいたい。
かっこいい。
阿久悠とかにもあげたいなあ。
小林亞星は…ビミョーだなあ…なにかってえとすぐ怒り狂ってんかんなあ…。
キダタローにあげたらほんと俺はその決断をした首相の終身政権を支持するが。

作家の大江健三郎は「ノーベル文学賞」という、
もう有無を言わせないくらいの
もんのすごい「きっかけ」で生きてる内にゲットしたけど、
でもこれ「国民栄誉賞」なんかよりも全然格上だ。
他のジャンルでこれに匹敵するものってそうそうないだろ。
金メダルぐらいだな。
同じ「作家」でもノーベル賞からは100億光年くらい離れてる
「マンガ」というジャンルの作家だった、
「サザエさん」の長谷川町子は死ぬまで貰えなかったもんな。
そうするとどうしてもマンガと同じく大衆娯楽である芸能方面は、
苦戦を強いられざるをえないよね。
ノーベル賞・金メダル・前人未到の記録という圧倒的な説得力を持つ、
あるいは擬似的な「死」である「引退」という強力な「きっかけ」を持つ、
学界・スポーツ界に対して、
どーにも有効カードのない芸能人は、それこそ死ぬしかない(笑)。
死んで、授賞報道がなされて、
「ああ、やっぱりあげるのか…。そんなすごい人だったんだな…。」
ということをみんなにわからせる。
なんか芸能人だけ賞が果たす役割が違ってるよね。悲しいなあ。

芸能人以外では、
多分登山家の植村直巳が同じような意味合いでもらってるんだろうな。
あそこで(登山中にという悲劇のシチュエーションで)死ななかったら、
きっかけないまま貰わないで一生終わってただろうしなあ。
やっぱ死ぬのが一番あげやすいのかな。変な話だ。

国民栄誉賞にまつわる変な話をもうひとつ。
今回のこの高橋尚子に、ていう話でも、
案の定噴き出してきてるのが
「なんであいつにはやらなかったのに、こいつに?」とかってやつ。
あ~~!!やだやだ!醜い。小さい。
んで今日東スポ見たらさ(好きだね俺もしかし)、
朝刊で授賞が話題になったばかりなのに早くも、
『高橋国民栄誉賞辞退も』
なんて見出しでさ。『国民間で大論争に発展』とかってなってんの。
どーゆーことだよおい、って広げてみたらさ、
その「国民的論争」とやらの根拠があんまししょぼいんで大笑いしちゃった。

(以下要旨)
「…同じく金メダルの田村亮子には何故あげないのか、というデーブスペクター氏の声もあり、対して芸能レポーターの須藤甚一郎(ワイドショーとかで芸能人追っかけてる奴ね)氏は絶対にあげるべきだと主張、両者を中心に論争は国民的広がりを見せ始め…」

…てねえよ!おい!!
さすが東スポ。笑わせてくれるよなぁ。
もう爆笑問題のつまんねえチビとおんなじようなツッコミするしかねえもんな。
だいたいデーブ・スペクターは国民じゃねえだろ。
それともあれかな、
「デーブ・スペクター日本人説」ってほんとだったのかな。
もし死ぬまでだましおおせて、
んで死後、実は日本人でした、なんて判ったらそれこそ国民栄誉賞モンだろ。

