語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~

2016年06月13日 | ●片山善博
 この4月から、舛添知事の
   ・豪奢で高額な海外視察
   ・毎週末の公用車におる湯河原の別荘通い
   ・私的な家族旅行への政治資金流用疑惑
   ・etc.
都知事としての適格性が疑われる問題が続々と発覚している。

(1)豪奢で高額な海外視察
 舛添知事は、2014年2月の就任から2015年末まで、計8回、海外出張をしているが、その経費は総額2億1,300万円に上る。2015年秋の5泊7日のパリ、ロンドン視察では5,000万円超。飛行機はファーストクラスで266万円(知事1人分・往復)。宿泊費は一流ホテルのスイートルームで1泊19万8,000円(知事1人分)。【上脇】
 都の条例によれば、知事の宿泊費の上限は4万200円だが、舛添知事はその上限の5倍近い豪華な部屋を使っている。尋常ではない。舛添知事は、「急な要人との面会に備えて」などと記者会見で説明したが、ほとんど絵空事だ。海外出張中、VIPが突然、知事が寝泊まりしているホテルの部屋を訪れることなど、あり得ない。また、通常海外出張では、事前に綿密な訪問スケジュールを組んでおり、こちらから出向くのが基本ルールだ。【片山】
 片山善博・前鳥取県知事も増田寛也・前岩手県知事も、一度もそんな高級な部屋に泊まったことはない。【片山、増田】
 舛添知事は、会見で、その点を突っ込んだ香港の記者に「香港のトップが二流のビジネスホテルに泊まりますか。恥ずかしいでしょう!」と怒っていたが、論点をすり替えている。あまりにもおかしな回答だ。
 加えて、同行人数が多すぎる。去年のパリ、ロンドン視察や2014年のベルリン、ロンドン視察の同行者はそれぞれ19人。まるで参勤交代のような「大名旅行」で驚愕するばかり。これだけ人数が多いと移動も大変だ。知事の海外視察は必要最小限の人数でコンパクトに行って、帰ってきたらすぐ仕事に戻れるようにするべきだ。【増田】
 舛添知事の海外視察費用を子細に見てみると、都知事に就任して最初の5回分の海外出張費はそれほど極端に高額ではない。最高額はソチ視察の3,000万円で、ほかはだいたい1,000万円程度に納まっている。これらは前知事時代から決まっていた視察だったのかもしれない。経費の使い方が明らかに変わったのは、2014年秋のベルリン、ロンドン出張で、7,000万円かかっている。このあたりから舛添知事の意向が強く反映しているのではないか。一般的に知事の海外視察はどのように決まるか。【上脇】
 知事の海外視察は、職員の方から、県庁の仕事として知事にぜひ行ってもらいたいという要請もあるにはある。ただ、件数としてはあまり多くはない。逆に、もし知事が「ここに行きたい」と希望すれば、たいていは通るだろう。「止めたほうがいい」と直言する勇気のある職員は、どこの役所でもそう多くはいないから。【片山】

(2)毎週末の公用車におる湯河原の別荘通い
 舛添知事が毎週末、東京を離れ、公用車で神奈川県湯河原町の別荘に行っていたことも問題視されている。「週刊文春」5月5・12日号のスクープがきっかけだったが、同誌によれば、この1年間で合計49回も公用車で「別荘通い」をしていた。【上脇】
 危機管理上、大問題だ。舛添知事は、股関節術後のリハビリのために「週に一度くらいは広い風呂で足を伸ばしたい」と説明したが、知事が毎週自らの自治体を離れるなど断じてあってはならない。知事は、災害が起きた際、災害対策本部長を担う。つまり、1分でも早く県庁に駆けつけて情報を収集し、対策を講ずるのが仕事だ。だから、いつでも都庁に駆けつけられる場所にいるのが本来、都知事のあるべき姿だ。
 増田氏も、知事時代、何かあればすぐ県庁に駆けつけられるよう、常に気をつけていた。台風の予報がある時はなおさら注意する。しかし、地震は予測できない。例えば、夜中、飲酒しているときに地震が起こり、真っ赤な顔で駆けつける自体に陥るのは避けたいと思ったら、自然に酒量が減り、そのうちにほとんど飲まなくなった。【増田】
 災害時に知事権限で判断しなければならないことは実に沢山ある。人命救助を最優先しなければならない時に、まず知事を探したり、隣県から知事を連れ戻したりするのにエネルギーを費やすなんて、誰が考えてもおかしい。任期中ぐらいは自分のやりたいこともぐっと我慢して、組織に迷惑をかけないように行動するのもトップの大事な務めだ。【片山】
 例えるなら、増田氏が知事時代に隣の宮城県に毎週行っていたとか、片山氏が知事時代に岡山県に毎週行っていた、というのと同じだ。さらに敷衍すれば、安倍首相が毎週隣国の韓国へ行っているのと同じようなものだ。あり得ない。東京から神奈川というと、毎日その間を通勤している人も多いから、何となく見過ごしがちだが、極めて異様な事態なのだ。【片山】
 国会議員時代なら毎週湯河原に行ってもいいだろう。しかし、地方自治体を預かる知事は、よほどの事態がない限り県外に出るようなことは避けるべきだ。もちろん不自由だが、知事になるとは、そうした不自由さを職務として担うということのはずだ。【片山】

