<151> 冬 花 火
込められし祈りにありて冬花火
若草山の今年の山焼きでは、東日本大震災と台風十二号の被災地に寄せ、その復興を願って例年より多い六百発の花火が打ち揚げられた。これについては二十八日に触れたが、その願いとしての冬花火を以前の花火も含め、ここに幾つかの写真をもって、振り返ってみたいと思う。打ち上げ花火については、中河与一の『天の夕顔』を思い出す。 この小説は打ち上げ花火に夕顔をイメージし、 その花火の夕顔を天に召された彼女が摘みとることを想像したプラトニックラブで、心の中の彼女との交信が美しく描かれている。
夕顔の花火は夏の夜であるけれども、 山焼きの冬花火にもこの美しい夕顔の花火を思い起こすことが出来る。私には、山焼きの打ち上げ花火も、夕顔の願いに等しく、東日本大震災と台風十二号の被災者への慰霊ということが思われる。