我がバンドメンバーのバイト先として、
MCで何度も取り上げられ、
ファンの間では有名なファミリーマート某店。
僕はそこに勤め始めてもうまもなく6年になろうとしている。
6年だ。これは長い。
それだけ長い間勤めているとだんだん責任も重くなり、
発注やシフト決定どころか、新人の面接なんてことまでやるようになる。
いや、普通はバイトなんかがやる仕事じゃないと思うけどね。
オーナー店長がもう一つオープンさせた飲食店にかかりきりだから仕方ないのだ。
発注、売り場展開、商品管理、清掃、スタッフ指導。
仕事は実に多岐にわたる。
その中で今、僕が一番嫌いなのはレジである。
レジ業務が苦手だと言うんじゃないぞ。むしろ得意だ。
まずウチの店で最速なのは間違いないし、誤差も常時ゼロだ。
苦手なんじゃなくて「キライ」なのだ。
それはつまり理不尽で尊大で非常識で下品でわがままなおバカさんたちが、
大切な「お客様」に紛れこんでやって来る、
それに対峙せねばならないのがたまらなくイヤなんである。
コンビニという場所は欲望を満たすための場所だ。
誰もが欲望を前面に押し出してやってくる。
もちろんコンビニのスタッフに礼儀なんて尽くす必要もない。
レストラン同様、ただの召使いぐらいにしか思ってないんである。
いきおい、その人となり、醜い部分が丸出しになっているのだ。
だからもうレジに立っている間中、あまりの理不尽さにイライラする。
こちらは「客」だ、とふんぞり返っている間、
人間はおおよそアタマを使っていない。
書かれていることも読まないし、釣り銭の計算もしない。
442円の買い物に510円出してきて、
戸惑う僕に舌打ちをしてみせる貴兄は、
一体僕に何を望んでいるのだ。
袋に入れても入れなくても、箸を付けても付けなくても、
レシート渡しても渡さなくても、
一様に文句を言う人がいるんである。
レジ会計と言うより、きっと「接客」に潜む理不尽さがダメなんだな。
まあ、とはいえレジは貴重な人間観察の場でもある。
とにかく色んな人間が来る。
滅多に来ないが可愛い子も来る。
もちろんめちゃくちゃ丁寧に接客する。
ペットボトルにストローだってお付けしちゃう。
ああ、ストローになりたい。
こういう美人専用の店舗にすればいいのにと、心から思う。
別に何をどうするわけでもない、
ナンパしたりとかそういう目的があるわけでもない。
ただ心穏やかに、バイトがしたいだけなんだ。
しかし、心の静寂を打ち破り、変なのは来る。
今日、ものすごいのが来た。
色は浅黒く、寡黙、全体的に挙動不審。
即刻、命名。「モアイくん」と呼ぼう。
奴は野菜ジュースをもってレジに現れた。
別段それは悪いことではない、むしろ野菜は体にいい。
価格は84円だ。小銭を出そうともたついている。
まあ、今は客も少ないし、特にやるべき仕事もない、待ってたっていい。
いちまい、にまい……その時だ。
小銭に紛れて突如、財布からカウンターに一本の毛が放たれた。
この縮れ具合、長さ、間違いない。疑いようもない。
…明らかなる「いんもう」だ!
動揺を隠せない僕。
だって陰毛に貨幣価値があるなんて聞いたコトないぞ。
いや、そーじゃなくって。
財布になんで陰毛が?
なんでそんなもん入ってんだ???
おずおずと硬貨だけに触れて会計をすまそうとすると、おもむろにモアイくんは呟いた。
「……あっ……。」
なんと、陰毛の存在に気づいたモアイくんは、
あろうことかその毛をつまんで財布に戻したのだ!!!!