閑話休題。

でもね、こんなの前々からある話だと思うんだ。
美空ひばりはあげた(よなあ?たしか)、
石原裕次郎にはあげなかったとかさ。
なんでもっと頻繁に、
気軽に(というのも変だが)あげよう!と思わないのかね。
そんなもったいつけるような賞かよなあ。
ひばりにやったんなら裕次郎にやったっていいじゃん。
高橋にあげるんなら田村亮子にあげたっていいじゃん。
金メダルの奴全員にあげる必要性はないと思うけどな。
だってただメダル取った位じゃ感動しねえもん。
マスコミは直前まで日本の獲れるメダルは何枚だ!とかって
勝手な予想記事とか夢のないこと好き放題書いておきながら、
メダル獲ると掌返して「感動秘話」とか仕立て上げて来て、
強引に祭り上げた英雄を感動で飾り立てようとする。
それがむかついてしょうがねえ…てのは前回書いたとおりなんだけど、
やはりさ、同じ金メダルに価値的な差があるとは思わないが、
どれくらい「話題」になれたかがここでは大きなポイントだと思わねえか?
だって競技の成績自体については、
同じ「世界一」として、同等に「金メダル」という表彰を受けたわけでしょう。
国民栄誉賞は「どれくらいすごいことをしたか」ではなくて
「どれくらいすごいことをしてみんなを喜ばせたか」にあると思うのね。
柔道とか水泳とかってさ、なんか前にも獲った奴いるし、
前々からいつか獲るだろ、こいつは大丈夫だろ、
と思われてた奴が獲っても話題度・感動度は高くないじゃん。
いや、そいつの功績そのものを問うているわけじゃないのよ。
あくまで、エンタテインメント的要素だけを見た場合にね。

そこをいくとさ、やっぱし高橋の女子陸上界初ってのはすげえんだよ。
しかもあいつ、笑ってゴールしやがった。
インタビューで感動話・苦労話を臆面もなくぶちまけるかと思ったら
「2時間楽しく走れました」だろ。
すげえって。言えねえよそんなこと普通。
やられたと思ったね。あいつにはやるべきだ。
対して田村亮子、こいつはもう何年も挑戦して、
でも果たせなくて…っていうドラマ性が効いたね。
俺にはウケないけど。でも賞選ぶの俺じゃないし。
小さい頃から媒体に露出し続けて、
容姿を大幅に無視して強引にアニメのキャラとカブらされて、
ダウンタウンにもネタにされて、
それなりに犠牲にしたものも多く、辛い思いもしたろうに、
自分の道で突き進んで成果を勝ち取った、
それはもう十分受賞に値すると思うよ。

だからどんどんあげちゃえばいいんだ。
せっかく「金メダル獲ったら」とか「~したら」なんていう
具体的な授賞基準がないんだから、
首相は「ああ、こいつにやったらきっと盛り上がるな」って思う奴がいれば、
どんどんやればいいんだよ。
「国民栄誉賞」なんだから、いくらやっても問題ねえだろ。
むしろ「栄誉ある国民」が多い国なんてカッコいいじゃねえか。
特に庶民に近い位置から、
「笑い」という方法で社会に希望や活力を与えたという分野では
もっと評価されていい人がいっぱい埋まってると思うぞ。
かといって叶姉妹レベルにまで下げてしまうのは問題だと思うけどな(笑)。
…「かのうしまい」、やっぱり「化膿姉妹」って変換されるなあ。言い得て妙だが。

そうそう、ついこないだ、
また新たに日本人でノーベル賞(化学賞)もらった人いるじゃん。
彼にはどうなんだろうね。
ノーベル賞といえば、
「非核三原則」なんてもっともらしいスローガン考えただけで平和賞貰っちゃった、
佐藤栄作なんてインチキくさいオヤジがいたけどな。
首相が国民栄誉賞貰うのって変だよなあ。
森!あいつにはやってもいいんじゃねえか?
歴代の首相であんなに笑かしてくれた奴は皆無だろ!
「神の国」発言に始まって、
「IT革命」平気で「イットかくめい」って読むわ、
偉そうに「IT革命には力を入れて取り組み…」とか演説したあとに、
女子高生に「携帯とPHSどう違うんだ?」ってもんのすごい質問するわ、
とどめが世界のガキ大将クリントンにむかって
「HOW ARE YOU?」と間違えて「WHO ARE YOU?」だろ(注:実話だ)。
核ミサイル何万発も持ってる国の、世界最強の、
おそらく世界一有名な首脳に向かって、
よりによって「あんただれ?」だぜ。ふつう言えねえよ…。
そうだ、やろう!森首相に国民栄誉賞を!初の「お笑い」ジャンルで!
政治家としては切腹モンの人材だけどな。

ふう、すげえオチだな。