東京オリンピック・パラリンピックのための整備事情が性急すぎて、都民の生活を圧迫している。
東京都は、豊洲新市場(江東区)の土壌汚染対策工事の完了を受けて、2014年12月17日、新市場建設協議会を開いて次の提案を行った。すなわち、豊洲の開場時期を「2016年11月上旬としたい」と。築地市場(中央区)から引っ越す大卸や仲卸などの代表は合意した。
計画では、五輪の開催年に合わせて環状2号線を築地市場の跡地に通す。ために、2017年4月までに更地にしなければならない。そこから逆算した期日が「2016年11月上旬」なのであった。
だが、関係者にとっては刑の執行日の宣告と同じで、「合意」というよりは「不承不承」だ。五輪が汚染市場を生んだと知ったら、国際世論はどう反応するだろうか。【坂巻幸雄・日本環境学会】
対策工事完了後、2年間の地下水質モニタリングが定められている【土壌汚染対策法】。この調査で特定有害物質の含有量が基準値以下であることを確認しなければ、同法の指定区域を解除できない。
豊洲には、以前東京ガスの工場があり、これに由来するベンゼンやシアン化化合物などが検出されている。
2013年3月、都議会予算特別委員会で、塚本直之・市場長(当時)は、「2年間のモニタリングを実施した上で指定を解除する」と答弁した。今後のモニタリングで基準値以上の有害物質が検出された場合、指定区域が解除されないまま開場されることになる。
と・こ・ろ・が、井川武史・東京都新市場整備部課長によれば、「塚本元市場長は2年間のモニタリングが開場の条件とは言っていません。また、指定解除を目指すスタンスは変わっていません。昨年11月からモニタリングは始めているので、16年11月開場には間に合います」とのこと。
しかし、都は汚染が検出された場合の指定解除のための対策を予定していない。それなのに、「指定解除を目指す」というのは、とんでもないインチキだ。【水谷和子・一級建築士】
*
さらに、新国立競技場(五輪の主会場となる)も、計画が迷走している。
当初は、総工費が最大3,000億円と資産されたが、著名な建築家や市民団体から「景観を破壊する」などと批判が相次いだ。高さを75mから70mに抑え、面積も2割縮小した。それでも1,625億円かかる。予算は国費で賄われるが、政府は都にも負担を求めている。
事業主体の独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)は、国立競技場を改修すれば777億円で済むと試算していた。
だが、陸上競技で世界標準の9レーン(現状は8レーン)へ改修できないなどという不明瞭な理由で、JSCは新設の姿勢を崩さない。
コンペで選ばれたザハ氏の本来のデザインを損なう現行案で建築された場合、将来の東京は巨大な「粗大ゴミ」を抱え込む。【磯崎新・建築家】
この計画に伴って、近隣の生活者にも負担がのしかかる。
都営霞ヶ丘アパートの立ち退き問題では、都は住民に事前相談はなく、同アパートの立地を「関連敷地」と設定。昨年11月に住民説明会を開き、
①2015年10月頃に部屋割り抽選会を実施。
②2016年1月頃に都が用意した別の都営団地へ引っ越す。
・・・・といったスケジュールを通告した。
ここは高齢者が多く、引っ越し自体がストレスになる。「移転すろ、というならここで焼き殺してくれ」とまで言う住民もいる。【1950年代から同アパートに住む女性】
すべての人を100%満足させることはできないので、何らかの妥協はどこかでやっていただく。【桝添要一・東京都知事、2014年12月2日の会見】
都が主体となる新国立競技場以外の建設費では、立候補段階の1,538億円から、現在は2,576億円(2014年11月19日、都発表)へと、1,038億円も額が膨らんでいる。
□永尾俊彦(ルポライター)「生活を圧迫する“東京五輪” 汚染対策は見切り発車、後世に残る“粗大ゴミ”も」(「週刊金曜日」2015年1月9日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~」
「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」
東京都は、豊洲新市場(江東区)の土壌汚染対策工事の完了を受けて、2014年12月17日、新市場建設協議会を開いて次の提案を行った。すなわち、豊洲の開場時期を「2016年11月上旬としたい」と。築地市場(中央区)から引っ越す大卸や仲卸などの代表は合意した。
計画では、五輪の開催年に合わせて環状2号線を築地市場の跡地に通す。ために、2017年4月までに更地にしなければならない。そこから逆算した期日が「2016年11月上旬」なのであった。
だが、関係者にとっては刑の執行日の宣告と同じで、「合意」というよりは「不承不承」だ。五輪が汚染市場を生んだと知ったら、国際世論はどう反応するだろうか。【坂巻幸雄・日本環境学会】
対策工事完了後、2年間の地下水質モニタリングが定められている【土壌汚染対策法】。この調査で特定有害物質の含有量が基準値以下であることを確認しなければ、同法の指定区域を解除できない。
豊洲には、以前東京ガスの工場があり、これに由来するベンゼンやシアン化化合物などが検出されている。
2013年3月、都議会予算特別委員会で、塚本直之・市場長(当時)は、「2年間のモニタリングを実施した上で指定を解除する」と答弁した。今後のモニタリングで基準値以上の有害物質が検出された場合、指定区域が解除されないまま開場されることになる。
と・こ・ろ・が、井川武史・東京都新市場整備部課長によれば、「塚本元市場長は2年間のモニタリングが開場の条件とは言っていません。また、指定解除を目指すスタンスは変わっていません。昨年11月からモニタリングは始めているので、16年11月開場には間に合います」とのこと。
しかし、都は汚染が検出された場合の指定解除のための対策を予定していない。それなのに、「指定解除を目指す」というのは、とんでもないインチキだ。【水谷和子・一級建築士】
*
さらに、新国立競技場(五輪の主会場となる)も、計画が迷走している。
当初は、総工費が最大3,000億円と資産されたが、著名な建築家や市民団体から「景観を破壊する」などと批判が相次いだ。高さを75mから70mに抑え、面積も2割縮小した。それでも1,625億円かかる。予算は国費で賄われるが、政府は都にも負担を求めている。
事業主体の独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)は、国立競技場を改修すれば777億円で済むと試算していた。
だが、陸上競技で世界標準の9レーン(現状は8レーン)へ改修できないなどという不明瞭な理由で、JSCは新設の姿勢を崩さない。
コンペで選ばれたザハ氏の本来のデザインを損なう現行案で建築された場合、将来の東京は巨大な「粗大ゴミ」を抱え込む。【磯崎新・建築家】
この計画に伴って、近隣の生活者にも負担がのしかかる。
都営霞ヶ丘アパートの立ち退き問題では、都は住民に事前相談はなく、同アパートの立地を「関連敷地」と設定。昨年11月に住民説明会を開き、
①2015年10月頃に部屋割り抽選会を実施。
②2016年1月頃に都が用意した別の都営団地へ引っ越す。
・・・・といったスケジュールを通告した。
ここは高齢者が多く、引っ越し自体がストレスになる。「移転すろ、というならここで焼き殺してくれ」とまで言う住民もいる。【1950年代から同アパートに住む女性】
すべての人を100%満足させることはできないので、何らかの妥協はどこかでやっていただく。【桝添要一・東京都知事、2014年12月2日の会見】
都が主体となる新国立競技場以外の建設費では、立候補段階の1,538億円から、現在は2,576億円(2014年11月19日、都発表)へと、1,038億円も額が膨らんでいる。
□永尾俊彦(ルポライター)「生活を圧迫する“東京五輪” 汚染対策は見切り発車、後世に残る“粗大ゴミ”も」(「週刊金曜日」2015年1月9日号)
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【参考】
「【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~」
「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」