<121> 初 日
初日の出 思ふに公平なる遍照
曇という天気予報だったが、午前六時に起きて確認したところ東の稜線に沿って雲の切れ間が見られたので予定していた斑鳩町の桜池の土手道に赴いた。カメラをスタンバイし、三十分ほど待ったところ、瞬時ではあったが、 初日が見られ、写真に撮ることも出来た。近辺の住人も姿を見せ、総勢十人ほどであった。
振り返って見ると、 みな初日に染められて立っていた。で、「遍照」という言葉がとっさに思われた。「遍照」とは遍く照らすという意。 まさに太陽光をいうにぴったりの言葉である。 これを借りたのが仏教の教えであり、ここに中心的仏である大日如来の存在がある。そして、大日如来はすべてを遍く照らし諭す宇宙普遍の存在として崇められている。
これを私たち照らされる側から思い巡らし主張したのが、レオナルド・ダ・ヴィンチであった。曰く、「太陽はけっしていかなる影をも見ない」(杉浦明平訳)と。 影とは太陽に統べられているすべてにもたらされる光によって成るもので、太陽からは決して見えないところのものであって、これこそ公平を物語るものと言えるところである。
初日は暫くして雲に隠れたが、初日を目的に集まった人たちはそれなりに満足して立ち去って行った。 写真は午前六時五十分前後から七時二十分までの間に撮影したもので、左から順に時を追って並べた。左端の写真中央付近の少し高い山は鳥見山(七三五メートル)。日の出は初瀬山(五四六メートル)と巻向山(五六七メートル)の間付近と思われる。