日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

ひとつの終わり

2012年02月24日 | 回想
           

普通に見れば古くなった団地の解体工事だが、そこは定年まで勤めた会社の社宅。会社は日本で最初の石油化学工業を起こした。その発祥の工場を作り、支え、進化発展させた社員が住んでいた岩国社宅。

建設は1958(昭和33)年から4年の間で鉄筋2階建と3階建の各6棟で計108戸。テニスコートや広場なども備わっていた。かっては希望しても入居待ちになる優良人気社宅。しかし、ピーク時には約2700人の社員が在籍した工場も、各種合理化・プラントや研究所の統廃合・合併などで、現在は1100人まで減り、岩国社宅利用者は30世帯まで減っていたという。

昨秋、社宅跡地2.2ヘクタールが隣接地で営業しているスーパーに売却され、複合型の大型店舗の建設が見込まれる、と地元紙で報道された。OBの間では惜しむ声が多かった。いつか解体の時が来るとは思っていたが、現実にそれを目にすると、寂しくやるせない思いになる。

私は地元出身なので社宅への入居経験はないが、この社宅住まいの上司の家で幾度か宴会を重ねた。仕事としてもこの団地にかかわったこともある。通勤途上の国道から朝夕眺めながらそばを通っていた。今は遮音幕などで外部からは見通せない。解体整地は4月半ばまで続くという。

石油化学発祥の地からひとつの足跡が消える。解体する重機の唸り音を聞きながら、工場操業50周年記念式典の厳粛さを思い起こした。社宅は消えても企業の永遠なことを平凡なひとりのOBとして祈っている。
コメント (4)
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