大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年01月21日 | 植物

<2933>  大和の花 (985) サワフタギ (沢蓋木)                                ハイノキ科 ハイノキ属

                                       

 暖温帯のやや湿潤な林縁などに生えている落葉低木で、高さは2メートルから4メートルほどになり、よく枝を分ける。樹皮は灰褐色で、縦に細く裂ける。葉は長さが4センチから8センチの倒卵形または楕円形で、先は短く尖り、基部はくさび形。縁には鋭く細かい鋸歯が見られる。両面とも毛が生え、触れるとざらつく。ごく短い柄を有し、互生する。

 花期は5月から6月ごろで、側枝の先に円錐花序を出し、白い花を多数つける。花冠は直径7、8ミリで、5深裂する。雄しべは多数。葯は黄色。実は扁球形の核果で、秋になると藍色に熟す。北海道、本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国東北部に見られるという。西日本では類似種のタンナサワフタギ(耽羅沢蓋木)が多く、大和(奈良県)でもその傾向にあり、サワフタギの方は北部に片寄って分布している。

サワフタギ(沢蓋木)の名は、よく繁って沢を塞ぐように被うとめという。別名のニシキゴリ(錦織木)はこの木の灰汁を紫根染めの媒染材に用いたことによるという。材は薪炭、器具、細工物などに利用されて来た。 写真は花盛りのサワフタギと花のアップ(奈良市の春日山)。    日向ぼこ寡黙がゐるな雀にも

<2934>  大和の花 (986) タンナサワフタギ (耽羅沢蓋木)                   ハイノキ科 ハイノキ属

                   

 山地の疎林内や林縁に生える落葉低木または小高木で、高さは3メートルから5メートルほどになる。樹皮は灰白色で、薄く剥がれるものが多い。本年枝ははじめ毛があり、後に無毛。葉は長さが4センチから9センチの倒卵形で、先はやや尾状に尖り、基部はくさび形。縁には尖った鋸歯が見られ、裏面の脈上に白い毛が生える。葉は極めて短い柄を有し、互生する。

 花期は6月ごろで、側枝の先に円錐花序を出し、白い花を多数つける。花冠は直径6、7ミリで、5深裂し、雄しべは多数。核果の実は長さが6、7ミリの卵形で、秋に藍黒色に熟す。本州の関東地方以西、四国、九州に分布し、済州島にも見られるという。タンナサワフタギ(耽羅沢蓋木)のタンナ(耽羅)は済州島の古名で、済州島で見つかったことによる。シラツゲ(白黄楊)の別名がある。 写真は花どきのタンナサワフタギ(釈迦ヶ岳登山道と観音峰展望台付近)。  寒中に暖かいのは微妙なり

<2935>  大和の花 (987) クロミノニシキゴリ (黒実の錦織木)           ハイノキ科 ハイノキ属

                

 湿地や池の岸辺などに生える落葉低木または小高木で、よく分枝し、高さが2メートルから8メートルほどになる。樹皮は灰褐色で縦に裂ける。葉は長さが3センチから10センチの長楕円形で、先は短く尖り、基部はくさび形。縁には鈍鋸歯があるが、目立たず、短い柄を有して互生する。

 花期は5月から6月ごろで、新枝の先に円錐花序を出し、白い花を多数つける。花冠は直径8ミリほどで、5深裂し、平開する。雄しべは多数で、花糸が長く、葯は黄色を帯び、目立つ。核果の実は長さが6、7ミリの卵球形で、秋に黒く熟す。仲間のサワフタギやタンナサワフタギによく似るが、本種は花序の軸が無毛である点や葉の鋸歯が浅く、目立たない点が異なる。

 本州の東海地方から近畿地方の中央部にかけて分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では北部の一部に稀産し、奈良県のレッドデータブックには絶滅寸前種としてあげられている。写真は平成27年(2016年)、奈良市佐紀町の磐之媛命陵の外濠脇で撮影したものであるが、移植されたか、伐られたか、以後、その姿が見られなくなった。

   ニシキゴリ(錦織木)はサワフタギの別名で、灰汁を紫根染めの媒染剤に用いたことによるもので、実がサワフタギの藍色と異なり、黒いのでこの名がある。別名はシロサワフタギ(白沢蓋木)。 写真は花期の姿(左)、花序のアップ(中・花序軸が無毛)、花のアップ(右・長い雄しべが目につく)。   頻尿や妻の寝息の健やかな