酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「武器と市民社会研究会」に参加して、混沌と狂気の根源を垣間見た

2019-09-21 22:58:32 | 社会、政治
 前稿で<この国は狂気に覆われている>と記した。最たるものが一昨日(19日)の判決で、津波対策の必要を説いた報告書を握り潰した東電経営陣に無罪判決が下された。故郷を奪われた人々、これから明らかになる若い世代の体内被曝……。誤った国策に協力した〝上級国民〟は何があっても免罪される。司法もまた正気をなくしている。

 俺にとって死刑は〝狂気の徽〟だが、戦争法、辺野古移設、憲法改悪に反対するリベラル・左派の多くが肯定派だ。来日するフランシスコ法王は、再審請求中の袴田巌死刑囚との面会を調整中という。実現すれば、日本社会が<内向きの狂気>に気付くきっかけになるかもしれない。

 <内向きの狂気>といえば、OECD加盟35カ国で例を見ない高額な供託金制度を違憲と訴えた裁判で原告側が敗訴した。1925年、治安維持法とセットで成立した普通選挙法を継承している日本は、民主国家に向けてのスタートラインにさえ立っていない。<世界標準¬=死刑廃止、供託金ゼロ>とこの国の溝が埋まる気配はない。

 世界も狂気に覆われている。国連は紛争を解決するどころか、常任理事国から流出する武器が大量虐殺を可能にし、途上国の飢餓と貧困を加速させている。国連を牛耳っているのは<グローバル企業=資源メジャー=兵器産業>の連合体で、<権威ある狂人>が人々の正気を蝕んでいる。

 第51回「武器と市民社会研究会」(拓大・文京キャンパス)に足を運んだ。登壇者は佐藤丙午拓大教授、榎本珠良明大准教授、吉田真衣テラ・ルネッサンス理事で、司会進行は知人の杉原浩司氏が務めた。

 杉原氏は武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表で、日本とイスラエルによる「武器・技術に関する秘密情報保護の覚書」、日英連携武器見本市(DS EI JAPAN)への抗議活動を中心になって取り組んでいる。アクティブで熱いという予想と異なり、大学教員、研究者、メディア、NGO活動家、自衛隊員らがこれまでの経緯を踏まえて集った研究会は、アカデミックかつクールに進行した。

 佐藤教授は先月、「特定通常兵器使用禁止制限条約」(CCW)の枠組みでの会議(ジュネーブ)に参加した。メインテーマは「自動型致死兵器システム」(LAWS)、即ちAI兵器である。開発先進国であるアメリカ、イスラエルとの距離感が背景に、会議は混乱しながら長時間にわたったという。後半の質疑応答では英語の資料に質問が相次ぐなど、会のレベルの高さに圧倒された。

 国際的な会議は本音と建前が交錯しダブルスタンダードになりやすく、正義が語られるケースは少ないという。<人間がAI兵器のボタンを押すことの是非>が世界中で議論されているが、羽生善治九段は著書「人工知能の核心」でAIの親和力に感嘆し、いずれ倫理や良心を備え、人知を超える可能性に言及していた。

 榎本氏と吉田氏は視点を変え、武器貿易条約(ATT)第5回締約国会議(CSPS)について報告する。サウジアラビアの油田への攻撃が世界を揺るがせているが、英米から同国に輸出された武器が、人類史上最も非人道的といわれるイエメン空爆に用いられていることが背景にある。俯瞰すれば<テロ国家VSテログループ>の構図だが、英米への抗議の声がATTで主流になることはない。

 CSPSのメインテーマは<ジェンダー>だった。榎本氏のレジュメを抜粋すれば<女性、男性として課せられる責任、負うべき活動、資金・資源へのアクセス、意思決定の機会において、性差における不平等が存在する>……。俺なりに解釈すれば、女性が被害者になりやすい戦争と暴力を考える際、武器問題に取り組む組織は、まず<ジェンダー>について原則を設けなければ前へ進まないということか。

 古田氏はCSPS内における歪みを強調していた。先進国(北)と比べ、途上国(南)のNGOは軽視される傾向が強い。むろん、南の資金不足、ビジョン提示能力不足も理由にある。テラ・ルネッサンスの課題として、南、アジアのNGOとの連携と情報共有を挙げていた。

 俺にはハードルが高い会だったが、武器の流れを知ることも、世界を解く鍵のひとつだ。混沌と狂気の根源にあるものを知るきっかけになったと考えている。
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