いい迷惑

いま、最も迷惑しているのは、善良なイスラム教徒の人々だろうなあ。

「イスラム国」が自称に過ぎず、
実態はイスラム世界でも白眼視される単なるテロ組織、
犯罪者集団だということを、
果たしてどれほどの一般人がきちんと認識しているだろうか。
他ならぬ拉致された当事者の母親（血縁はあっても関係性は微妙だが）ですら、
混同している有様だからなあ…。
「イスラム」を十把一絡げに野蛮な連中だと思い込んでいる手合いも多そうだ。

連中の勝手な自称をそのまま受けて「イスラム国」って報道するの、やめない？
ちゃんと「自称」を冠するか、「テロ組織ISIL」とするか。
じゃなきゃ、多数の敬虔なイスラム教徒が気の毒だよ。
SMAPのメンバーが逮捕されたときの呼称とか、
オレオレ詐欺とか、合法ドラッグとか、
そういうどーでもいいのにはやたら神経質なくせに、ねえ。

「自己責任」と言えばいいと思ってるだろ

「自己責任」。
そうやって突き放せば、何も考えなくてイイし、
言ってる側は気持ちがいいし、便利な言葉だよね。

でもその一言で思考停止しちゃってたら、
原発のそばに住んでることも、火山に登ったことも、
崖崩れの起きる危険がある地域に家を建てたことも、
台風の毎年来る地域に住んでることも、
生活習慣病にかかったことも、
ブラック企業に入って過労死したことも、
経営危機でリストラ対象にされたことも、
落ちるような飛行機に乗ったことも、
全部自己責任と言うことになってしまうのでは。

色々言う人がいますが、
「人命は何よりも尊い」
「個人の勝手な行動に税金を使って…」
「自己責任だ」
「政府は予見できなかったのか」
「安倍が悪い」
…ほぼ、反射的にものを言ってる人ばかり。

国家が一個人のために身代金を払うかどうか、
こんなややこしい問題を簡単に切って捨てられるワンフレーズにのっかって、
「わかりやすい誰か」のせいにして感情的に喚くなんて、
本当にこの国は80年くらい前に戻ってしまっちゃったんでしょうか。

年初の風景

何てことない、庭。
どこにでもあるようで、世界にひとつしかない庭。
見物になるようなものは特に、ない。
格段手入れが行き届いているわけでも、ない。

でも、亡き祖父が愛した庭。
かつては僕や弟妹が、従兄弟たちが、
もっと遡れば母や叔母たちまでもが、走り回った庭。
いまは２歳半の甥が駆け回っている庭。

僕の人生の、憩いと睦みの象徴。
母なる庭は40回を数えようかという春夏秋冬の思い出の舞台でもある。
海のように懐の広い祖父母と。
いつでも明るくにぎやかで仲の良さすぎる一族と。

いつもこの庭を見ると、帰ってきたなあとホッとした。
いつもこの庭を見ながら、日常に戻る前の別れを惜しんだ。
心ばかりの拙い弔辞で、祖父を送ったのもこの庭だった。
祖父のあと、庭の手入れを受け継いだ叔父さえもいまは亡く。

今年は穏やかな年明けに、写真にも写らないほどのささやかな、
花びらのような小雪が舞い散った。
祖母が毎日眺め、そして案じるこの庭は僕らが守らなければならぬ聖域。
気がつけば僕までもが不惑。
静かに時を積み重ねた、重み、じわり。