Rebirth掲示板にも書いたとおり、昨日引っこ抜いた。
生まれて28年間歯医者に行ったことがなかったと言うだけあって、
俺の口の中というのはイラクもびっくりの無法地帯だ。
あちこちでムシバラスがテロを巻き起こしていたのだ。
勇気を振り絞って歯医者に向かったのは5月のことだ。
それ以来、片道1時間半の道のりを越え、
毎週のように通っているのだが一向に終わらない。
決して歯医者の腕前に問題があるわけではない。むしろ名医と言っていい。
悪いのは俺のお口だ。
このかわいらしいサクランボのようなくちびるから紡ぎ出される悪口雑言といったら……違う!
あちらを直せば今度はこちら、おまけにアゴも悪いし、
歯を詰めたら詰めたで親知らずとぶつかって…と、
まさにお口スパイラルなのだ。
まさか年を越そうとは思ってもみなかった。
しかし抜歯というのは大変な作業だなと思った。
1時間もアゴを開けっ放しだった俺もきつかったが、
他人の口の中にペンチを突っ込んで引っこ抜くなんて、
しかもなぜだか痛くないなんて、
ビビリ6段・痛がり100段の俺には到底想像し得ない神のみわざだ。
経験者は知っていると思うが、口の中は血だらけなのである。
ごりごりという音だけが響くのだ。
だのに笑顔でいられるのである。
来季のタイガースの開幕オーダーなどに思いをはせていられるのである。
歯医者の歯を削る音やらを苦手としている人もいるが、
俺は視覚的な要因には大変抵抗力が無く、
ホラー映画なども敬遠しているくらいである反面、
聴覚的にはまったくもってへっちゃらさんなのである。
その日も、引っこ抜いた歯をわざわざ貰って、
ふんふんと観察してあれこれと歯医者を質問攻めにした挙げ句、
上機嫌で家路についたのだ。
しかし、帰りの電車で麻酔が切れ、徐々に痛み始めた。
脈動に合わせてだくん、だくん、と痛むのが解る。
早いトコ帰って薬を飲まねば!
しかし何度も言うが内実至って小心な俺は、
食後の薬だと言われたら、
何が何でも何かを食べてからでないと気が済まないのだ。
俺ほど医者の指示をカンペキに守ろうとする患者もおるまい。
プロの言うことには素人には及びも付かない、
確かな経験に裏付けられた深い含蓄があるのである。
音楽業界の場合は自称プロのカンチガイさんが多いので気をつけねばならないが、
医学においてはまず間違いはない。
それにしたって、痛い。痛むというより疼く。
あんまり痛いので気を紛らわすべく本を読み始めた。
常に平行して3-4冊程度の本を読んでいるのだが、
最近は面白い本が集中して発見され、今7冊を同時に読んでいる。
少しでも時間があれば読書に遣いたい。
今回取り出したのは宇宙の本だ。
最新の宇宙論では俺が幼い頃に学研まんがで学んだものよりも、
はるかに不可思議でロマンチックな姿が描き出されるのだ。
ブラックホール、ビッグバン、タイムマシン、相対性理論。
もうキーワードを聴いてるだけで脳がよだれを垂らすのが解る。
夢中になって読んでいると、電車は池袋に滑り込んだ。
扉が開くと帰宅ラッシュの群れが一気に乗り込んできた。
いつもは車の移動がほとんどなのだが、
最近、歯医者に限っては渋滞して遅れるので電車を使うのだ。
久しく遠ざかっていた感覚。
人の津波が一斉に押し寄せると、引く間もなく扉は閉ざされ、
瞬く間に電車は奴隷船となった。
毎日わざわざスーツを着てこれに長時間揺られていながら、
国にも会社にも一向に暴動を起こさない人々の気持ちが、
俺には本当に理解できない。
俺はとってもちっちゃな人間なのだ。
人間ちっちゃいコンテストアジア選手権を開催したならば、
俺は江戸川区代表くらいにはなれるんじゃないかと思う。
でも下にはしたがいるからなあ。
優勝するのも結構大変だよ。
韓国・北朝鮮・中国には強敵がごろごろいそうだ。
閑話休題。
とにかく俺は続きが読みたかった。
それまで俺は扉の両脇にあるスイートゾーン(俺命名)にて、
座席側に背を向けて立っていたのだが、
それだと他人に本が当たるのでくるっと反転して、
座席の上の空間に本が出っ張るようにして再び読み始めた。
これなら誰にも迷惑はかからない。
しかし。
「おいお~い、兄ちゃん、今はやめようよ~。窮屈だよ~。」
