私は猫。ネコ、猫、ねこ、とTPOに合わせて呼ばれる。ここの公園には数多くの仲間がいるが定まった住処はない。私もいつ、誰に、どうしてここへ連れてこられたのか覚えていない。人の住む屋根の下で飼われた覚えがないのでこの公園でで生まれ、この公園で育ったのだろう、と思っている。だから年が分からない。
人からは野良猫と呼ばれる。どら猫とも呼ばれる。野良猫は飼い主のない猫、野原などに捨てられた猫と広辞苑に説明してある。また、どら猫はさ迷い歩いてよくぬすみ食いなどする猫、と載っている。私は望んでそうなったわけではない。気づいたときそうだった。
公園には観光で全国から大勢の人が来られる。野良猫でも頭をなぜたり抱き上げたり、一緒に写真を撮ってくれる人も多い。写真を送ってくれる人はいないがうれしい。勿論、避けて通り過ぎる人も多い。
早朝、軽の白いバンで餌を持って来てくれる人がいた。その時間前になるとその広場周りにはどこからとなく仲間が集まり、じっと待った。最近その人が姿を見せてくれない。話では、私たちに餌を与えることが禁止され、反すると罰を受けるとか。公園の中にはイノシシが余った餌を求めて出没するので、野良猫にえさをやるな、そんな立て札が立った。
つい最近、生まれたばかりの子どもが数匹、深さのある段ボール箱に入れられ桜の木の下に置き去られた。翌日にはそこから子どもらのすがたが消えていた。人に救われたと思いたいが、他の生き物に連れされた、経験がそう思わせる。
いつの間にか古株となりリーダーのようになった。広い公園を見回りながらこれ以上仲間が増えないよう願っている。家猫を野良猫にしないで欲しい、どうしたらこの願いが人に通じるのだろう。
(写真:よく見かける黒猫、白壁の上で古株の威厳を保っている)