酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「ポチの告白」が抉る悪の構造

2009-02-16 00:38:43 | 映画、ドラマ
 “ブッシュのポチ”こと小泉元首相が、日本郵政西川社長、オリックス宮内会長ら同志の窮状を見るに見かねたのか久々に吠えた。メディアは政局絡みで騒いでいるが、元首相が導入した新自由主義の負の遺産が国民を苦しめている。「尻拭いをさせやがって」が、支持率が1ケタに突入した麻生首相の本音だろう。

 今回はポチ繋がりで、新宿のK's cinemaで見た「ポチの告白」(高橋玄監督)について記したい。本作における「ポチ」とは”権力の犬=警官”と、“警察の犬=メディア”である。スリム化も十分可能だったと思うが、緊張感が途切れぬ3時間15分だった。

 警察との距離で感想は異なるはずだ。反体制として政治に関わった人は共感するだろうし、横山秀夫の小説や「相棒」のファンは違和感を抱くに違いない。全体のトーンは森巣博の小説に極めて近く、工場排水や塵芥で腐臭漂う川の如く警察を描いている。主人公の竹田(菅田俊)のように放流された稚魚は数年後、グロテスクな怪魚に変身してしまうのだ。

 強面ながら心根は優しい竹田は、交番勤務から組織犯罪対策課に引き抜かれた。麻薬密売組織やヤクザと癒着する三枝課長の影響で、竹田の手もどす黒く汚れていく。新聞社写真部員の北村と協力して悪事の証拠を掴んだトップ屋の草間は、暴力によって口を封じられた。

 5年後、三枝は署長、竹田は課長に昇進していたが、腐敗警官が殺されたことで周辺は慌ただしくなる。復活した草間は社会部に異動した北村とともに真相を伝えようと奮闘するが、新聞社内の“ポチ”により、彼らの動きは警察に筒抜けになっていた。

 「日本では逆らっちゃいけねえものが二つあるんだ。天皇陛下と警察だ」……。

 竹田が中国人の被疑者に怒鳴る台詞が、制作サイドの思いを象徴していた。皇居が何度もインサートされ、政界と法曹界を手玉に取る警察の力が暗示されている。

 反権力、反メディアを前面に出した本作は、過剰な描き方は気になるものの、<警察=正義>ではないことを知らしめる効果がある。主演の菅田をはじめ無名の俳優を配したことが、作品のリアリティーを高めていた。ラストの竹田の一人芝居もなかなか衝撃的だった。

 映像に遊びがないことなど突っ込みどころも多いが、大きな疑問が一つ残った。竹田の逮捕理由のうち、殺人示唆に相当する部分が判然としなかった。ストーリーの流れなら警官殺人だが、世間を震撼させた草間のホームページでは韓国系マフィアが犯人と名指しされていた。警察が“身内殺し”をデッチ上げるはずもない。俺は重要な何かを見落としたのだろうか。

 最後に俺の全国デビューについて。去る12日、地デジ広報の一環で、某局のカメラが仕事先に入った。3度にわたってオンエアされたが、そのうちの一つに俺が女子アナからバレンタインチョコを受け取るシーンが映っていた。<最も縁のなさそうな男に愛の手を>という意図が局にあったのなら、その狙いはバッチリだったのだが……。



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