昔の城下町の古い家屋敷、保存しようという話は聞くがその姿は年々減少している。維持費と変化する生活様式への板挟みに悩む、と話してくれた人がいる。大きな構えのそれの正面は白壁に歴史を偲ばせる瓦葺の低いひさし、格子の向こうに白い障子などが見え、かっての繁栄を偲ばせる。TVの黄門様は終わるそうだが、時代劇撮影が叶うのではと思う。
表は整った時代を感じさせるその歴史家も、裏に回るとまた違った今の姿が残っている。そこには長年の風化にかまうことなく過ぎた時間が感じられる。それでも、その造りや大きさから来るのか、あたりに威風を放っているのはさすがである。
内部を覗くことは出来ないが大きな蔵だったのだろうか、その西向きの大きな白壁に分岐に分岐を重ねたような何かのつるが伸びている。蜘蛛の巣のような規則性はないが一面にはびこり、宿を借りたお礼をしているよにその隔離を抑えている。蔵から表に伸びる板塀にも同じ植物が絡みついている。幾年月の営みか知る由もない。
周囲は先の大戦で戦火に見舞われることなく今に至る昔ながらの町並み。そこには、いにしえと今が同居している。いにしえといっても子どものころに目にした城下町の名残の部分。道は拡がりその両側は耐火構造になった。時代に見合った街姿に変わることは止められない。
(写真:大きな蔵に住みついたつるの芸術)