星間商事株式会社社史編纂室(三浦しをん)

2014-09-23 00:00:39 | 書評
hoshima川田幸代29歳。腐女子。同人誌を武器に、社の秘められた過去に挑む。というテーマの小説であるが、社会派小説ではない。ライトノヴェル的。

大きな会社にはよく社史編纂室(編集室)というセクションがあるのだが、早い話が、もっとも閑職であることが多い。さらにいうと、閑職にいくべき人が先にいて、その人たちを押し込むために作られる部門。

これが多数になると、キャリア開発室というような追い出し部屋になるが、数人の場合は社史を書くことになる。予定の創立○十周年に間に合わなくても特にお咎めなし、というか、永遠に編纂を続けた方がいいのだろう。

そこに配属された4人+X(X=0~1)が、社史に空白期間があることに気付く。いわゆる「黒塗りの歴史」。

サリメリという日本の南にある新興国に進出する時に、現地の政治的リーダーに日本から女性をプレゼントしてコネクションを作ったという噂を突きとめる。某夫人伝?。某夫人は、その後体調をこわし、日本に帰国し、妹とチェンジ。妹は政変により一族で米国に逃亡し、その後の行方は不明。

私が書くなら、社史はいったん横に置いて、米国に某夫人の妹を探しに行くことにするのだが、その筋では取材が面倒と作者が判断したのか、ストーリーは「裏社史」に向かう。

社の予算で製作する正規の社史と、編纂室ご一同様のポケットマネーで作る裏社史が同時並行状態で完成に向かう。日本書紀と古事記みたいな関係だろう。そこに社内抗争が・・

結局、社史は2冊セットで完成するのだが、なんとなく米国で行方不明にされてしまった妹のことが気がかりだ。作者として責任もってほしいところだ。


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