コードバン 1


LEICA X1

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愛用のオールデンのコードバンの靴を取り上げようと思ったら、思いの外、説明が長くなりそうである。
そこで2回に分けて書くことにした。
まずはコードバンという素材について書いてみる。

お洒落だった叔父は、戦後間もない頃から、コードバンの誂え靴を履いていた。
最高の素材である・・ということを、叔父からよく聞かされた。
そのため、子供の頃から、コードバンという素材には興味があった。

コードバンとは馬の臀部の革である。
そこまでの知識は、多くの人が持っているだろう。
実際にはこの革は裏返しの状態で使われており、生きている時に皮の裏側に当たる部分が、コードバンの革の表側になる。

通常革の繊維は表面に沿って横方向に走っている。
しかしコードバンの場合は繊維が垂直方向に向いており、それを強制的に寝かせる事で、表面のスムースな質感を得ている。
水に濡れると、この繊維が元の状態に戻ろうとする為、水脹れのように膨れてしまう。
そのためコードバンは水に極端に弱い素材になっている。

コードバンは非常に希少な素材といわれている。
採取できる馬の種類が限定される上、一頭から取れる面積も限られている。
眼鏡状の丸い2連の形状で、原皮が売られているのを時折見かける。
そこから取れるのは、靴だとせいぜい1足程度か。

現在コードバンは世界で2、3社でしか製造されていないようだ。
そのうち1社が、例の米国ホーウィン社であり、残りの2社は日本の会社であるという。
日本にはランドセルの需要があったため、独自のコードバン製造の技術があり、欧米のものとは違う系統といえる。
そのため西欧の伝統的な製法で作られるコードバンは、ホーウィン社のもののみということになる。

70年代にホーウィン社も一度コードバンの製造をやめる話が出たらしい。
ところが、アメリカのコードバン靴の伝統が失われるのは惜しいと、継続するよう説得したのが当時のオールデン社の社長だったという。
2年分の革を一括で買い上げて、ホーウィン社を応援した。
両社はそのような親密な関係にあり、現在もホーウィン社のコードバンの上質な部分は、オールデン社に優先的に回されると言われている。

数年前の靴の本を読むと、コードバンは希少素材で、今後入手が難しくなるので、早く購入したほうがいいと書かれている。
コードバンをとることの出来るヨーロッパ製の食用農耕馬自体が減少しているのだ。
高価なこともあるのか、実際にはまだコードバンのオールデンの靴はけっこう見かける。
しかし今後この素材がじわじわと減少していく可能性を考えると、今のうちに一足買っておいて損は無いだろう。
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