大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年01月16日 | 植物

<2928> 大和の花 (981) ナナカマド (七竈)                             バラ科 ナナカマド属

          

 山地の日当たりのよいところに自生する落湯高木で、高さは10メートルほどになる。若木の樹皮は淡褐色で、楕円形の皮目があり、成木では暗灰色になり、浅く裂ける。若い枝は紅紫色乃至は暗紫色で、光沢がある。葉は長さが10センチから20センチの奇数羽状複葉で、短い柄を有し、互生する。小葉は長さが3センチから9センチの長楕円形で、先が尖り、縁には鋸歯、あるいは重鋸歯が見られる。

 花期は5月から7月ごろで、枝先に複散房花序を出し、直径1センチ弱の小さな白い花を多数つける。花弁と萼片は5個で、花弁は円形に近く、上向きに平開する。雄しべは20個、雌しべの花柱は3、4個で、基部に軟毛が密生する。萼片はごく小さく、長さが1ミリ程度の三角形。ナシ状果の実は直径数ミリの球形で、秋に赤く熟し、頂部に萼片が残る。

 北海道、本州、四国、九州(屋久島まで)に分布し、南千島、サハリン、朝鮮半島など寒冷地に見られ、温暖地では標高の高い山岳に生える。大和(奈良県)では紀伊山地の標高1500メートル以上の高い山で自生のものによく出会う。花期より果期の方が印象的な木で、赤い実と紅葉が秋晴れの空に映えて、登山者の目を楽しませてくれるところがある。

 材は緻密で、堅く、器具、機械の用具、薪炭などにされ、樹皮は染料に用いられる。なお、ナナカマド(七竈)の名は、この木が燃え難く、7度かまどに入れても燃え残ることからつけられたという。 写真は左から花期のナナカマド、花序のアップ、秋空に映える赤い実、果序の赤い実と葉のアップ(花序と果序のアップは大台ヶ原山、ほかは大峰山脈の尾根上)。  枯原野戦後世代も老いに入る

<2929>  大和の花 (982) ウラジロノキ (裏白の木)                               バラ科 ナナカマド属

        

 低山から深山に生える落葉高木で、高さは10メートルから15メートルほどになる。樹皮は若木で紫褐色、成木で灰黒褐色になり、老木では鱗片状に剥がれる。若い枝は灰黒褐色であるが、はじめ白い毛が密生する。葉は単葉で、長さが6センチから13センチの広倒卵形で、先が急に尖り、縁には欠刻状の鋸歯が見られ、側脈がよく目立つ。裏面には白い軟毛が密生し、白く見えるので、この名がある。葉柄は1センチから2センチで、互生する。

 花期は5月から6月ごろで、短枝の先や葉腋から複散房状花序を出し、直径1.5センチ弱の白い花を多数つける。花弁は5個で、円形に近く、表面には軟毛が密生し、上を向いて平開する。花序や萼にも綿毛が密生する。実はナシ状果で、長さが1センチほどの楕円形になり、10月ごろ赤く熟す。

 本州、四国、九州に分布する日本の固有種で、学名はSorbus japonica。大和(奈良県)では全域的に見られ、珍しくないが、花のつく個体が少なく、「果実をつけた株に出会えるチャンスに乏しい」と言われる。別名はヤマナシ(山梨)、アワダンゴ(粟団子)。 写真はウラジロノキ。左から花期の枝木、花序のアップ、実のついた秋の枝木(実は逆光で黒く見える)、葉の裏面(曽爾村の俱留尊山ほか)。 くわぁくわぁくわぁ くわぁくわぁくわぁ 寒の朝