語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(2) ~違憲が争点に~

2015年07月15日 | 批評・思想
 (承前)

 (4)大きな変化に向かう転機の到来は、6月14日の
    「戦争させない・9条を壊すな! 総がかり行動実行委員会」
主催による国会包囲の行動も、予感させた。多様な関係団体を網羅した共同戦線的なこの行動への参加者は、主催者発表によると25,000人。与党を除く政党代表、各界有識者、沖縄の青年、神奈川の主婦など、多彩な参加者がそれぞれの立場から、法案の撤回を求める抗議の声を上げ、国会を包囲する大勢がこれに呼応する状況が出現した。

 (5)(4)のような状況を生き生きと伝える点でも、ネットが面白い。
 <例1>14日には、国会前集会とは別に、東京・渋谷で“若者でも”「戦争立法反対! 渋谷デモ」が3,500人を集めた。19日夜には、「SEALDs」に結集する学生たちが2,500人参加して、国会正門前で集会を成功させた。
 <例2>20日には、戦争法案にレッドカードを突きつけようと、赤いファッションで装った女性15,000人が国会を包囲

 (6)安倍政権の法案成立強行作戦をめぐる状況も、ここへきて変わりつつある。
 それは、
   昨年7月の集団的自衛権武力行使容認閣議決定
   今年4月の日米首脳会談における日米防衛協力新ガイドライン合意
   米上下両院合同会議で「夏までに安保関連法を実現する」と約束した首相演説
など、
   国民・国会を無視し、
   ひたすら米国政府に取り入り、
挙げ句には全面改憲に結びつけようと企む政権の強引さが、野党やメディアの反発を掻き立てた結果といえる。

 (7)大きな国民的反対を呼び覚ましたのには、与って学者・研究者の力が大きい。アンデルセン童話「裸の王様」のように、首相の企みの明白な違憲性があっさりと引き剥がされ、インチキなものはインチキだと国民が言い合える闊達な空気が一気に醸し出された。
 6月4日、衆議院憲法審査会に参考人として招かれた3人の憲法学者、
   長谷部恭男・早稲田大学教授(与党推薦)
   小林節・慶應義塾大学名誉教授(民主推薦)
   笹田栄司・早稲田大学教授(維新推薦)
が、揃って「政府提案の安保法制は違憲」とする見解を披瀝したことが、一連の動きの口火を切った。

 (8)6月6日夜、与党はうろたえ、メディアも大きく取り上げ、騒然とする空気が巻き起こるなか、憲法学者・政治学者などによる「立憲デモクラシーの会」(樋口陽一・東大名誉教授&山口二郎・法大教授が共同代表)が東大・本郷構内でシンポジウム「立憲主義の危機」を開いた。1,400人が集まる盛況となった。
 6月15日、研究分野を横断する学者61人が代表の「安保関連法案に反対する学者の会」が、学士会館(東京・神保町)で反対声明を発表、賛同者が学者2,700人、市民1,800人にも達している模様を報告した。
 両者の合計人数は、19日現在、12,000人を超えた。発起人は、佐藤学・学習院大教授(教育学)、間宮陽介・青学大特任教授(経済学)、上野千鶴子・東大名誉教授(社会学)など。

 (9)この間、政界、法律家・文化関係者のあいだでも注目すべき動きが生じた。
 6月9日、日本記者クラブの河野洋平・元自民党総裁&村山富市・元首相の対談と記者会見は、「戦後70年談話」の検討を予定、早くに開催日が決まっていたが、この日が(7)のとおり3憲法学者の「違憲発言」後となったため、会場には300人超の取材陣が押しかけた。
 6月12日、日本記者クラブは次いで、山崎拓、亀井静香、武村正義、藤井裕久の4氏共同記者会見も開催した。いずれもかつては自民党の大幹部だった面々。
 以上6氏の、安倍政権の危うさをそれぞれ自分の言葉で語った話も、メディアを賑わせた。

 (10)法律家の動きとしては、日本弁護士連合会が、早くも5月14日、同日の安保関連法案閣議決定に対し、「日本の在り方、覆す」とする反対声明を明らかにしていた。
 政府が憲法学者の「違憲」論を覆そうと、「砂川事件」の最高裁判決を根拠に集団的自衛権行使の合憲性を強弁するに至るや、
 6月12日、「砂川事件」の元弁護団、司法記者クラブで会見、当該判決は日米安保・在日米軍基地を憲法判断の埒外に置いたものに過ぎず、集団的自衛権行使の合憲判断はしていない、と政府のウソを粉砕した。
 (8)で記したように「学者の会」が反対声明を発した6月15日、国会内で「安保体制打破 新劇人会議」が会見を行い、俳優座、民藝、青年劇場、前進座、東京芸術座、人形劇団プーク、劇団風の子の関係者が出席、「憲法9条を壊す『戦争立法』=平和安全法制整備法案・国際平和支援法案に反対します」の声明を発表。これに32劇団、演劇関係4団体が賛同(第一次集約分)、なお賛同者・団体が増加中と報告した。
 こうした共同での意思表示は「60年安保闘争以来」という。

□神保太郎「メディア批評第92回」(「世界」2015年8月号)の「(1)広がる安倍政権追撃の戦線とメディア」
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 【参考】
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(1) ~SNS上の痛烈な批判~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~


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