語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(4) ~読売・NHKは?~

2015年07月15日 | 批評・思想
 (承前)

 (14)読売新聞は、6月5日以降、
    3憲法学者の「違憲」見解も
    日本記者クラブの河野・村山対談会見も
    日本記者クラブの元自民党4長老の会見も
ろくに報じてこなかった。
    6日「集団的自衛権 限定容認は憲法違反ではない」
    8日「沖縄知事訪米 普天間の危険除去をどうする」
    11日「集団的自衛権 脅威を直視した議論が大切だ」
    16日「集団的自衛権 最高裁判決とも整合性がある」
などの社説を掲げてきた。「安倍ノー」の世論を抑え、政権を激励し、先導さえしようとする態度が露骨だ。

 (15)NHKの役割も無視できない。
 憲法学者が投じた波紋に慌てた自民党が、急遽、街頭の宣伝活動で反論せよ、と全党に指令を発した。
 東京では、7日、新宿駅前に谷垣禎一・幹事長らが街宣車を繰り出した。ところが、その前に立った聴衆は30人程度。これを取り囲んで、婦人や若者多数を含む100人以上の市民が集まり、「戦争反対」「ダメダメ改憲」などのプラカードを掲げ、シュプレヒコールを繰り返した。自民党勢が20分そこそこで退散した後も、包囲陣は長い間気勢を上げていた。
 しかし、19時のNHKニュースは、街宣車上の谷垣幹事長の演説姿をアップで映し、反対陣営の姿はいっさい映さなかった。NHKは、何がニュースかを見抜くセンスまでなくしてしまったらしい。【注】

 (16)長谷部教授と小林名誉教授は、15日にも外国特派員協会、日本記者クラブと、立てつづけに会見に臨み、内外記者団の取材を捌いた。
 今や、欧米のジャーナリストの安倍政権に対する関心は大きく、問題意識の水準も高い。
    フランスのロブス(L’obs:元ヌーベル・オプセルバトゥールの後継誌)5月21日号が「安倍晋三の隠された顔」
    英エコノミスト誌6月5日号が「右側上へ」
と、仏英の週刊誌がつづけて右翼団体「日本会議」の特集を中心に、これとべったりの安倍政権の行方も占った。
 その対米追随と国家ナショナリズムへの傾斜の奇妙な混淆がもたらす日本の危うさは、当の日本のメディアがあまり深入りしてこなかった問題だ。
 
 (17)日本のメディアはまた、翁長沖縄県知事の訪米を、大方のメディアは成果なし、と黙殺した。
 だが、2014年に沖縄の海兵隊基地建設に反対の声を上げたノーム・チョムスキー、ジョン・ダワー、オリバー・ストーン、ナオミ・クラインなど28名の米知識人との連携は、底辺で強まっている。
 さらに、5月に米国の日本研究者・歴史学者が連名で(最終的には187人に膨れあがった)公表した「日本の歴史家を支持する声明」も注目されてよい。
 日本では、慰安婦問題で日本政府を非難し、反省を求める声明であるかのように報じられた。しかし、全文をよく読めば、安倍政権のもたらす危機に抗し、歴史の正しい道筋を示してほしいと、日本の研究者に連帯の激励を送る文章であることがわかる。
 日本に屈従を強いる米国政治の行き詰まりに対する批判や、その打開を自らの課題ともする問題意識に裏打ちされている。
 確実に大きな歴史の転換期が訪れつつあるのだ。試されるのは学者だけではない。メディアもだ。

 【注】「【NHK】「反対」議会隠し ~安保法案に反対の地方議会が7割強~

□神保太郎「メディア批評第92回」(「世界」2015年8月号)の「(1)広がる安倍政権追撃の戦線とメディア」
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 【参考】
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(3) ~新聞はどう報じたか~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(2) ~違憲が争点に~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(1) ~SNS上の痛烈な批判~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~



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