
一年中、老舗旅館の玄関前で休まず回っている水車。といううより、名勝・錦帯橋を見つめながら回っていると呼ぶ方が似合いそうな場所。苔むすとまでは経っていないがようだが、樋から流れ落ちる水に逆らうことなく律儀に回っている。水車の回るギーコ、ギーコという音、こぼれ落ちるザザーという水音はしないが、眺めていると母の実家近くで見た昔が目に浮かぶ。
昭和16年の「森の水車」
1 緑の森の彼方から 2 雨の降る日も風の夜も 3 もしもあなたが怠けたり
陽気な歌が聞えます 森の水車は休みなく 遊んでいたくなったとき
あれは水車のまわる音 粉挽臼の拍子とり 森の水車の歌声を
耳をすましてお聞きなさい 愉快に歌を続けます ひとり静かにお聞きなさい
コトコトコットン コトコトコットン ファミレドシドレミファ
コトコトコットン コトコトコットン 仕事にはげみましょう
コトコトコットン コトコトコットン いつの日か 楽しい春がやって来る
地方の街が都市化し、それが川の上流へ進むにつれて流域周辺の人口減や農産物の生産減に高齢化が進み、水車や臼の回る小屋など、かっての生活を支えた姿が消え、コンクリートの護岸では元へはかえれないことになっている。
あの頃の風景、今では唱歌や童謡の中でしか残っていない。市内にはかって日本一の大きさを誇った水車がある。その名は「でかまるくん」。そばを挽き、そこならではのそばが食べられる。普通に見られた水車は観光資源に変わった。それでも残してほしい。