車庫の屋根に積もった雪が解け始める。そこを滑り落ちていく速度は気怠るさそうなほどゆっくり、いや、名残を惜しんでそうしているのかもしれない。
しばらくして見上げたらモミジの葉が1枚、雪と一緒に滑っている。小学唱歌の「木の葉」を思い出した。
♪ 何処から来たのか 飛んで来た木の葉 くるくるまはつて 蜘蛛の巣にかかり
風に吹かれて ひらひらすれば 蜘蛛は虫かと 寄って来る
モミジは散ったものと思いこんでいたが、唱歌にあるように「何処からきたの」と問えるものなら問うてみたい。何処かに残っていた1枚のモミジが雪を運ぶ風にのって一緒に飛んできて、蜘蛛の巣ならぬ車庫の屋根にとどまった。
子どもの手のような赤色の1枚の葉、雪の白さとのコントラストは詩情豊かなら何か創れそうに見えるが、残念ながら適わない。ここで生涯を終えるモミジ、思わぬ秋の名残を見せてくれてありがとう。