隠し剣 鬼の爪(2004年 映画)

2022-11-17 00:00:30 | 映画・演劇・Video
藤沢周平原作である。2002年の『たそがれ清兵衛』、2006年の『武士の一分』と合わせ三部作の二作目だ。もちろん『たそがれ清兵衛』が大好評だったから、二作目、三作目であり、一作目を超えられなかったから、打ち止めになったのだろう。『武士の家計簿』、『武士の献立』は全く方向が違う喜劇だ。

下級武士とそれを支える女優という構造で、なんらかの武士の不合理な因習がからむ。そして藩内の秘め事とか、出世争いの巻き添え。そして美しい風景。

主演は孤高の下級武士を演じる永瀬正敏と家事手伝いの松たか子。身分を越えた恋愛だが、そういう場合の便法(いったん知人の武士の養女としてから婚姻する)もあるのだが、それでは映画にならない。剣の達人であるが人を斬ったことはない。

藩を裏切り、江戸幕府と通じていた盟友を斬る命を受けてしまうわけだ。『たそがれ清兵衛』は真田広之と宮沢りえの主演で、やはり藩命で人斬りに向かうのだが、真田広之は貧乏で、二本の刀の長い方は質屋に出して流れてしまい、竹に銀紙なのだ。二本目の刀は切腹用なので短い。そちらは本物なので、それで斬り合いをしなければならない。

永瀬正敏は仕事の前に師匠に稽古をつけてもらい、必勝戦術を教わる。さらに討ちもらした場合に備えて周りを鉄砲隊が囲んでいる。決闘シーンがもっと技巧的だった方が良かったかもしれない。

『たそがれ清兵衛』では、真田広之は役目をまっとうし武士としての身分を確とさせたものの、幕末の戦乱の中で命を落としたのだが、同じく幕末を生きた『隠し剣』の永瀬正敏は、武士の身分を捨て、江戸に上って商売に生きることになる。もっとも剣にしか生きていなかった男にできるのは「剣道の道場」ぐらいかもしれないが。