ブチ


D800E + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G

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我家の女性陣を乗せて、朝早く郊外の畑の中の道を走ることがある。
大体決まった時間に、いつもその場所を通る。
すると、畑の中の何も無い道を、犬を連れたおじさんが散歩しているのとすれ違う。

僕は犬が好きなので、まずは犬に目が行く。
毛が長めの白っぽい雑種で、胴体に2、3箇所、茶色い斑点がある。
体つきは、中型犬より少し大きいくらいだ。

その犬が、楽しそうにおじさんの前を歩いている。
風景の変化に乏しい一本道であるが、犬はそれでも十分に散歩を楽しんでいるようだ。
それに比べて飼い主の方は、見るからに無愛想そうな田舎のおじさんである。
しかし、そんなおじさんも、毎回そこで会うくらいだから、愛犬との散歩をそれなりに楽しんでいるのだろう。

女性陣に教えてやると、以降そこを通る時は、いつも犬に注目するようになった。
体に斑点があるので、ブチという名前を勝手につけた。
今日もブチは元気そうだとか、ブチの尻尾はふさふさしているとか、よく見ると耳が後ろに倒れていてかわいいとか、いろいろ話している。
もっぱら話題はブチのことで、おじさんには興味は無いようだ。

すぐ横を通過する時は、車内で、ブチ、ブチと呼ぶ。
しかし、ブチもおじさんも気付くことなく通り過ぎていく。
まさか道路を走っている車の中で、自分たちが話題になっているとは思わないのだろう。
それに本当の名前はブチではないだろうし・・・

先日、その道を走っていると、いつものようにおじさんとブチが、先のほうに見えてきた。
今日は何故か、道端の柵の前におじさんは立ち、無言で遠くの工事現場をじっと見ている。
ブチはその足元で、だまって座っている。
あんなところで、一体何を見ているのだろう?

おじさんの横まできた時、とんでもないことが分った。
おじさんは、その場所で立小便をしていたのだ。
道に背を向けて、足を開き気味にして、直立不動で用を足している。
ブチは、主人が用事を終えるのを、じっと待っている。

それを見て悲鳴をあげたのは、女性陣であった。
「キャー、最低!」
パニック状態である。

それ以降、おじさんの評価は急落してしまった。
ブチに責任は無いのだが、とばっちりを受けた形だ。
白くてかわいいワンちゃんが、何だか薄汚れたブチ犬・・に変わってしまった。
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