語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】民主制の起源 ~中学や高校の教科書が教えないこと~

2016年10月30日 | ●佐藤優
 
 〈民主制〉とは何か。まず最初に押さえておかないといけないのは、現代につながるような政治はどこで始まったか。古代ギリシャだ。ギリシャの都市国家はポリスと言う。ポリスは〈法〉で動く。法はギリシャ語でノモスと言う。ポリスではノモスがゲームのル-ルとして適用され、民主制になった。議論を行って、投票も行われた。
 古代ギリシャの投票は陶片追放だ。だから選挙はもともと、いい人を選ぶのではなく、嫌な人を排除するためにやることだ。それはノモスに従って行われていた。それで陶片追放主体に女性は入っていない。自由民の男が主体だった。これがポリスだ。
 一方で、生活がある領域をオイコスと読んだ。直訳すると〈家〉という意味だが、〈自分たちが居住する世界〉といったニュアンスだ。ちなみに、オイコノミアだと家政、ひいては経済を意味する。エコノミーの語源だ。
 都市国家=ポリスの主体は自由民の男だけだが、生活の場=オイコスには女も奴隷もいる。ところが、そこに法=ノモスは適用されない。で何が適用されたか。中学校や高校の教科書には載っていないが、ビア(Bia)という概念だ。これは暴力のことだ。つまり家長は、女性をぶん殴っても構わないし、奴隷をぶっ殺しても構わないとされていたわけだ。ということは、家庭の領域、経済の領域は暴力で支配される。
 それに対して国家の領域、政治の領域は法で統治する。すなわち、経済の領域と政治の領域は二分されて、適用される原理も違った。
 そうなると現代でもDV(ドメスティック・バイオレンス)が問題になっているけれども、もともと暴力が埋め込まれていると言うことができる。ヨーロッパでも埋め込まれているわけだ。
 そこからどうやって脱構築していかないといけないかということは、やっぱり人類の歴史の中で非常に重要なことだ。

□佐藤優『君たちが知っておくべきこと 未来のエリートとの対話』(新潮社、2016)の「真のエリートになるために 2013年4月1日」
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

【佐藤優】『新・リーダー論 ~大格差時代のインテリジェンス~』目次

2016年10月30日 | ●佐藤優
 
はじめに(池上彰)

1 リーダー不在の時代--新自由主義とポピュリズム
 新自由主義と民主主義の機能不全
 民主主義を迂回する仕組み
 「生前退位」報道で問われた新聞の倫理
 リーダー論が成り立たない時代
 エリートと国民の信頼関係の崩壊
 強そうで強くないリーダー
 エリートの責任放棄
 新自由主義の象徴としてのシールズ
 組織が人を引き上げてくれる
 理想のリーダーとは?
 組織も変容する
 タブーによって社会は成立する
 若手官僚の根拠なき全能感
 人から侮辱されることだけは避ける「伊藤くん」
 サルコジ現象
 サッチャー、レーガンとは異なる
 左右に共通するエリートのナルシシズム

2 独裁者たちのリーダー論--プーチン・エルドアン・金正恩
 プーチン大統領--「強いロシア」を演出
 リーダーに対する国民感情
 ロシアの選挙は秩序立っている?
 ロシア国家とスポーツ
 国家に不可欠な暴力装置
 政治指導者というよりKGB中堅職員のメンタリティー
 日本は無法者でロシアは法の濫用者
 世俗主義の守護者としてのトルコ軍
 クーデタ未遂事件を利用するエルドアン
 ロシアとトルコの接近
 北朝鮮のリーダー論

3 トランプを生み出したもの--米国大統領選1
 ドナルド・トランプと橋下徹
 「経営」というより「取引」
 病的潔癖症
 トランプのメディア戦略
 コマーシャル合戦
 トランプの共和党乗っ取り作戦
 共和党の崩壊
 共和党の崩壊を準備したもの
 支持者の特徴
 民衆の破壊願望に乗るリーダー
 戦死者の遺族を侮辱

