何度目になるのか運転免許証の更新が済みほっとしている。記憶力も視力も下降していく中での更新手続きは時間も費用も、そして精神的負担も重かった。それは認知機能検査、通称痴呆検査には検査会場の緊張が何となくわかった。これを通過すると、高齢者講習の2ステップが済み「運転免許証更新連絡書」が公安委員から届く。ゴールドなので管轄の警察署で待つ間もなく交付された。これで80歳の峠を超えることができる。
だが安心はできない。75歳以上の免許保持者が信号無視、通行禁止違反、通行区分違反、交差点右左折方法違反、徐行場所違反、指定場所一時不停止、合図不履行、踏切不停止など10数項目の違反を犯すと、臨時の「認知機能検査及び高齢者講習」を受けることになる。検査の結果によってはさらにさらに講習等が必要になる。易々とハンドルは握れない。
更新手続きをしているとき高齢の夫婦が免許証返納手続きにみえた。「覚悟や意識はしていたが、生活への意欲減退が恐ろしい速さでやって来た」という返納した先輩の話を思い出しながら手続き中の夫婦を見ていた。「これで車に乗れなくなるの」、奥さんの実に寂しく力の抜けたようなささやきは聞こえたが、主人の返事は聞こえなかった。思いは同じだっただろう。
免許証を取得したのは50数年前、職場の同僚が「勤務は都合するから今のうちに車の免許を取れ」と勧めてくれた。3交替勤務なので、日勤を外し夕勤と夜勤に勤務替えしてもらえ、自動車学校の午前の部に入学した。こうした応援のおかげで一発合格し、迷惑を最短で終えほっとしたことを思い出す。その意味でもゴールド免許はこれからも守れるよう安全運転を心がける。