大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年01月09日 | 写詩・写歌・写俳

<129> 雪 山 寸 景
        新雪に 命の二の字 二の字かな
  この時期になると、ときおり雪山が見たくなって出かける。滅多に登らないが、ときに登ることもある。大和は山が多く、雪山にもこと欠かない。険しい高い山は装備も必要で、一人歩きは危険なので登ることはないが、 山道がしっかりしている一般者の多い山には登ることがある。 私には標高千五百メートルまでくらいだろうか。それ以上の雪山には自信がない。で、大峰山脈ならば大峯奥駈道の底部出合付近までというところで、 そこを目安にしているが、 登るのは雪解けが始まる春先で、 真冬に登ったことはない。
  写真は 奥宇陀の三峰山(みうねやま・一二三五メートル)の登山道での撮影であるが、 木々が生い茂る夏山とは一変して登山道も積雪によって 隠れてしまうので、 道は熟知しておく必要がある。それでも、 雪山の風景は格別で、 雪が深ければ深いほどその風景はよく、 新雪のあった翌日に登ったりすると、 写真のような動物の足跡などにも出会えて、雪山の実感を得ることが出来る。

                                                                     
  写真の二の字二の字の足跡はウサギの類か、 リスの類か、とにかく、雪山をねぐらにしている小動物のものに違いない。登山道を横切り寒林の 彼方に続いていた。 その足跡は慌てた様子もなく、騒いだ様子もなく、みごとな間隔の歩調であった。
  この足跡には 雪山の環境に順応して生きているものの命が感じられる。 私なども大きな足跡を つけながら登ったのであるが、息を弾ませ、騒がしく歩き、足跡も乱れていた。これを思うと、山の生きものたちの雪上の足跡には 何か芸術品にも似た趣のあるのがわかる。 これは自然の中で研ぎ澄まされた命によって生まれたものだからであろう。