日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

古時計の休眠

2013年10月23日 | 回想


 時計店に入ると正面奥に並んだ壁掛けのゼンマイ時計4個が休眠している。ショウウインドウに並ぶ時計は電気と電池で動作する時計ばかり。中には同じ時間を表示した電波時計がいくつも並ぶ。どんな思いで後輩たちの、時の刻みを見下ろしているのだろうか。

 大きな時計からコッチ、コッチとゆっくり左に右に揺れる金色の振子に合わせて時を刻む心地よい音が店の外まで聞こえていた。その時間をみて、少し早足になったりおしゃべりを続けたりしながら小学校へ通った。今では子どもたちも時計を持っており、時計屋の時計に頼ることはないだろう。

 子どものころ、我が家唯一の柱時計には、ゼンマイを巻く穴が時計の針を止めた左右にあった。左側の穴は右に、右側の穴は左に巻くことを祖父から習った。巻き終わったら、時計がまっすぐになっているか確かめることもそうだった。電池式掛け時計、体裁をかまわなければ斜めでも時を刻むそうだが、試したことはない。

 「時計はいらない、スマホがあるから」と何かの宣伝にあった。携帯やスマホに時刻を表示するのはやはり時計ではないのか、と思いながら、旧式の携帯を開いてみる。確かに時を教えてくれる。でもだ、腕時計を見るほうが簡単で早いのではなかろうか。

 「お待たせしました、電池交換終わりました」と言いながら女店主は作業台横の電波時計で時刻を合わせる。「いつもありがとうございます。800円です」その声に時計世相の思いから今に返る。前回、来店したときは動いていた掛け時計に「また」と言い残した。外は少し冷たいが静かな秋雨が降り続いている。
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