<2937> 余聞、余話 「 暖 冬 」
自然への直感に生き直観の鋭さをもてありける野生
日本列島は今一番寒い時期であるが、今冬は暖冬傾向が著しく、このところ暖かい日が続き、各地でこの影響による異変が起きている。雪が極端に少なく、降雪が頼みのスキー場は軒並み営業に支障を来たし、困っている。また、ダイコンやハクサイなどの冬野菜の育ちが早く、生産者には過剰生産を余儀なくされ、中には廃棄処分をしなければならない状況に陥っているところもあるという。消費者にはありがたいような状況であるが、ホウレンソウのような葉物野菜も軒並み育ちが早く、生産の予定が早まることから春以降、品薄になる可能性があるという。
この暖冬は今後も続き、このまま春を迎えることになるのだろうか。続くと見られる兆候が冬鳥のカモに感じられるのであるが、果たしてどうなるか。この間、雨上がりの水上池(奈良市佐紀町)に出かけてカモの様子に異変を感じるところがあった。百羽を越すカモの半数以上はマガモと思われるが、まだ一月なのに、普段と様子が異なり、動きが活発で、何組もの群れが池の上空を上下しながら何回も旋回して飛ぶのが見られた。このカモが群れて飛ぶ情景は、カモが渡りの準備に取りかかっていることを示すものではないか。
カモたちには、一気に渡って帰るのではなく、途中に立ち寄るのであろうが、この暖冬はカモをその気にさせていると見て取れるところがある。水上池は長い堤に仕切られた南北二つの池からなり、カモたちは普段北側の池にも南側の池にも散在している。ところが、飛翔の後は、南側の池に集結し、北側の池には姿が見えなくなった。これは何を意味するのか。とにかく、そのカモたちの動向を見ていると、渡りの前触れのように思えるのである。
渡りの準備かどうかは今少し様子を見る必要があるが、このにぎわしいカモたちの飛翔行動は北へ帰る準備とみていいのではないか。自然に対する直感をもって生きている野生のカモたちを思うに、このカモへの見方は当を得ているように思える。とするならば、暖冬は以後も続き、そのまま春を迎えるということになる。 写真は池の上空を旋回しながら飛ぶカモの群(左)と仲良く飛ぶマガモ(右)。