(3)美術品購入は「業務上横領」の疑い
 「公用車での別荘通い」は、危機管理上はもちろん、税金の無駄遣いの観点からも批判を免れない。ハイヤーで都庁から湯河原までの往復は8万円かかるそうだから、年49回で単純計算するとざっと400万円。海外視察の事例と合わせて、今後、都民から返金を求める住民監査請求がなされ、住民訴訟になる可能性がある。【上脇】
 一連の報道を見ていると、舛添知事が知事になる前の政治資金の使途も、公私混同の誹りを免れない。【増田】
 <例>2013年、2014年の正月に、家族旅行で「龍宮城スパホテル三日月」に宿泊し、合計37万円を「会議費用」として政治資金で支払った疑惑。【増田】
 国会議員時代に染みついた政治資金のルーズな使い方が、都知事になってからもずっと続いてしまったように見受けられる。【増田】
 舛添知事は、家族と宿泊した部屋で政治に関する会議をやったのだと強弁していたが、結局「誤解を招いた」として返金する意向を示した。返すということは、やはりやましいお金の使い方をしていて、会議などしていなかったのだろうと思われて当然だ。舛添知事の夫人は、「舛添誠司経済研究所」の代表取締役のようだから、「妻と、ひと月後に迫っていた知事選に出馬するかどうか会議をしていました」と言いたかったのかもしれないが、子ども連れでプールで遊んでいたのでは、誰も納得しないだろう。【片山】
 会見での弁明を見ていると、相談できる仲間、信頼できるブレーンがいない人だとわかる。会議の出席者の名前や人数を聞かれて、「政治の機微にかかわる」と答えなかった。名前はともなく、参加していた人数までが「政治の機微にかかわる」なんて、誰も思わない。【増田】
 「政治資金オンブズマン」は、「龍宮城スパホテル三日月」の費用を「会議費」としているのは政治資金規正法違反(虚偽記載)にあたるとして東京地検に刑事告発している。【片山】
 舛添知事は、「龍宮城スパホテル三日月」の費用を「会議費用」、自宅近くの天ぷら料理屋やイタリアンレストラン等の飲食代7万円を「食事代」、美術品・絵画・骨董品等の購入費580万円を「資料代」として政治資金から支出していた。これらはすべて私的なもので、政治活動とは言えず、虚偽記載の疑いがあり、告発の対象となった。【上脇】
 問題は、それだけにとどまらない。舛添知事が都知事になる前から、「政治資金オンブズマン」では舛添の政治資金の使途を分析し、疑惑に警鐘を鳴らしていた。当時は今ほど注目を集めなかったが、例えば、
  (a)参議院議員だった2009年から、舛添の政党支部や資金管理団体が、「舛添誠司経済研究所」に、事務所費として毎月44万円を支払い、6年間で合計3,000万円が流れている。今回、このことも改めて注目され、批判を浴びている。政治団体の事務所としての使用実態があったとしても、地元の不動産相場よりも、明らかに高額な値段設定ではないか。
  (b)通常「資料代」とは、国会で質問するなどの政治活動に使う資料の購入費が該当する。美術品の購入費を「資料代」と書いておけば「セーフ」にできると考えたのかもしれないが、記者に質問されて「国際交流のためだ」と弁明したのは、後知恵だろう。政治資金規正法では、使途に関する明確な制限がない。そこに付け込んだ狡賢いやり方だ。そもそも、美術品を政治活動のための「資料」として購入するなど、あり得るのか。【上脇】
 舛添知事は、「海外の方と交流する際に、書や浮世絵の版画などをツールとして活用している」と弁明していた。増田氏は知事を12年、総務大臣を1年務めたが、そのようなケースは聞いたことがない。自身の趣味のためではないか、と疑われても仕方ない。【増田】
 百歩譲って好意的に考えれば、海外の姉妹都市との交流事業などに際し、知事としてお土産を準備することはあり得る。例えば、地元にちょっとした書家がいる場合、その方を顕彰する意味も含めてその書を購入し、先方にお贈りするようなことはあり得る。ただ、毎月のように「世界堂」(画材・額縁の専門店)で買い物しえいる事実からは、とてもそうは思えない。購入した美術品などが自分の趣味や資産形成のためのものではないと世間に納得してもらうには、何を買い、どのような場所で誰に手渡し、どう政治に役立てたのかを説明する責任がある。【片山】
 「政治資金オンブズマン」は、美術品などの購入に関しては、政治資金規正法はもちろん、刑法上の業務上横領にもあたるのではないかと刑事告発している。【増田】
 舛添知事は、国民1人年間250円の血税である政党交付金を受け取る政党、すなわち「新党改革」時代にそのお金で美術品、580万円を購入している。ところが、舛添知事は都知事選出馬時に離党して「無所属」になっており、彼の政党支部だった新党改革比例区第4支部も、個人の資金管理団体だった「グローバルネットワーク研究会」も、すべて解散している。つまり、美術品はどこにも返還されず、舛添知事の思うがままに処理され、個人資産になってしまっている可能性が高い。これは会社解散時に残っていた絵画などを持ち逃げしたに等しい。「業務上横領」に該当すると「政治資金オンブズマン」はみて、同罪で刑事告発することになった。【上脇】
 「政治資金オンブズマン」はこれまで何人もの政治家を「政治資金規制法違反」の疑いで告発したが、業務上横領で告発したことはない。【上脇】
 政治資金規制法では、政党支部や資金管理団体が解散したときの金や資産についての処理方法が一切書かれていないから、後処理をする団体の良識に委ねられている。ひどいケースになると、スタッフで山分けしたと囁かれることもある。今後、政党や政治団体の解散時の処理について法整備が必要だ。【上脇】

□鼎談:片山善博(慶應義塾大学教授)、増田寛也(東京大学公共政策大学院客員教授)、上脇博之(神戸学院大学教授/市民団体「政治資金オンブズマン」共同代表)「舛添知事は日本の恥だ ~汚れた「TOKYOの顔」への退場勧告~」(「文藝春秋」2016年7月号)
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 【参考】
【片山善博】【舛添】都知事問題は自治システム改善の教材


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