日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

母の味付け

2019年10月25日 | エッセイサロン
2019年10月25日 毎日新聞「はがき随筆」掲載


 父は長男、その弟妹は何人だったか、それが盆と正月には子連れで来る。その賄いで母は忙しい。賄いの一つに、1段30個で5段重ねの押しずしを作る。母が準備したネタを父はすし桶に重ねるだけ。客らは「兄さんのすしは日本一」と褒める。
 父が逝って私は結婚、母と同居した。「すし作りの支度は私一人でしたが、おいしいすしとは一言も言わなかった」。我が家の古い話の中で、母は笑いながら妻にこぼしたという。
 父は家長然とし、客に笑顔で「たくさん食べろ」と勧めていた。母の味付けを認めながら口にしなかったのは父らしい。
コメント (2)
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