衣替えの初日、晴れてはいるが少し蒸し暑い一日だった。下校するどの児童も水筒を下げている。身体にはちょっと不釣り合いな大きな水筒は1年生。残りを立ち止まって飲んでいる男の子もいる。子どものころ水筒を学校へ持っていくのは遠足のときだった。アルミ製で今のコッペパンを二つ合わせたような形、小さな飲み口とフタは子どもには丁度良かったように思う。
放置された解体跡地、この季節は雑草が勢力を誇示する場所。手持ちの荷物を道端に置き子どもらが雑草の中に立っている。聞くと「トカケがおる」とはしゃいだ声で大きな石の陰を覗き込んでいる。ヘビほどではないのか恐れずに興味を示す姿を喜ぶ。昔は川や山道の石を積み重ねた石垣が多かった。その隙間を出は入りしているトカケを見かけたが、追っかけはしなかった。
そんな児童らが午後の傾きかけた日ざしが作る影のある道にさしかかると、それまでの群れが1列になって日陰を歩き始める。そんな行動が暑さを表す自然な動きなのだろうが、野性味のある遺伝子が生き続けているようで面白い。短い日陰を過ぎるとまた群がって帰り始める。
帰り道は「家に帰るみち」、帰れる家の暖かさをしっかり記憶し伝えてほしい。いつかこの子らも「一杯やるか」と帰り道を少し遠回りするようになるのだろう。それでも帰り道は決して忘れないでもらいたい。はしゃぎながらもランドセルに黄色のカバーの子らが前を行く。