2024年08月24日 13時32分
処理水放出、長い道のり 開始1年、異常見られず―完了まで30年・東電福島第1原発(時事通信社)
東京電力福島第1原発にたまった処理水の海洋放出開始から24日で1年。東京電力ホールディングスはこれまで約6万トンを放出し、周辺海域で異常は確認されていない。ただ、敷地内のタンクには15日時点で約131万トンが残り、完了には30年程度かかる見通し。並行する廃炉作業とともに、道のりは長い。
処理水は、2011年の原発事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の冷却などで生じた汚染水から、トリチウム以外の放射性物質を取り除いたもの。トリチウムを国の安全基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満になるよう海水で薄め、現在8回目の放出を実施している。
放出を決めたのは、廃炉用設備などのスペース確保に向け、林立するタンクを解体する必要があるためだ。処理水は現在、タンクの総容量の95%を占めている。
これに対し、中国は直後から日本産水産物の全面禁輸に踏み切った。懸念された国内での風評被害は限定的だったが、主要な輸出先を失った漁業者らは大きな打撃を受けた。東電は現時点で漁業者らへの賠償額を753億円と見積もる。
国際原子力機関(IAEA)は放出後に2回の現地調査を行い、いずれも「国際安全基準に合致している」との見解を示した。政府や東電は、周辺海域のトリチウム濃度などが基準を下回っているとして、国内外に安全性を訴えるが、中国は全面禁輸を継続する。
原発事故全体の賠償額なども拡大している。現時点で支払額は11兆円超、合計で15兆4000億円に達する見通しで、8兆円の廃炉費用を含めると総額23兆円を超える。
東電はこうした費用を捻出するため、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を急ぐ構えだが、地元同意のハードルは高い。22日には福島第1原発のデブリを取り出す初めての試験作業を手順ミスで中断。トラブルや不手際が相次ぐ中、未曽有の原発事故処理の行方は今も不透明なままだ。
2024年08月24日 07時14分
「核汚染水」の呼称今も 中国で広がる風評被害―処理水放出1年(時事通信社)
中国が東京電力福島第1原発で生じた処理水の海洋放出を理由に、日本産水産物の輸入を禁止してから24日で1年。日本側の訴えにもかかわらず、中国はいまだに「核汚染水」と言い続け、日本産品の風評被害が広がっている。日中政府は協議を始めたものの、解決の糸口は見えない。
◇日本産ゼロ
「(処理水に関する)国際的な監視制度を作るべきだ」。王毅共産党政治局員兼外相は7月下旬、上川陽子外相との会談で従来の主張を繰り返した。
中国政府は昨年8月、海洋放出に激しく反発し、直後に日本産水産物の全面禁輸に踏み切った。中国貿易統計によると、日本産魚介類の輸入は観賞魚を除き、昨年9月からゼロのまま。日本産を使っていた飲食店は産地の変更を迫られた。
中国政府は昨年8月、海洋放出に激しく反発し、直後に日本産水産物の全面禁輸に踏み切った。中国貿易統計によると、日本産魚介類の輸入は観賞魚を除き、昨年9月からゼロのまま。日本産を使っていた飲食店は産地の変更を迫られた。
北京市内のある日本食レストランは、マグロを日本産からスペイン産に替えた。新たな調達先を確保したため、日本産の輸入が再開されても、戻すかどうかは分からないという。
中国では日本製品の不買運動も起きた。標的となった食品や化粧品は販売が急減。北京の日系食品大手は「取引先に商品を置いてもらえなくなった時期もある」(幹部)と打ち明ける。
税関で日本から輸入された菓子や飲料の通関が拒否されたり、追加手続きを求められたりするケースも続出。売り上げは完全に戻っておらず、「状況は厳しいままだ」(先の日系食品大手)という。
◇中国漁師にも影響
だが、禁輸の影響は中国政府の想定を超えて広がった。北京の40代女性は「しばらく海産物を食べていない」と話す。中国産にも風評被害が及んでおり、SNSには収入の急減など窮状を訴える漁師の投稿が相次いでいる。
中国最大の漁港がある浙江省舟山市の海鮮市場を訪れると、買い物客の姿はまばらだった。今年1~3月期の同市への旅行者数(外国人を除く)は前年同期比8.8%増と、全国平均を大幅に下回る。市場で話を聞こうとしたが、「日本人とは話したくない」とあしらわれた。
中国政府は国内で流通する海産物に独自の厳格な放射性物質検査を行っているとして、安全性をアピールしてきた。しかし、舟山の水産業者は「海はつながっている。日本産は危険で、中国産は安全なんて無理がある」と指摘する。
中国では官製メディアやSNSを通じ、処理水が今春にも中国沿岸に到達するとの専門家の見方も広まった。舟山市民の男性は「『核汚染水』は日本では特に問題視されていないんだろう。中国では誰かがあおり過ぎたんだ」と、政府の厳しい対応を疑問視した。
舟山漁港の漁期は今月から始まった。ただ出漁船は去年より少ないという。ある漁師は「すでに廃業した仲間もいる。生活は皆苦しい」と訴えた。政府からの支援は「特にない」と肩をすくめた。
時事通信の記事を拝見していて二本を知りました。福島第1原発のその後を知らずにいたので勉強になります。福島県と中国との水産物取引が気になります。
『国際原子力機関(IAEA)は放出後に2回の現地調査を行い、いずれも「国際安全基準に合致している」との見解』 との事です。
日本政府は中国側の考えをどのように解決出来るか、確認したいです。