少しの風もなく川面が鏡のように穏やかな日だった。ふと見上げたら錦帯橋の上空をパラグライダーが、ゆらゆらゆらゆら弧を描きながら降下している。急いでポケットから小型のカメラを取り出す。小形ゆえそれだけの機能しか備わっていないカメラ、高い位置での様子は撮れない。錦帯橋目線まで降下してくるまで待った。
錦帯橋下の川原へ降りたが、着地点は遠くて見えなかった。それにしてもどこからやって来たのだろう。滑空を始めるには助走するいくらかの斜面が必要という浅い知識くらいは持っている。しかし、市内に1ヵ所高照寺山(645m)に設備のありことは知っているが、そこから錦帯橋まで直線で約10キロ、そんなに飛行できるのだろうか。
五木寛之の「下山の思想 (幻冬舎新書)」が読まれているという。山に上りつめ頂上にたどり着くと次は下ることになる。その時は気を抜きやすくなるので十分に気をつけることが必要。いま日本はその下りに入っている、そんな内容らしいがまだ手にしていない。777円と求めやすい。
あのパラグライダーもゆっくりゆらゆらではあったが、川原にはみやげ物店や観光で見えた人の車があちこちに駐車している。それらを避けて怪我なく着地するには、それなりの気を使われたのだろう。日本は上りつめた後の下り坂をどう乗り越えるか難儀している。しかし難詰ばかりが報道に載る。年の瀬もせまり、来る年への期待を膨らませたいが、その施策はまだ見えない。
(写真:錦帯橋と着地前のパラグライダー)