麦わら帽子を冠った人が、屋敷と道路の境界に伸びた雑草を抜いている。「綺麗になります」と声を掛け通り過ぎようようとした。「今日はええ日和で温いので、日向ぼっこをしながら抜いとります」と言いながら立ち上がり、腰を伸ばし真っ青な空を見上げる。麦わら帽子ではっきりしないが私よりは年上のようだ。
「若い者は草抜きは私のすることと決めております」と話が続く。若い者が息子か娘かは分からないが、口調は嬉しそうで同居する家族との睦まじさと、任されている仕事の喜びが伝わる。生きていれば105歳になる母も元気な時はこんな姿で庭の草抜きをしていたことを思い出す。お陰で庭が草で見苦しくなることはなかった。
「雑草が茂って」という言葉に「植物にはみんな名前がついている」という答えがあったと何かで読んだ。雑草は「自然に生えるいろいろな草、農耕地で目的の栽培植物以外に生える草」と説明される。これは取り除くしかない。防除は手や機械、除草剤等などいろいろだが、最近はこれを処分する野焼きを問題にする人が増え、地域で混乱が生じているという。かっての田園地帯の宅地化が原因らしい。いい解決策を見出して欲しい。
話していたのはわずかな間だったが市議選最終日なので選挙カーが、草抜きに対してだろう「ご苦労さまです。よろしくお願いします」と何台か通り過ぎた。草抜きの人は笑顔で応え手を振って見送る。温もりのある人柄を感じる草抜きをする人だった。