大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年01月13日 | 植物

<2925>  大和の花 (979) ヤマトミクリ (大和実栗)                             ミクリ科 ミクリ属

                

 池沼や溝などの浅い水中に生える常緑多年草で、地下茎を伸ばして群生し、高さが50センチから1メートルほどになる。葉は幅が8ミリから15ミリの線形で、裏側に稜があり、断面はほぼ3稜形になる。また、葉は海面質で軟らかい。

 雌雄同株で、花期は5月から7月ごろ。根元より15センチから25センチほどの花序を出し、分枝することなく直立し、上部に雄性、下部に雌性の頭花をつける。頭花は腋生であるが、雌性の頭花の反対側に大きな苞葉があるように見えるのは頭花の柄が主軸に合着するためという。実は中央部が凹む紡錘形で、球状に集まり集合果となる。この集合果がクリの毬に似て、大和地方に多いことからこの名がつけられたという。

 本州、四国、九州に分布し、国外では中国、台湾、インド、インドネシア、ミヤンマー、ニューギニアなどに見られ、大和(奈良県)でも見られるが、生育環境に適合する水湿地が少なくなり、自生地が限られるところからレッドリストに絶滅危惧種としてあげられ、全国的にも少なくなっているため、環境省でも準絶滅危惧としている。なお、仲間のミクリ(実栗)は花茎が分枝するので、枝を出さない本種との判別点になる。

 写真は群生するヤマトミクリ(左)、上部に雄花、下部に雌花の頭状花序をつけた花茎(中)、名のもとになった集合果のアップ(右)。いずれも大和郡山市の大和民俗公園での撮影。     寒中やポストはいつも同じ位置