大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年01月05日 | 植物

<2917>  大和の花 (972) イイギリ (飯桐)                                             イイギリ科 イイギリ属

           

 山地のやや湿り気のあるところやダム湖周辺などで見かける落葉高木で、高さは10メートルから15メートルほどになる。樹皮は灰白色で、褐色の皮目があり、平滑。枝が車軸状に広がり伸びるのでまるまった樹形になる。葉は長さが10センチから20センチの卵心形で先が鋭く尖り、縁には粗い鋸歯が見られる。表面は光沢があり、裏面は粉白色。葉と同程度の長い柄を有し、輪生状について互生する

 雌雄異株または同株で、花期は4月から5月ごろ。枝先に20センチから30センチの円錐花序を垂れ下げ、芳香のある花を多数つける。花は花弁がなく、萼片が5、6個。雌花より雄花が大きく、直径1.5センチほど。雄花の雄しべは多数。雌花には花柱が数個つく。花は全体的に黄緑色に見える。液果の実は直径1センチ弱の球形で、秋に赤く熟し、葉を落とした後も枝に残りよく目立つ。

 イイギリ(飯桐)の名は葉がキリの葉に似て大きく、この葉にご飯を包んだことによると言われる。ナンテンギリ(南天桐)の別名は赤い実をナンテン(南天)の実に見立てたことによる。イイギリは1属1種で、東アジアの特産とされ、本州、四国、九州、沖縄に分布し、朝鮮半島、中国、台湾に見られるという。大和(奈良県)では南部の紀伊山地に片寄る傾向にある。材は器具や下駄、薪炭に用いられる。

 写真はイイギリ。左から枝先の花序に咲く雄花、夏の若い実、葉を落とした木いっぱいに垂れ下がる赤い実、雪の降る中で彩りを増す円錐果序の赤い実。 凧糸の強さにありて凧揚がる