<123> ス イ セ ン
水仙の 簡明な花 香とともに
スイセンはヒガンバナ科スイセン属の球根(鱗茎)を有する地中海沿岸地方が原産の多年草で、 我が国には古い時代にやって来た中国からの渡来説や野生化した群落が関東以西の海岸地に見られることから、 暖流によって運ばれて来たという漂着説などがある。
花は花被片六個が基部で合着し、筒状になり、中に杯状の副花冠の見られるのが特徴で、 その簡明な花の美しさは定評があり、 学名のNarcissus(ナ―シサス) は水に映る自分の姿に恋する美少年ナルシスが その姿に触れようとして溺れ死んだ後、 このスイセンが 咲いたというギリシャ神話に因んでいることはよく知られるところである。
スイセンの名は漢名の水仙を音読みしたものと言われ、 母種のフサザキズイセンのほかラッパズイセンやキズイセンなどがあり、これらを総称してスイセンと呼ぶ。栽培も盛んに行われ、各地に見られる。
スイセンは十二月ごろから四月ごろにかけて花を咲かせるが、 我が国で野生化してよく知られるスイセンは冬に花をつけるフサザキズイセンのことで、ニホンスイセンとも呼ばれ、 花茎の先端部に数個の花をつけるのが特徴で、 芳香のあるのもよく知られるところである。
中国では瑞祥の花として尊ばれ、その品位は我が国でも認められ、 雪の降り積もる中で花を咲かせることから雪中花とも呼ばれ、 松・竹・梅とともに正月を飾るにふさわしい花としてその地位を認められ、今にある。 写真は花茎の先端に数個の花をつけたフサザキズイセンの ニホンスイセン。 白い花冠と黄色い副花冠が簡明な花である。室に活けた花からはよい香が漂って来る。