絶句した。
何も言えなくて夏。
そして彼は何事もなかったのごとく店を出て行ったのである。
ひょっとしたら陰毛じゃないかもしれないし。
何かのお守りかもしれないし。
ただ失礼だと思って取り除いただけかもしれないし。
毛型の携帯電話かもしれないし。
何かの組織の会員証かもしれないし。
あれこれと想像を巡らせるのは簡単だ。
しかしどれも無理がある。大喜利やってんじゃないんだから。
つくづく、世の中には色んな人間がいるものである。
MCで何度も取り上げられ、
ファンの間では有名なファミリーマート某店。
僕はそこに勤め始めてもうまもなく6年になろうとしている。
6年だ。これは長い。
それだけ長い間勤めているとだんだん責任も重くなり、
発注やシフト決定どころか、新人の面接なんてことまでやるようになる。
いや、普通はバイトなんかがやる仕事じゃないと思うけどね。
オーナー店長がもう一つオープンさせた飲食店にかかりきりだから仕方ないのだ。
発注、売り場展開、商品管理、清掃、スタッフ指導。
仕事は実に多岐にわたる。
その中で今、僕が一番嫌いなのはレジである。
レジ業務が苦手だと言うんじゃないぞ。むしろ得意だ。
まずウチの店で最速なのは間違いないし、誤差も常時ゼロだ。
苦手なんじゃなくて「キライ」なのだ。
それはつまり理不尽で尊大で非常識で下品でわがままなおバカさんたちが、
大切な「お客様」に紛れこんでやって来る、
それに対峙せねばならないのがたまらなくイヤなんである。
コンビニという場所は欲望を満たすための場所だ。
誰もが欲望を前面に押し出してやってくる。
もちろんコンビニのスタッフに礼儀なんて尽くす必要もない。
レストラン同様、ただの召使いぐらいにしか思ってないんである。
いきおい、その人となり、醜い部分が丸出しになっているのだ。
だからもうレジに立っている間中、あまりの理不尽さにイライラする。
こちらは「客」だ、とふんぞり返っている間、
人間はおおよそアタマを使っていない。
書かれていることも読まないし、釣り銭の計算もしない。
442円の買い物に510円出してきて、
戸惑う僕に舌打ちをしてみせる貴兄は、
一体僕に何を望んでいるのだ。
袋に入れても入れなくても、箸を付けても付けなくても、
レシート渡しても渡さなくても、
一様に文句を言う人がいるんである。
レジ会計と言うより、きっと「接客」に潜む理不尽さがダメなんだな。
まあ、とはいえレジは貴重な人間観察の場でもある。
とにかく色んな人間が来る。
滅多に来ないが可愛い子も来る。
もちろんめちゃくちゃ丁寧に接客する。
ペットボトルにストローだってお付けしちゃう。
ああ、ストローになりたい。
こういう美人専用の店舗にすればいいのにと、心から思う。
別に何をどうするわけでもない、
ナンパしたりとかそういう目的があるわけでもない。
ただ心穏やかに、バイトがしたいだけなんだ。
しかし、心の静寂を打ち破り、変なのは来る。
今日、ものすごいのが来た。
色は浅黒く、寡黙、全体的に挙動不審。
即刻、命名。「モアイくん」と呼ぼう。
奴は野菜ジュースをもってレジに現れた。
別段それは悪いことではない、むしろ野菜は体にいい。
価格は84円だ。小銭を出そうともたついている。
まあ、今は客も少ないし、特にやるべき仕事もない、待ってたっていい。
いちまい、にまい……その時だ。
小銭に紛れて突如、財布からカウンターに一本の毛が放たれた。
この縮れ具合、長さ、間違いない。疑いようもない。
…明らかなる「いんもう」だ!
動揺を隠せない僕。
だって陰毛に貨幣価値があるなんて聞いたコトないぞ。
いや、そーじゃなくって。
財布になんで陰毛が?
なんでそんなもん入ってんだ???
おずおずと硬貨だけに触れて会計をすまそうとすると、おもむろにモアイくんは呟いた。
「……あっ……。」
なんと、陰毛の存在に気づいたモアイくんは、
あろうことかその毛をつまんで財布に戻したのだ!!!!
絶句した。
何も言えなくて夏。
そして彼は何事もなかったのごとく店を出て行ったのである。
ひょっとしたら陰毛じゃないかもしれないし。
何かのお守りかもしれないし。
ただ失礼だと思って取り除いただけかもしれないし。
毛型の携帯電話かもしれないし。
何かの組織の会員証かもしれないし。
あれこれと想像を巡らせるのは簡単だ。
しかしどれも無理がある。大喜利やってんじゃないんだから。
つくづく、世の中には色んな人間がいるものである。