4 エリートVS大衆--米国大統領選2
 米国大統領の経済学--政治とカネ
 ヒラリーのメール疑惑
 ヒラリーはもと共和党
 「平和=格差」か? 「平等=戦争」か?
 トランプ大統領で日本はどうなる?
 アメリカ第一主義はアメリカの国是
 「世界の警察官」の思想--『光の子と闇の子』
 日米安保と「核の傘」はどうなる?
 貿易面でも孤立主義
 米露関係の改善と中東情勢の激変
 トランプに従わない米軍?
 諮問会議による民主主義の迂回
 旧エリートと新エリートの闘い
 外交官も政治任用
 新大統領の運命を左右する下院・上院選挙
 教育が格差をつくりだす--学費の高騰
 サンダースが支持される理由
 日本の学費も高騰
 「教育」の逆説--格差解消ではなく格差拡大を助長
 富裕層の教育戦略

5 世界最古の民主主義国のポピュリズム--英国EU離脱
 EU離脱を主張したポピュリズム政治家
 国民投票が招いた国家統合の危機
 スコットランド独立
 英国EU離脱とスコットランド通貨問題
 EU離脱はどう実行されるか?
 アイルランドのパスポートを求める英国人

6 国家VS資本--パナマ文書と世界の富裕層
 富裕層の富の独占とパナマ文書
 パナマ文書の情報源はどこか?
 狙いはイギリス?
 国家VS資本--見えざる第三次世界大戦
 アメリカ国内にあるタックスヘイブン
 タックスインバージョン(租税地変換)
 日本の富裕層--土地に縛られる文化
 税率の高い日本から逃亡するエリート
 「良き納税者になろう」
 ロシアの富裕層--プーチンは意外に清潔?
 中国の富裕層
 国税当局同士のギブアンドテイク
 ピケティ流の課税強化の是非
 高速取引をめぐる国家と資本の闘い
 検察は簡単に捕まえる
 民族・国家・資本
 反ユダヤ主義

7 格差解消の経済学--消費増税と教育の無償化
 消費増税をめぐる建設的な国会論戦
 一%の増税で「教育無償化」は可能
 なぜ景気は回復しないのか?--日本経済停滞の真の理由
 タンス預金の非合理性
 静かなる取り付け騒ぎ
 日本の財政構造に効く超長期国債?

8 核をめぐるリーダーの言葉と決断--核拡散の恐怖
 オバマと被爆者の対面に思わず泣いてしまった
 リーダーとしての言葉--オバマの広島演説
 核をめぐるトランプとオバマ
 「核使用」を認める日本政府の答弁
 ウラン型原爆こそ核拡散の脅威
 日本は二年で核武装可能
 原発依存が非核につながる
 核を保有しても設置場所がない
 オバマ広島訪問に冷ややかだった沖縄
 無視される沖縄の声
 まともな植民地政治を

9 リーダーはいかに育つか?
 伊勢志摩サミットの内情
 牧師の子に異教の神を拝ませる
 無神経すぎた自動車試乗会
 出所不明の情報を元に国会質問をする議員
 元検事議員の高額なコーヒー&ガソリン代
 政治家の常軌逸脱
 舛添前知事の呆れた公金感覚
 都庁の裏金?
 独りよがりのエリート主義のポピュリズム批判
 角栄ブームをどう見るか?
 「カネ」と「権力は代替可能?
 日本人にとっての理想のリーダー
 成功しているリーダーと集団的価値
 リーダーの猜疑心
 リーダーシップの難しさ
 リーダーと教養教育
 リーダーは段階を経てつくられる--帰属意識と社風
 エリート教育に必要なもの 

あとがき(佐藤優)

□池上彰×佐藤優『新・リーダー論 ~大格差時代のインテリジェンス~』(文春新書、2016)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】+池上彰 教養教育、帰属意識と社風、エリート教育 ~リーダー育成~
【佐藤優】+池上彰 成功しているリーダーと集団の価値
【佐藤優】+池上彰 田中角栄は今日でもリーダーたりえるか?
【佐藤優】+池上彰 ルール破りの国会議員たち ~山尾志桜里・武藤貴也・上西小百合~
【佐藤優】+池上彰 メルケル首相を激怒させた安倍首相 ~伊勢志摩サミット~