俺のことか?どういうことだ。
俺は今まったく誰にも負担をかけていないはずだ。
意味がわからんので、これは他人に向けられたものであると解釈し、無視。
すると、
「聞こえてないの~?あんただよあんた。やめようよそれ~。」
でっかい声でこれ見よがしに、イチャモンつけるのは、
いかにも意地悪そうな感じの初老の男性だ。
だっさい帽子の下に光る濁った両目は俺を捉えているようだ。
いつもなら俺は無視するところだ。
しかし、この日の俺は口の中が痛くて機嫌が悪かった。
キレて見せるのは簡単だ。
しかしそれでは昨今の脳みそツルツルちゃんの若者たちと同じ。
俺の美学に合わない。
直ちに俺の頭の中で緊急裁判が始まり、
この無礼者には説教刑が下されることになった。
「俺のことか?」
「そうだよ!」
「そうだよじゃねえよ、偽善者。お前いま、イイ気分なんだろ。何かこうさ、『若い奴を恐れずに俺は言ってやった!』みたいな、そんな気になってんだろ。そんな自己満足のためにな、人を不愉快にさせていいのか?うん?みろこの車内の険悪な雰囲気。みんなおまえのプロデュースだ。」
「違うぞ、兄ちゃんがな…」
「だいたい初対面の人間つかまえて兄ちゃん呼ばわりするような無礼な人間がな、年取ってるっていうただそれだけを根拠に若い奴見下してモノ言うなよ。」
「…!あんただって言葉遣い悪いじゃないか!」
「お前がな、きちんと礼儀を守って話しかけたんなら、俺も同じように答えたよ。お前がそもそも無礼なんだから、俺がお前に礼を尽くす必要なんかないだろ。」
「年上に向かってなんだその態度は」
「だからお前こそ俺に向かってなんだその態度」
「話にならん」
「元々お前のイチャモンからだろ。無茶なインネンふっかけといて、話もクソもあるか」
「インネンじゃない」
「俺はな、ちゃんと考えてな、本の位置が邪魔にならないようによけたんだ。今、俺がこの本をしまったからって車内のスペースに余裕が生まれるのか?俺のこのちっちゃな文庫本が、しかも誰もいないところ向いてるのに、誰かに窮屈な思いさせてるってのか?窮屈なのは俺のせいじゃねえよ、状況よく見て物言え!アホ!」
「アホとは何だ」
「アホはアホだ。アホ!アホが伝染るからそれ以上話しかけるな、散れ!」
・・・以上。
非常にすっきりした…のはいいが、字に起こすと俺もちっちゃいな~(笑)。
生まれて28年間歯医者に行ったことがなかったと言うだけあって、
俺の口の中というのはイラクもびっくりの無法地帯だ。
あちこちでムシバラスがテロを巻き起こしていたのだ。
勇気を振り絞って歯医者に向かったのは5月のことだ。
それ以来、片道1時間半の道のりを越え、
毎週のように通っているのだが一向に終わらない。
決して歯医者の腕前に問題があるわけではない。むしろ名医と言っていい。
悪いのは俺のお口だ。
このかわいらしいサクランボのようなくちびるから紡ぎ出される悪口雑言といったら……違う!
あちらを直せば今度はこちら、おまけにアゴも悪いし、
歯を詰めたら詰めたで親知らずとぶつかって…と、
まさにお口スパイラルなのだ。
まさか年を越そうとは思ってもみなかった。
しかし抜歯というのは大変な作業だなと思った。
1時間もアゴを開けっ放しだった俺もきつかったが、
他人の口の中にペンチを突っ込んで引っこ抜くなんて、
しかもなぜだか痛くないなんて、
ビビリ6段・痛がり100段の俺には到底想像し得ない神のみわざだ。
経験者は知っていると思うが、口の中は血だらけなのである。
ごりごりという音だけが響くのだ。
だのに笑顔でいられるのである。
来季のタイガースの開幕オーダーなどに思いをはせていられるのである。
歯医者の歯を削る音やらを苦手としている人もいるが、
俺は視覚的な要因には大変抵抗力が無く、
ホラー映画なども敬遠しているくらいである反面、
聴覚的にはまったくもってへっちゃらさんなのである。
その日も、引っこ抜いた歯をわざわざ貰って、
ふんふんと観察してあれこれと歯医者を質問攻めにした挙げ句、
上機嫌で家路についたのだ。
しかし、帰りの電車で麻酔が切れ、徐々に痛み始めた。
脈動に合わせてだくん、だくん、と痛むのが解る。
早いトコ帰って薬を飲まねば!
しかし何度も言うが内実至って小心な俺は、
食後の薬だと言われたら、
何が何でも何かを食べてからでないと気が済まないのだ。
俺ほど医者の指示をカンペキに守ろうとする患者もおるまい。
プロの言うことには素人には及びも付かない、
確かな経験に裏付けられた深い含蓄があるのである。
音楽業界の場合は自称プロのカンチガイさんが多いので気をつけねばならないが、
医学においてはまず間違いはない。
それにしたって、痛い。痛むというより疼く。
あんまり痛いので気を紛らわすべく本を読み始めた。
常に平行して3-4冊程度の本を読んでいるのだが、
最近は面白い本が集中して発見され、今7冊を同時に読んでいる。
少しでも時間があれば読書に遣いたい。
今回取り出したのは宇宙の本だ。
最新の宇宙論では俺が幼い頃に学研まんがで学んだものよりも、
はるかに不可思議でロマンチックな姿が描き出されるのだ。
ブラックホール、ビッグバン、タイムマシン、相対性理論。
もうキーワードを聴いてるだけで脳がよだれを垂らすのが解る。
夢中になって読んでいると、電車は池袋に滑り込んだ。
扉が開くと帰宅ラッシュの群れが一気に乗り込んできた。
いつもは車の移動がほとんどなのだが、
最近、歯医者に限っては渋滞して遅れるので電車を使うのだ。
久しく遠ざかっていた感覚。
人の津波が一斉に押し寄せると、引く間もなく扉は閉ざされ、
瞬く間に電車は奴隷船となった。
毎日わざわざスーツを着てこれに長時間揺られていながら、
国にも会社にも一向に暴動を起こさない人々の気持ちが、
俺には本当に理解できない。
俺はとってもちっちゃな人間なのだ。
人間ちっちゃいコンテストアジア選手権を開催したならば、
俺は江戸川区代表くらいにはなれるんじゃないかと思う。
でも下にはしたがいるからなあ。
優勝するのも結構大変だよ。
韓国・北朝鮮・中国には強敵がごろごろいそうだ。
閑話休題。
とにかく俺は続きが読みたかった。
それまで俺は扉の両脇にあるスイートゾーン(俺命名)にて、
座席側に背を向けて立っていたのだが、
それだと他人に本が当たるのでくるっと反転して、
座席の上の空間に本が出っ張るようにして再び読み始めた。
これなら誰にも迷惑はかからない。
しかし。
「おいお~い、兄ちゃん、今はやめようよ~。窮屈だよ~。」
俺のことか?どういうことだ。
俺は今まったく誰にも負担をかけていないはずだ。
意味がわからんので、これは他人に向けられたものであると解釈し、無視。
すると、
「聞こえてないの~?あんただよあんた。やめようよそれ~。」
でっかい声でこれ見よがしに、イチャモンつけるのは、
いかにも意地悪そうな感じの初老の男性だ。
だっさい帽子の下に光る濁った両目は俺を捉えているようだ。
いつもなら俺は無視するところだ。
しかし、この日の俺は口の中が痛くて機嫌が悪かった。
キレて見せるのは簡単だ。
しかしそれでは昨今の脳みそツルツルちゃんの若者たちと同じ。
俺の美学に合わない。
直ちに俺の頭の中で緊急裁判が始まり、
この無礼者には説教刑が下されることになった。
「俺のことか?」
「そうだよ!」
「そうだよじゃねえよ、偽善者。お前いま、イイ気分なんだろ。何かこうさ、『若い奴を恐れずに俺は言ってやった!』みたいな、そんな気になってんだろ。そんな自己満足のためにな、人を不愉快にさせていいのか?うん?みろこの車内の険悪な雰囲気。みんなおまえのプロデュースだ。」
「違うぞ、兄ちゃんがな…」
「だいたい初対面の人間つかまえて兄ちゃん呼ばわりするような無礼な人間がな、年取ってるっていうただそれだけを根拠に若い奴見下してモノ言うなよ。」
「…!あんただって言葉遣い悪いじゃないか!」
「お前がな、きちんと礼儀を守って話しかけたんなら、俺も同じように答えたよ。お前がそもそも無礼なんだから、俺がお前に礼を尽くす必要なんかないだろ。」
「年上に向かってなんだその態度は」
「だからお前こそ俺に向かってなんだその態度」
「話にならん」
「元々お前のイチャモンからだろ。無茶なインネンふっかけといて、話もクソもあるか」
「インネンじゃない」
「俺はな、ちゃんと考えてな、本の位置が邪魔にならないようによけたんだ。今、俺がこの本をしまったからって車内のスペースに余裕が生まれるのか?俺のこのちっちゃな文庫本が、しかも誰もいないところ向いてるのに、誰かに窮屈な思いさせてるってのか?窮屈なのは俺のせいじゃねえよ、状況よく見て物言え!アホ!」
「アホとは何だ」
「アホはアホだ。アホ!アホが伝染るからそれ以上話しかけるな、散れ!」
・・・以上。
非常にすっきりした…のはいいが、字に起こすと俺もちっちゃいな~(笑)。